第6話 対決

 その頃ウォーカーは探し物を無事に獲得し、町に戻っていた。


「いや~まさかこんなに簡単に奪えると思っていなかったよ。レプリカのパワーもなかなかのものだ。まあすぐに気付かれると思うけど。あとは馬を奪ってこの町を出るだけ」


 口笛を吹きながら、不気味なほど笑みを浮かべているウォーカー。このまま真っ直ぐ進み、途中農場に寄るという計画。

 

 すると、ガウス屋の店主、ガウスが慌てて走ってきた。


「あんちゃん探したよ」


「何だい? マスター」


「実は、昨日アンタと一緒にいた女が、カーリーの隠し施設に入っちまったんだ!」


「ボクには関係ないよ」


 そう言って再び足を進めるも食い下がらない男。


「あの女が死んでもええと言うんか!」


 ウォーカーはそれを聞いて足を止める。そう、数年前に起きてしまった悲しい惨劇。自分の犠牲になってしまった血にまみれた友の顔がフラッシュバックする。


 帽子を右手で押さえて深く被る。


「そこは処刑場のある広場でいいんだよね?」


「ああ」

 

 その言葉を聞いて、ウォーカーを民家の密集地帯を駆け抜けて、町の中心の広場に向う。そこに到着すると、鉄の扉はすでに開かれている様子だった。穴の中に入って梯子を使って下を目指す。


 セシリアが通った道を、ウォーカーも同じく通る。彼も鉄のリフトに入って、少し戸惑っていたが、無事に倉庫に到着。


 そこには、小柄な保安官補佐、バレットが立っていた。


「そこをどいてくれないかなバレットくん」


「残念だが無理な話だ。保安官の命令とあらば、なんだってこなす。それに、貴様はアクアクリスタルを盗んだそうだな。さすが、懸賞金一万五千ドルがかけられている大盗賊のホークといったところか」


「よく御存じでいらっしゃる」


 ウォーカー、いや、ホークはヘラヘラと笑みを浮かべながら拍手をしていた。


「髭や伸びきった髪で始めは分からなかった。手配書の写真は短髪で髭は無く、目が鷹のように鋭い人相の悪い顔だからな。盗みと殺しに長けたギャング団、クリムゾンホークの元首領(ドン)が、ここまで優しい顔になっているとは誰も思うまい」


「そういう君こそ、賞金首一万二千ドルの早撃ちのキッドじゃないか。何があってカーリーなんかの手下になっているのか知らないけどね」


「それはお互い様だ」


 その言葉と同時に二人は銃を抜く。そして向け合う。


「いいのかい? こんなところでドンパチして?」


「問題ない。ここにあるのは全て鉄の塊だ。普通の弾だけなら気にすることはない」


「成る程」


 その瞬間発砲したのはバレットことキッド。今までは右で撃っていたが、今回は利き手である左である。そして放たれた弾は――。


「ひい、ふ、み」


 全て躱し切った後、ホークは発砲した。その弾はキッドの足に向って飛んでいく。それをまたも早撃ちを見せて、向ってくる弾を撃ち落とした。


「噂以上だな――弾を数えて避けるとは。鷹の目の異名がつくのも頷ける」

 キッドは喋りながら弾を込める。


「弾は大事に扱わないと損するよ。準備はOKかい?」


「ああ。次は正式なやり方で」


「構わないよ」


 キッドが後ろに向いたのを確認すると、ホークも後ろを向く。


「ホーク、お前が合図を出せ」


 すると、ホークはどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「初めてだよ、ボクがカウントを行うのは。三秒でいくよ」


「そうか。さっさと始めろ」


 ふうと息を吐き、呼吸を整えたあと、カウントを開始する。


「3、2、1、0」


 その言葉と共に放たれた弾丸。キッドも早撃ちの連射をしていない。だが、撃つのはやはり彼の方が僅かに速い。ホークの頬をかすめて、弾丸は通り過ぎていく。


 対して、ホークの弾丸はキッドのコルトライトニングを吹き飛ばしたのだった。そして標的に銃を向けながら近付く。


「ボクの勝ちだよ早撃ちのキッド。連射は見事だったし、カウントに対する瞬発力も凄かった。あとは、命中率だけだね。それが身長に影響しているようだ」


「完敗だ」


 膝をついて、両手を上げながら歯を食い縛っている姿は、今まで以上に小さく思えた。


「お嬢ちゃんがいるところに案内してもらうよ」


 ホークはキッドの両手を縄で縛って手錠を作り、コルトライトニング取り上げた。

「分かった。ついてきてくれ」

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