第7話 魔獣との遭遇



「魔法はろくに出来ないくせに、なんでこれはできるのさ!」


「知らないわよそんなの! できたんだからしょうがないじゃない! 」



以前言ったかもしれないが、俺たちの父さんである『ライル・メルヴィス』 は、高名な冒険者であり、何らかの武功を立てて、貴族になったらしい


どんな武功かは、頑なに教えてくれないのだが、


そしてレイラ母さんも、父さんと冒険者時代からの恋人であり有名な魔術師だったらしい。



姉さんは、魔法はからきしだけど、類まれな身体能力の持ち主なので、確実に父さんの血を色濃く引き継いだんだろう



でも、姉さんのガサツな性格はなんでだろう、環境からかな?



「ちょっとレイ、あんた失礼なこと考えてるでしょ!」


「失礼なこと?なんで?全然考えてないよ!」


俺が考えてるのは失礼なことじゃなくて事実の確認だからね!


「レイは顔に出やすいのよ! 4年もレイのことを見てきたんだから、考えてることくらいだいたい分かるわよ! 」


「へぇー、なら俺が今何考えてるか当ててみてよ!」


ちなみに俺が今考えてるのは、次はなんの料理を再現するかだ!


「そんなの簡単よ! 優しい姉に遊んでもらえて嬉しいんでしょ!」



「はっ?そんなわけないじ、ッアァッ!! 身体強化しながら…」


「知ってたレイ?愛ある拳は痛いものなのよ?」


くそっ!ほんとに馬鹿力だな!少しは母さんみたいにお淑やかな女性になればい、ッイテッ!!


「なんでまた殴ったのさ!」



「あんたがまた失礼なこと考えるからよ! 言ったじゃない、わかるって!」


姉さんは俺の心が読めるのか?怖すぎるんだけど。




ーーー



「はぁ、やっと着いた。」


「よく頑張ったはね!偉いわよ、レイ!」


俺たちは、1時間半程をかけ山頂にたどり着いたてい

た!


山頂付近は木が生えておらず、ちょっとした芝生であり、転落防止の木の柵がたっている


ここで昼寝でもしたら最高だろう場所だった!



そして姉さんが、偉い偉いと言いながら俺の頭を撫でてくる、俺はそんな何気ない仕草が無性に嬉しく思いながらも、なんだかこそばゆくて無言を貫いていた。


このすぐに頭を撫でるくせはレイラ母さんと一緒だなぁ~


「あそこがポレオの町なの?」


「そうよ!ここは屋敷と町が一望できるスポットなのよ!私のお気に入りの場所なの!」


「思ってたより大きいね、もっと村みたいなのを想像してた」


「そーよ!あの町と農地を、私たちメルヴィス家がおさめてるのよ! その代わりに税をもらって私たちは暮らしてるの、この景色が私たちの守るべきものなのよ!」



いつもはガサツで勉強なんかサボってばっかの姉さんがまともな事を言っていたのでびっくりして横を見ると、


強く、そしてどこか優しい表情で町を見下ろす姉さんがものすごくかっこよく見えた。


姉さんは、自警団の訓練にも参加しているから、町の人達と接することも多く、その分覚悟は強いのだろうと思った。



そんな姉さんを見て、俺はメルヴィス家の人間としての責任を、改めて感じさせられた。



この世界には時計が存在しないため、正確には分からないが今は恐らく午後の3時過ぎくらいだろう。


少しは赤みがかった太陽に照らされたメルヴィス領は言葉では表現出来ないほど美しかった



「今日からここは、俺のお気に入りの場所でもあるね」


「ふんっ、好きにしなさい!」


もしかして姉さんは、領地貴族としての覚悟を教えるために、山に登ろうなんて言い出したのだろうか…


それは無いな!



「ん?何がよ?」


「え?別になんでもないよ」


どうやら声に出してしまったらしい。



ーーー



俺たちふたりは今、下山中である


「レイ!この身体強化は凄いわね!」


「うん、俺もここまで使い勝手がいいとは思わなかった!」


「さすがは私の弟ね!」


「それはあんまり関係ないと思うよ、姉さん魔法全然ダメだし」


「魔法なんて出来なくても生きていけるは!」


「エウァーーーンッ!!」


「「ッ?!」」



1時間半程かけて登った山を、ものすごい速度で下りながら話をしていたら、聞いたことも無い声が2人の耳に飛び込んできたため、足を止める。


「今の聞こえたわよね!」


「うん、なんの鳴き声か分かる?」


「初めて聞くわ! 狼っぽくはなかったけど…よし、行くわよ!」


「えっ?行くの?!」


「えぇそうよ!もし危険な獣だったら危ないじゃない! なに、偵察に行くだけよ!」


「それはそうだけど、子供だけでの偵察の方がよっぽど危ないよ!俺は剣の稽古もした事ないんだよ?」


「もー、根性無いわね! いつも「魔法があればどうとでもなる!」とか言ってるじゃない!それとも魔法はそんな役ただずなの?」


「魔法のことを全然わかってないよ!魔法は攻撃のためじゃなくて、生活を、より楽に、豊かにするためにあるんだよ!」


「あっそ、なら別に魔法がなくても生活はできるわけね、ん?どうなの?」


姉さんが勝ち誇った顔で聞いてくる



「ぐ、わかったよ、でも偵察だけだからね!危なかったらすぐ逃げるからね!」


「当たり前じゃない!」



くそ、普通だったらこんな危険なことはしないが、魔法をばかにされたままにはしておけない!


俺たちは声のする方へ、音を立てないよう静かに動き出す!



「近いわね、ちゃんと身体強化をしときなさいよ!」


「言われなくてもしてるよ!」


小声で会話しながらゆっくりと森を進んでいくと、黄色い毛をした獣が目に入る



「あれだわ! 初めて見る獣ね、何かわかる?」


「うん、図鑑に載ってたよ! 獣じゃなくて魔獣だよ!」


「あれが?」


「うん、『エルフェントベアー』って言う魔獣! 確か、草食性で子育て中以外は基本穏やかな性格だったと思うよ!」



そう、この世界には獣の他にも、『魔獣』と『魔物』が存在する!


魔獣とは、魔法を使える個体が発見された獣のことを指す!


エルフェントベアーの場合も、地属性の魔法を発動する個体が発見されたことがあるらしい。


また、魔法を使える魔獣は極端に少なく稀なため、基本的な獣との違いは、その頭脳である。


どの魔獣も、似たような獣と比べると、かなり頭がいいのが特徴だ。



一方魔物とは、人、獣人、エルフ、ドワーフなどの、基本ベースが、人、獣以外の存在を指す。


ゴブリンやオーク、スライムなどファンタジーでも、お馴染みのヤツらが名を連ねている。



また、妖精やドラゴンなんかの、存在を証明するにたる遺骸や文献は残っているものの、生体の発見に至っていない生物のことを『幻獣種』と呼ぶこともある



そんな魔獣を発見したわけだが、危険度は低いとわかり、俺たちは少しずつ近ずいてく


だご、近づいて分かることがあった


「これは、酷いわね」


「うん、」


「ギュイッ!ゴォルルル…」



俺たちの目の前には、2匹のエルフェントベアーがいた、


そのうちの1匹がこちらに気づき、威嚇してくるが、その目には涙が浮かんでおり、


もう1匹の方は、腹部に酷い傷を負っており倒れていて、呼吸が荒い。


「これ、どうしよ。」


夕暮れの山の中、俺とカトレア姉さんは、この熊をどうするのか話し合うのだった。

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