第54話 プール2

「ねえねえ松尾君。この後だけどさ。松尾君の家行っていい?」

「「はい!?」」


 唐突なことが多すぎて俺大変。そんな場面。プールから上がって――というとき。長宮さんがそんなことを言い出した。


「ゆえ。驚きすぎー」

「いやいや、なんでいきなり?」

「えっ?あー実はね。私のところ今日親居ないんだよー。だから暇だし――ちょっと松尾君ところにお邪魔して……暇つぶし的な?」

「いやいや――急に言われましてもね

「ダメ?ってか私的には田園駅?だっけ?そこ知らなかったから行ってみたいというのもあるけどねー」

「いや、来たところで――ド田舎ですけど」


 長宮さんが来てもなんも楽しくないと思いますよ?すると、俺と長宮さんが話していると。隣から――。


「……」


 なんか圧?いや、視線を感じた。俺と長宮さんはともに察知したのか。同時にそちらを見ていた。


「あっ、松尾君。ゆえが怒ってるなんで?」

「いやいや――えっ?」

「……」


 そして、はい。結崎さんじーっとこちらを見ていました。オーラがおかしい。などと思っていると。俺と長宮さんの視線に慌てたのか。急に表情を結崎は変えて。


「なっ――き、急じゃ松尾君ところのおばあちゃんたちに悪いよ。奈都」

「さすが仲良しは知っていることが多いなー」


 今度は女子2人で話し出したため。って、勝手に進められるとなので俺も話に入る。


「いやいや、長宮さん結崎が言うように。俺のところじいちゃんばあちゃんと一緒だからさ。急だと――だからさ」

「じゃ……夏休みに行くから。どう?」

「事前連絡がありましたら……」


 そう言われると、断れないな。


「よし、決まり」

「……」


 すみません。なんか長宮さんと話していると。また俺結崎に見られているんですが……。


「あの?結崎さんなんで俺睨まれてるの?」

「別にー」

「にひひー」


 そんな話をしつつ俺たちは大学前駅方面へととりあえず戻ってお昼にすることとした。

 その後バス移動中の時とかも。結崎と長宮さんは言いながら移動していたが。俺は触れないでおいた。なんか俺の名前が出てきていた気もするが――気にしない気にしないだ。変に入るとまた睨まれるかもだからな。

 そして大学前駅近くまで買ってくると――。


「さて、どうしようか。っか。プールでせっかく冷えたのにもう暑い」

「まあ昼間だからね。日差し強いよね」

「だねー。また焦げるよー」


 話しながら俺たちはとりあえずどこかのファミレスかカフェ、喫茶。という話になり移動しようとした。その時だった。


「あら、守じゃないかい?結崎さんに」

「——えっ?」


 唐突にまた人が増えるというか。マジか。


「あっ。おばあちゃん。おじいちゃん」


 結崎。ご紹介ありがとう。


「おう?うん?もしかして――松尾君のところ?」


 なんという事かー。と俺は心の中で叫んでおいた。タイミングが悪いというか。長宮さんに運が流れているというか。まさかこんなところにじいちゃんばあちゃんが居るとは。

 ってそうか。昨日話した時に今日は病院行くからみたいなこと言っていた気がする。俺今日の事しか考えてなくてさらっとばあちゃんの話流していたわ。と、俺は思い出しつつ声の主の方を見ていた。


 ちなみに、じいちゃんとばあちゃんがのんびり移動中に――偶然俺達を見つけたらしい。


「まあまあ結崎さん。こんにちは」

「こんにちは」

「ゆえがめっちゃ馴染んでるー」

「あら?また美人さんが」


 ばあちゃんはもちろんの事というか。今一緒に居た長宮さんの方を見る。


「松尾君!いいおばあちゃん!グッド!」


 そして、長宮さんの目が輝いていた。嬉しかったんですね。ってこの状況なんだろうか。どうしたらいいのだろうか?とりあえず紹介かな?


「……ばあちゃん。同級生の長宮さん」

「長宮奈都です。初めましてです」

「元気のいい子だねー」

「元気が取り柄ですからねー」


 ちなみにじいちゃんは、軽く手をあげるだけという。流したというか。いつも通りだった。


「おじいちゃんかっこいいね」

「あれは――、恥ずかしがっただけな気もするけど、って、ばあちゃんとじいちゃんは病院?だっけ」

「そうだよ。あっ、そうそう結崎さんまたいつでも遊びにおいで」

「あっ、はい。ありがとうございます」

「それに長宮さん。あなたもいつでも遊びにきてね。田舎で何にもないところだけど」

「はい!むしろ今からでも行きますよー。今日私家に1人で暇ってさっきも話してたんですよー」

「奈都!」


 結崎が長宮さんを止めてくれたのだが――時すでに遅し。ばあちゃんの目が何故か輝いた。輝いてしまったように俺には見えた。

 そしてばあちゃんは何かを思い出したかのように――。


「あらあら、それは寂しいわねー。よかったら泊りに来なさいよ。部屋はあるし。そうそうちょうどね。さくらんぼ送ってもらってたくさんあるから結崎さんに連絡するように、って、守に言おうとしていたところだったのよ」

「えっ?本当にいいんですか?私猪突猛進で行っちゃいますよ?」


 ヤベー、長宮さんがノリノリなんですけど……。


「賑やかなのは楽しいからね。晩ごはんも頑張りがいがあるわ」

「行きます!」

「長宮さん!?」

「奈都?って、泊まるの!?」

「結崎さんも良かったら泊りに来なさいよ」

「えっと――」


 言いながら俺を見た結崎そして。


「なら……はい。奈都が行くなら――」

「あれー!?」


 俺がなんか言う前に、結崎、長宮さんが来ることになっちゃったのだが。って、泊まり!?


「あ、あのばあちゃん?」

「あっ。守や。病院の時間があるからね。2人と先に帰ってておくれ」

「ちょっと――俺の話を……」


 俺が言いかける前にばあちゃんはスタスタと移動——そして後を追ってじいちゃんが再度手を軽く上げて通過と見せかけて。


「……守。大変だがな。これもいい事じゃ」


 とかつぶやいていった。じいちゃんなんでそんなに楽しそうなんだよ。あれか。にぎやかだから?いや……やっぱり女子が来るから?まあどうでもいいか。って、どうするんだよ。これ。


「……」


 とりあえずなんでこうなった?と俺が頭を抱えていると。


「松尾君。ってことでー、私ダッシュで荷物取って来るねー」

「えっ。長宮さん!?」

「また連絡するからー」


 俺が長宮さんの方を見る頃にはすでに後ろ姿。長宮さん行動早いよ。めっちゃ早いよ。なんで俺の家にそんなに来たいのさ。である。元気に駆け出した後だった。

 そして、あと……と、思いつつ隣を見ると。


「——ごめんね松尾君。流れで――」


 とか結崎には言われた。


「えっと……」

「その——流れで私も行くことにしちゃって」

「いや……ってか……なんでこうなった?」

「と、とりあえず――私も荷物取りに行こうかなー」


 どうも結崎も話したくない?いや、ごまかしたいのか?何とも言えぬ表情?勝手に決めたことにちょっと後ろめたさというか。何だろうね。これ。


「——あっ、そういえば、お昼とかの話消えたな」


 って、俺は俺で何を言っているのか。あっ。現実逃避ってやつかな?


「あっ。そうだね。私たちだけ食べてく?」


 確か俺達は先ほどお昼ご飯——という話をしていたのだが。気が付いたら長宮さん逃走。俺と結崎が残ったので――。


 結局俺は結崎は駅前のカフェに入り。軽くお昼休憩をしてから電車に乗り家へと向かうこととした。


「じゃ、また連絡するね」

「了解」


 公民館前駅で結崎と別れて――俺は1人で田園駅へ。駅に到着すると――暑かった。めっちゃ暑かった。夏だから仕方ない。そうだよな。今真昼間だもんな。とか思いつつ俺は自分の家。部屋へと歩いて行った。

 本当はプールでの疲れをとるために寝転びたかったが。あの2人がいつ来るのかわからない為。軽く。部屋の掃除をしていたら先に連絡をしてきたのは結崎だった。


 ♪♪~


 それも何故か電話を掛けてきた。


「——もしもし?どうしたの結崎」

「あっ。松尾君。今大丈夫?」

「大丈夫だけど?」

「実はさ。今奈都から連絡があってね――そのこの前花火私もらったじゃん。射的で」

「あー。もらったてたね。そしてやったね」


 楽しみましたね。うんうん。久しぶりの花火楽しかったわ。


「うん。楽しかったね。ってじゃなくて、その奈都が花火の事覚えてたみたいで……『まだ花火使ってないでしょ?松尾君ところでしようよ。ド田舎っておばあちゃんが言ってたから大丈夫だよ』って――今連絡してきちゃってどうしよう?」


 長宮さんちゃんと覚えていたというか。いろいろ起こるな。ホント。


「どうしようと言われてもな。花火なんて家にこっちはないからな……」

「そうなんだよ、でも――ちょっと言いにくくて……わかった。って言っちゃって」

「——それはまあ。長宮さんがすぐ来ると……バレるね」

「多分そんなに早くは無理だと思うけど……」

「うーん」


 まさかのとっとと花火をしたことでこんなことになるとは――と俺が思っていると。ふと頭に浮かんだ。


「あっ、この時期ならコンビニとかで売ってないかな?」

「あっそうか。そういえば見たことあるかも」

「それを買えば――多分長宮さん射的の時の商品を全部覚えているとはだし」

「だね。そうする。ありがとう、1人だとコンビニ思い浮かばなかったよ」

「いやいや、にしても、長宮さんよく覚えてたな」

「だね。ってじゃ。次くらいかな?買い物してから行くから」

「結崎もお早いことで」

「あっ――早いと迷惑だった?」

「いやいや、あー、外暑いから気を付けて」

「あ、うん。大丈夫大丈夫」


 結崎との電話はそこで終了。そしてそれから半時間くらいした時だったか。


 ♪♪


「松尾君ー。今から向かうねー」


 今度は長宮さんからメッセージが来て、それに合わせたように同じタイミングでスマホが鳴った。


 ♪♪


「コンビニで花火あったー。よかった。今から公民館前駅向かうね」


 結崎からも連絡が来たので――あっ。これ2人同時に来るなと思った俺は電車の到着時間に合わせて一応駅へと向かった。

 しばらく田園駅にある木の陰で待機していると。遠くから電車の音。そして――いつもの電車が見えてきた。そういえばここで誰かをこうやって待つのは初めてだな。とか思っていると電車が駅に到着した。


「——うん?」


 すると、電車から4人も人が降りてきた。なんという事かー。

 田園駅に一度に4人とか。俺は初めて見たわ。めっちゃレアというか。ありえないこと。

 だってこの駅の周辺で住んでいるの俺とじいちゃんばあちゃんだから3人だし。3人で動いた時でもかなりレアな3人下車なのに……今日は4人も下車だよとか思っていた俺って4人全員俺は知っている人というね。


 結崎。長宮さんはもちろんだが――まさかのじいちゃんばあちゃんも同じ電車で帰ってきていたとは。っか、買い物してきたんだな。じいちゃんが袋持ちしてるよ。


「あっ、松尾君。お出迎えご苦労ー」


 すると長宮さんがそんなことを言いながらこちらへと来た。そして結崎も来て。


「ちょうど私が乗ったら。奈都と。おじいちゃんおばあちゃんが話してて」

「なんとまあ、それはそれは――凄い偶然で」


 そして結崎の隣では長宮さんが。ばあちゃんからいろいろ聞いたよー。とかいう大雑把なことを言っていたが……なにを聞いたのだろうか?というのは今のところわかっていない。


ちなみに――じいちゃんは笑顔で、そして無言で荷物を持ちどんどん先に歩いて行っていた。いや、じいちゃんなんでそんなに楽しそうなんだか。まあいいか。


「っか、ホント。森だねー」


 周りを見つつ長宮さんがつぶやいた。


「でしょ?」

「うん。こんなところあるとか知らなかった」

「長宮さんはこっちに用が無いと思うからね」

「うんうん。っか、おばあちゃんが言ってたけど。ここって松尾君ところだけなの?」

「です。あとは、家はないけど設備系?がちらほらあるだけ」

「マジで?ここ松尾君とこ専用の駅じゃん」

「まあ、ですね」

「いいなー。なんかリッチ」

「リッチというのかは――だけどね」


 そりゃ鉄道の駅で専用の駅持ってますだとリッチかもだが。一応ここ専用の駅。ではないからね。ほぼ専用だけど。


「あっ、そうそう松尾君。ゆえにこの前の花火持って来てー。って言ったんだけど。出来る?って、すでにおばあちゃんからは許可もらったけどねー」

「まあ可能」


 その時俺はちょっとした不安が――いや、ばあちゃんは花火をしたのを知っている。なので俺が結崎を見ると。


「あはは……もうバレてます」


 そう言いなっがらガックリ結崎がしていた。そしてどうやら今の質問はわざとだったらしい長宮さんは超ニコニコしていた。


「なんとバレるまでが早かったことで」

「にひひー。まさか2人でもうしちゃってるとはねー。でもゆえがそれを隠そうとちゃんとコンビニで買ってきているとは、うんうん。澪には黙っててあげようかなー」

「——隠し事は難しいな」

「ホント」


 俺と結崎がそんなことを言っていると隣で長宮さんのご機嫌はマックス。これ――この後大丈夫かな?この後が大変な予感がしている俺だった。


 ちなみに長宮さんすでに電車内で俺の部屋というか。離れ?小屋の事も聞いていたらしく。


「まずは松尾君の部屋チェックだねー」


 とか言われた。なんか、俺の知らないところで、いろいろ情報が漏れた気がする。

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