第3話 馬鹿みたいな青天と悲鳴だにゃ!

 晴天。まるで勇者たちの門出かどでを祝うかのような、雲ひとつ無い青空。ローリエルはそんな太陽を恨めしそうに見上げた。

 トイレでゲロまみれになって爆睡していたローリエルは、結局朝になって清掃員に外へつまみ出され、気が付けば一人、ギルドの前で大の字に寝っ転がっていた。通り過ぎていく冒険者たちは最早、ローリエルのことなど眼にもくれない。あまりにも見慣れた光景だからだ。


「う、う~ん……もう朝かにゃ……酒……」


 ローリエルは手を泳がせて酒瓶を探すが、どこにもない。


「さ、酒……酒がないッ! 酒はどこかにゃ!?」


 発狂しかけてようやく、ローリエルは目を覚ましたのだった。起き上がると、足元に一本だけ酒瓶が転がっていた。もう十分の一ほども残っていないが、酒は酒。ローリエルはこれを飲もうとして、ふと、昨日の出来事を思い出したのだった。


「そっか……私、昨日勇者さまに解雇されて……金貨千枚の借金を……」


 酒を飲むための金すら残ってないのだと考えるだけで、憂鬱ゆううつな気分になる――アルコール依存症の典型的な症状だったが、ローリエルはあくまで勇者に見捨てられたショックなのだと信じることにした。

 信じる者は報われるってマリサベルもよく言ってたし! 


「そうだにゃ! うじうじ悩むなんて私らしくもないにゃ!! 魔王さえ倒しせばウハウハの毎日が待ってるんだにゃ!! えっと、まずは旅の支度金を用意しなきゃだから――クソヒゲに金になるクエストの聞き込みから始めるにゃ!」


 と、ローリエルがひとまずの方針を決めた、その時だった。


「た、た、助けてェェェ!!!!」


 街の外から、少年の悲鳴が聞こえてきたのは。

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