第17話 必要な物

 グスタフさんの成人後、俺は焦っていた。


「どうしよう…。いや。新しいのは…。ダメだ。」


「もう諦めたらどうですか?」


「いやいや、まだ何かあるはず!」


「でも雑貨ですよ?」


 俺が焦っているのは成人式用の武器だ。

 俺の手持ちにある武器は作り直した銅の玉と金属棒。

 玉と棒を掲げるのか?

 下手すると垢バンされかねん。

 それもこれも、テロップ君のせいだ。


 テロップ君はぶち猫さんと一緒にやってきた2陣の動画撮影者。

 彼が、俺の成人式も配信するとか言い出したのを快諾した。

 そして後で気づいたのが、まともな武器を持っていないこと。



「助けてー!親方ん!」


「気持ち悪い言い方すんな!なんなんだ。」


「成人式用の武器が欲しいです。」


「その棒で良いだろ。」


「いや、これは使えますけど、コンプライアンス的に問題が…。」


「何言ってるかわからねぇが、棒じゃなきゃ良いのか?」


「できれば刃物で!」


 そう言うと親方は考え込んでしまった。

 さすがに不味かったか?

 ナイフ以外作ってないもんな。


「ほら。ハッチさん。やっぱり棒で行くしかないですよ。」


「そんなぁ…。」


「1個だけ思いついたのはある。」


 唐突に動き出した親方のセリフにびっくりする。


「あるんですか!?」


「雑貨に掛かってるから作れるが、ちょいとだけ難易度が高いぞ。」


「やる!やります!」


「それなら、また手紙書いてやるから掘ってこい。」


「うぇーっす。」


「なんでその時だけ、気の抜けた返事なのよ。」


 これは様式美と言うのだよ。





「お前も飽きないなー。わざわざ自分から苦労するなんてな。」


「仕方ないんです!垢バン回避の為には必要なドワ活なんです!」


「ほれ、次の動物きたぞ。」


 チュー!

 その声にはもう慣れた。

 金属の棒を降れば1当てで倒せる。


「ふ。俺も成長したものだ。」


「なーに言ってんだ。動物の中でも最弱倒して喜んでんじゃねえ。」


 すると階段から1人降りてくる者がいる。


「およ。ハッチさん。」


「グスタフさん。ドワ活ですか?」


「ええ。さすがに上ではスキル上がらなくなりましてね。」


 俺も最近わかったんだが、0層ではスキルレベルが10に上がらなかった。

 ちなみに今も上がっていない。

 おそらく9,9で止まっているんだと思う。

 未成年だから止まってるのか、他の要因があるのか。


「なので成人もしたし、下に降りてきました。しかし、監督も居て運が良い。」


 はて?何が良いのだろうか。


「監督に質問です。スキルレベル10になったら、何か特典はありますか?」


「その質問には50ゴールドだ。」


 そういえば金取るって言ってたっけ。

 グスタフさんからお金を取ると、何かを書いて渡している。


「俺も見たいなー…。」


「ふむふむ。良いですけど、私の予想だと見れないと思います。」


 そう言って渡してくれたが、文字化けしてわからなかった。


「本当だ。」


「特別な内容でもありませんが、もう少し知る人が増えないと開示されないでしょうね。」


「良くわかったな。」


 監督も驚いている。

 本当に、グスタフさんは頭良いんだよ。

 ただし、たまに変になるけどな。


「それも第2陣が来てわかったんですけどね。販売品に一番簡単な鍛冶のレシピが出て納得しました。」


「そうなんですか。俺の釣竿作成も近いかな?」


「それはハッチさんの頑張り次第です。というか釣竿なら木工では無いのですか?」


「それも習ってますけど、釣り針とかリールとかありますし。それに魔物釣るなら金属の竿も必要かと思いましてね。」


 そう言って棒を叩く。


「なるほど、確かにそうかもしれませんね。私から話を振ってますが、良いんですか?また敵来ますよ?」


「やば!掘らなきゃ!」


 今日も戦利品は良好。

 しかし変わらずマイナス付き。

 監督にも多めに掘って、ツルハシ変えろと言われてしまった。

 マイナスは付いても、掘るスピードが早くなるらしい。





 雑貨屋に戻ると、さっそく親方の授業開始。


「じゃあ、始めるか。」


「ところで、何を作るか聞いてなかったんですけど。」


「今回教えるのは鉈だ。」


 ナタか。

 狩人とか、森で使ってるイメージだけど、確かに剣っぽいよな。


「一応武器種にもなるが、雑貨でも作れる。俺の使ってるのはこれだな。」


 親方が取り出したのは、薄く赤に輝く刀身のナタ。


「かっこいい!」


「ここまでのは作れねえが、最下級ならギリギリ間に合うかもしれんな。」


「よろしくお願いします!」



《日本地域。全体アナウンス。日本地域。全体アナウンス。》


「急にどうしたのよ。」


「アップデートとかあったっけ?」


《初のスキルレベル10獲得者が現れました。以降10以降のスキルレベルが解禁されます。》


「え!?早すぎない?トップ組でもLV8か9になったばかりだって書いてたわよ?」


「前に言ってたスキルが上がらないって板だっけ?」


「そう。結構議論されてたけど、どうやったのかしら?」


「ひよっこども!そんなことより作業しろ!」


 おっと、ゲンコツ来る前に意識を戻さねば。


「じゃあ教えるか。とりあえず今まで通りインゴット作んな。」


「ラジャー!」


 ぶち猫さんにスキルLV9持ってるって教えた方が良かったか?

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