第108話 もしかしなくても先輩

 学校の校舎から出てどれくらい時間が経っただろうか。

 俺はなかなか石見先輩に開放されず。さらには長宮さん蓮花寺さんも合流で――いろいろ面倒。おかしなことに巻き込まれてしまったため。かなりの時間が経ってもまだ学校に居たのだが――さらに1人。今人増えたのだった。


 俺の腕に捕まっている先輩の名前を呼び。俺達のところに息を切らしつつ走って来たのは――結崎だった。


「はぁ――はぁ――」

「ゆえ……早すぎない?」


 さすがに長宮さんも驚いている。


「メッセージ来てからまだ15分くらいだよ?」


 全速力で走ってきたのだろう。結崎は俺たちのところまで来ると、膝に手を当て、息切れを起こしていた。この暑い中ご苦労様ですというか。

 ってか。長宮さんが今言っていたが――マジで結崎連絡から来るまでが早すぎなんですが――最短出来たんじゃないか?と俺が思っていると。


「えっ?誰?」

「えっ?」


 俺の腕に捕まりっぱなしの石見先輩が結崎を見つつ言った。


「えっ!?わ、私ですよ。ゆえ。結崎ゆえ。昔いろは先輩の隣に住んでいて、遊んでもらった」

「………………」


 俺の腕に捕まったまま石見先輩は、息を整え自己紹介をした結崎を上から下まで見る……って。うん?えっ。もしかして――と俺が思っていると。


「………………えっ。マジで――ゆえ?ゆえちゃん?」


 石見先輩が驚いた表情で――再度結崎を上から下まで見て――。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ。後輩くん。ゆえちゃんがー。ゆえちゃんが――成長してるー。美少女じゃん。どういうこと!?あのボソボソひっきー、地味なゆえちゃんがー。ってそうか!?小学校の高学年の時で抜かれてたんだ。そうだ。胸もその時に負けたんだったー。うわぁぁぁぁぁぁぁ。いじめだいじめー。何でゆえはこんな美少女になってるの!ってなんで居るの!?」


 大騒ぎだった。さすがに長宮さん蓮花寺さんも突然の事にフリーズしていた。


「……あの、石見先輩。落ち着いて、痛い。腕痛いっす」

「知らないー。とりあえずわかんないことだらけ!」

「………え、えっ、えっと――どうなってるの?」


 俺は何故か石見先輩に力一杯腕を握られぶんぶん振り回されている。そして、結崎はというと。あっけにとられていた。


 ちなみに、フリーズしていた長宮さん蓮花寺さんは。


「——一応……面白くなってきた感じ?」

「どういうこと?これ。なんかいまいちわかんないんだけど。何でゆえは松尾くんじゃなくて――先輩に絡んでるの?」

「わかんないけど。松尾をめぐる戦いが始まるだね」

「ゆえは――先輩を知っている感じ……そして今の先輩の反応からして――小学校?くらいにゆえと先輩は接点あり?本当に松尾君をめぐる――戦い」

「奈都入らなくていいの?」

「な、なんでさー」

「別にー。ってか、マジで楽しいことになってきたー」


 俺と結崎。先輩を見つつそんなことを話していたのだった。


 結局石見先輩が荒れに荒れて――落ち着くまで3分。3分しか必要なかった。散々暴れて。


「疲れたー。後輩くん。これでおんぶ帰宅決定だね」

「—―俺の腕。石見先輩の爪痕だらけなんですが」

「気にしない気にしない。って。マジでゆえちゃん!?」

「え――う。うん。いろは先輩」

「やばー。えっ?何で何で?何でここにゆえちゃん居るわけ?ってか、後輩くんたちが話していた。ゆえって――本当にゆえちゃんだったんだ!やばー。あっ、あの時は急にいなくなってごめん。うまく伝わってなかったよね?うん。でも会えたから良しだよね。うんうん」

「あ、えっ。えっと――」

「ってか。後輩くんの妻ってゆえちゃんなの?」

「はい!?」


 石見先輩はその後結崎の横に行き。手を握りぶんぶんとしていた。そして何故か謝っていた?と思ったら。いきなりそんなことを言うので――。


「な。なんで、ってえっ!?どういう事!?えっ?」


 今度は結崎がパニックになっていたが。そのまま石見先輩は久しぶりの再会というのか。パニック結崎の横で。


「まあまあ。ゆえちゃん。久しぶりに話そう。いっぱい話したいことあるんだよ。うんうん。ってか。マジで確認だけど。後輩くんの妻?」

「い。いや。えっ――それは、違っ――」

「妻なの?ってか私さっき後輩くん寝取ったってことになったんだよねー」

「寝取った!?」


 なんか話をどんどんややこしくしていく。石見先輩マジでそろそろ黙って。ほら、慌てた様子でこちらをちらりと結崎が見てきたが――どうするのこれだった。

 でも今はすぐに石見先輩の話がまた再開して――という感じで。結崎。いろいろあとでちゃんと話すので、今は何とか耐えてくれ。と、俺が思っていると。


「松尾君松尾君」

「—―なんでしょうか?長宮さん」


 長宮さんが俺の横に来た。って蓮花寺さんは?と思いちょっと周りを見ると。校舎の方に入っていく蓮花寺さんが居た。手には――財布らしきものが見えたので、飲み物を買いに行ったらしい。自由というか。今はいいか。と俺が思っていると。


「これどういう状況?先輩とゆえは知り合いでいいの?」

「いや――なんというか。俺もはっきりはわからないけど、でもなんか今日先輩から聞いた昔話を結崎に例えると……ぴったりハマるというか――うん。多分知り合い?かと」

「なるほど――で、今は感動の再会中?」


 長宮さんがそんなことを言いつつ2人の方を見たので俺も見て見えると―。


「ってか。ゆえちゃんがこんなにかわいい。いや――これは……ギャル?になってるの!?前はもっと大人しい子だったよね?昔の地味なゆえちゃんはどこに?ってまさか。お派手になったからさらに身体が成長したのか!?ゆえちゃん!私にとにかく――胸頂戴。あと身長もすこしでいいから。ってか触らせて!私にないそれ。触らせて。昔はお風呂で触らせてくれたよね!?」

「そ、そんな過去無いですよ!?って、さっきからいろは先輩ひどい事言いまくってません!?」

「触らせて―。ちょっとだけー」


 あっちはあっちで大変そうだった。


「嫌ですよ。って、いろは先輩は――かわいくなりましたし――髪も伸びて」

「私は胸が欲しい!」

「ちょ。ど、どさくさに紛れて触ろうと――ちょ、いろは先輩!」

「ちょっとだけちょっとだけ」


 …………うん。マジで大変そう。あと、見てない方がいいか。と思いつつ視線を逸らすと。


「松尾君助けなくていいの?妻が襲われてるよ?」

「——あのさ。長宮さん」

「ごめんごめん。冗談冗談。ってか、私も混ざってこようかなー。ちょっとゆえの触ってみたいし」

「長宮さん。お座り」

「なっ。松尾君に犬扱いされたよー。傷つく……いや。わんちゃん……かわいいかな?」

「長宮さん。暑さでおかしくなってない?」

「かもしれなーい。ってことで。松尾君。冷たいジュース。至急飲み物プリーズ」

「マジですか」

「マジマジ。倒れちゃう」


 俺と長宮さんがそんなことを話していると。


「後輩くん!私も飲み物!」

「……聞こえていただと!?」


 何故か結崎と話していたはずの石見先輩が手を上げつつこちらの会話に参加してきたのだった。って、それと同時に飲み物を飲みつつ校舎から出てきた蓮花寺さんを見た俺達4人。美味しそうに飲んでいるだった。

 ってか結崎に関しては、そういえば息切らしてここまで来ていたか。そりゃ――見るよな。喉乾いてるよな。

 とりあえず。蓮花寺さんが美味しそうに飲み物を飲んでいたため。俺達は全員飲み物を買うために――一時休戦というのか。まあ話を強制終了して、校舎へとと向かおうとしたら、もう施錠するということで入れず。結局5人で高校前駅へと向かったのだった。

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