第127話 夏休みが――消える?12
「いやー、エネルギー補給もしたし。午後からも頑張ろう!」
図書室へと戻る途中の石見先輩——大変元気だった。いや、この先輩ずっとこんな感じか?まだそこまで先輩の事はわからないが――でもこれが通常運転だろう。
あと、お昼を過ぎたということもあり。外の気温がぐんぐん上がり。ホントぐんぐん上がったらしく。室内。学校内もぐんぐんと気温が上がっているみたいだった。廊下が蒸さっている。
あれだ。普段の授業のある時なら窓が開いているが――休みだとね。ところどころしか窓が開いてなかったりでそもそも空気が淀んでいるだった。普通ならやる気がなくなりそうな雰囲気なのだが――そんな中でも岩見先輩は体力マックスなのか大変元気という現状である。
いや、マジで元気だわ。この先輩は暑さにも強いらしい。
「——石見先輩。ホント元気ですね」
斜め前を歩く石見先輩に声を抱えるとくるりと回りながら先輩が答えてくれた。ってか。この暑い中足取りも軽やかだった。
「そりゃもう。楽しいからね。って、後輩くん私は順調に進んでるんだから。早くそっちも終わらせてよ?後輩くんが遅れて私も連帯責任で――とか嫌だよ?こんなに珍しく私が頑張ってるんだからー」
「——昨日なかなか進まなかったのは誰なのか。ということをちょっと思い出してほしいですね」
「誰だろうねー。そんな後輩くんを困らすようなことをする先輩は居るのかな?居ないと思うけどなー」
「——あの……今自分でいろいろ言っていると思いますが?」
石見先輩はわかっていて言っているだった。先輩と普通に言ってるし。とにかく今は楽しんでいる様子らしい。ご機嫌斜めよりかはいいと思うが……俺大変であるだった。
「松尾君松尾君」
歩きながら石見先輩と話していると。もう1人一緒に歩いているお方が俺に声をかけてきた。長宮さんである。暑そうにしつつも俺たちに付いて来ている。
「うん?って、そういえば長宮さんは用事が終わったけど――付いて来ているってことは帰らないのか」
「いや、だって帰っても何もないしさ。それにこの時間外歩くの暑いじゃん。危険じゃん。溶けるじゃん。ここも結構暑いけど――でも、せっかくほとんど人の居ない学校に侵入できてるんだから。松尾君たちが帰るまで一緒に遊んでようとね。それで夕方になったらちょっとは暑さもマシかもだし」
「一応言っておくと、俺たちは遊びに来ているわけではないんだがね」
「そうそう、お仕事お仕事。超楽しいお仕事しに来てるんだよ。うんうん」
長宮さんと話していると石見先輩が話に割り込んできた。ホント足取り軽やかで元気な先輩だ。動きまくってるが暑くないのだろうか?
「——ホント石見先輩元気。って、石見先輩は作業が楽しそうで何よりですか。楽しくなかったら――」
「まあとっとと逃走してるね。こんな暑いところで楽しくないことしたくないし」
「ははは……」
そんなこんなで、3人で話しながら図書室へと戻ると――来客?いや、本来居るべき人が図書室の中で俺達を待って居たのだった。
「あれ?楚原先生?」
俺達が図書室へと戻って来ると、受付のところの席でつぶれている人影があった。完全に受付の台に溶けているという感じで、一瞬誰か生徒が来ているのかと思ったが――よく見ると楚原先生だった。
「うん?あー、やっと帰って来たー。みんなお昼休憩?って長宮さんも居るー」
俺達の声で復活したのか。潰れていた人影は背伸びをしつつ立ち上がる。って、気の抜けている楚原先生。普通に同い年。同級生くらいに見えることがあるんだよな。まさに今だが。
「まあお昼ですね。そして休憩終わって戻って来たところ。というか。そもそもお昼の予定はなかったんですが……まだ終わってないので」
図書室を見渡すと、終わってないな。机の上もまだ途中。棚の方も――半分くらい終わった。というところだ。
「でもよかったよかった。私が溶ける前にみんな戻って来てくれて」
「ならここに早く人が戻って来るように。集まるようにするため快適なエアコンをここにもほしいですね。無理だとは思いますが……」
「はいはーい。私も後輩くんの意見に賛成です!暑すぎます」
俺達も多分この部屋がもっと涼しければ即戻ってきていたはずだ。わざわざ暑いところに居る必要がないのでね。でもこの図書室は――なのでね。エアコン弱いし。あと空気をまわす?ための扇風機だけでは厳しい。かなり厳しい。窓を開けても微妙だし。日差しの当たるところなら余裕で熱中症になりそうな場所なのでね。
「——ホント前向きに検討しょうかな。これは危険だよね。自習室に使ってるからとかの理由――もしかして何とかなる?ってこういう時はどこに相談したらいいの?校長先生?あれ?誰に相談?」
俺が多分無理だろうな。と思いつつ思いつきで新型エアコンの提案してみたのだが――どうやら少しの間図書室で俺達を待っていたと思われる楚原先生。かなり暑かったらしく。生命の危機でも感じていたのか。本気でエアコンを検討してくれている感じだった。
唸ってる唸ってる。考えている考えているだった。言ってみるもんだな。こんな所で倒れたくはないので至急何とかしてほしい課題ではある。っか、壊れたら終わりだからな。せめて複数台希望だな。
俺と石見先輩。楚原先生が受付のところでそんな話していると――机の方から長宮さんの声が聞こえてきた。
「あっ。すごい。これ先輩が描いたんですか?めっちゃかわいい」
机の上に広げっぱなしになっていた午前中の石見先輩の成果を見つけた長宮さんがイラストなどを見つつ。手招きで石見先輩を呼んでいたので、石見先輩が超笑顔で長宮さんの方へと歩いて行く。かなり嬉しいらしい。先ほどよりもさらに足取り軽くスキップで石見先輩が長宮さんのところへと向かって行く。
「うんうん。そうだよー。私作!すごいでしょー。私が頑張ればこのレベルなんだよねー。そうそうさっき後輩くんからも高評価だったんだよー。ってかこんなに褒められると嬉しいねー。うんうん。ヤバーい」
本当に嬉しいらしい。石見先輩。顔がニヤニヤである。ちょっと飛びはねていると言ってもいいかもしれない。
「ホントどれもすごくかわいいです。あと、先輩。字も綺麗……って、先輩先輩。何か私にも描いてください。部屋に飾りたいです。ファイト奈都!みたいなの欲しいです」
「おお、後輩くんと同じことを言ってくる子が――これは真面目に――売れる?売れるよね?ネット販売とかしてみる?いくらで売れるかな?ねえねえ後輩くん売れるよね?この雰囲気どう思う?まず後輩くん買ってくれる?」
良からぬことを思いついたと言えばいいのあろうか。このままだと石見先輩が別の事に必死になりそうだったので――。
「石見先輩。目がお金です。ってか、ちょっと落ち着きましょうか」
「なっ。そんなことなってないからね。お金儲けとかそんなこと考えてたから」
「……先輩の心は素直だった」
「先輩って、面白いキャラだね。松尾君」
「あれ?今私おかしなこと言った?」
テンションがハイになりつつあった石見先輩を落ち着かせようとそんなことを言いながら俺も2人のところへと近寄ると、ちょっと恥ずかしくなったのか。石見先輩がわたわたしていた。あれ?今の『お金儲けとかそんなこと考えてたから』は――ガチで声が漏れた?などと俺は思いつつまあこの話を深堀してもなので。
「まあ嘘ですが」
「この後輩くんはー。って、ほんとこの部屋暑いなー。汗が止まんない。あれ?これは――変な汗?」
「石見先輩。ホント忙しいですね。って、まあ暑いの正しいか。日差しも結構室内に入ってきてますし。うん。暑いです」
俺が窓の方を見ると、午前中よりも日差しが図書室内へと入り込んできている。少しカーテンは揺れているのだが。窓際はとってもとっても暑そうである。窓枠の金具などがキランと光っているが――あれは触ったらめっちゃ熱そうだ。ガチで鉄とかの部分やけどするのでは?という感じだった。
「——暑い。暑すぎる。職員室とこの部屋の差は――何?ここ地獄なの?」
石見先輩と話していると、楚原先生もこちらへと移動してきて、さらっと会話に入ってきた。って、楚原先生もかなり暑いのか。いつの間にか扇子を取り出し仰いでいる。ちょっとそれ欲しいである。気休めかもしれないが涼しそうだった。
あっ、そうそう現在の先生の表情を言っておくと――やる気0という表情だった。ほぼ溶けているという感じだった。
「先生が溶けているよー。うんうん。この暑さ異常だからね。仕方ないか」
長宮さんも楚原先生を見つつそんなこと言っていた。
「パソコンのところはさらに熱持ってて暑いのよ。風もなかなか抜けないし。って入ってきても温風だからね。ホント真剣に暑さ対策しないと危険よ」
「まあ楚原先生の言うように確かに受付は暑いですね。あそこホント風が来ないというか。熱が籠るというか。出来ればこの時期は居たくないですね」
受付を見つつ俺も言う。
いや、あそこねコの字型になっているからなのか。かなりこの時期はもわっとしてるんだよ。そして足元にはパソコンやらやらの本体があったりしてね。熱が足元から籠っているんだよ。
外からは見えないから、あそこで椅子に座りつつ足元だけ。氷水に突っ込むということは――無理だな。無理だ機械があるからな。そもそもそんなことしていたら動けないし。無駄な事考えたな。これは暑いからだ。暑さでおかしなことを考えたである。
「みんなが戻ってこないから。さっき氷水入れたバケツを真面目に職員室から持ってこようと考えちゃったくらいだからねー」
「……」
えっと――楚原先生と俺――同じことを考えていたらしい。ってじゃ、俺と先生似ていると?いやいや、似てないだろ。
そんなさらに無駄なことを俺が考えていると。どうやら楚原先生は暑さを我慢するのが限界に達したらしく。
「——暑い!ってことで、私は快適な職員室戻るから。だから簡単に用件を言うと、松尾君は引き続き整理。石見さんは――グッド。引き続きお願いし。ホントすごーい。もっと早く本の紹介は石見さんに任せておけばよかったかもー。私の作業が減っていたから――」
「おお、先生にも褒められたー!いやー今日の私絶好調?ピーク?最高潮?」
石見先輩はさらっと楚原先生が作業これからも丸投げしようとしていることに気が付いているのだろうか?このままだと石見先輩ずっと捕まりますよ?でも、今の岩見先輩は嬉しそうにしているので――それはそれでいいのかもしれない。
「あっ、そうそう。松尾君松尾君。棚が終わったら職員室の前の部屋まで箱取りに来てくれる?」
「——また――箱?」
ちょっと別の事を考えていたら俺――捕まるだった。
「箱なの。ちょうど届いたのよ。そこそこたくさん」
「たくさんの箱ですか……」
「重いからね。私か弱いから。よろしくね」
「……マジですかー」
「ってことで、あとではよろしくー。あっ、長宮さんはゆっくりしていってねー」
「えっ、あっ、はい」
言いたいことを言うと楚原先生は足早に図書室から出て行ったのだった。ホントに暑さの限界だったらしい。って、長宮さんにゆっくり。と言っていたが。ここでゆっくりって暑いよ?絶対自室の方がエアコンガンガンで快適だと思うよ?ホント基本暑い部屋なのでね。先生が逃げ出すくらいに――そこにゆっくりは。どうなのだろうかね?
ちなみに楚原先生が立ち去った後の事を言うと――。
「暑い」
「あつー」
楚原先生が居なくなった図書室では、石見先輩、長宮さんが机に溶けたのだった。外からの日差しの方が強いな。あと、一応先生が居る前ではちゃんとしていたらしいが。先生がいなくなったら自由というやつですね。2人とも机にベターとなったり。少しでも風をと扇風機の風を求めて移動したりしていた。
っか、俺も作業というよりかは――冷を求めていた。この部屋もう無理だわ暑い。暑すぎる作業とかしていたら倒れる。
そんな夏休み午後の図書室だった。
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