パン屋でパンを買うためにパンを預ける
妹が中学三年生の頃だろうか。宿題を見てくれるように頼まれた。
あまり自信はないが、内容を見ると図解されているものの意味のわからない内容だった。しかし、何度か見ていくうちに理解できるようになる。いくつかの図が三次元的に均等の感覚で並んでおり、その間隔を数値で出すというものだった。
計算で出すための式はわからないが、これは少し前に同じことをやっていた。
私はPCを動かし、3Dの画面を出す。私のPCはマルチディスプレイになっており、目の前にある二枚のモニターのほかに、壁に張り付いている巨大なモニターにも映し出せるようになっていた。以前、仕事のチェックをこの巨大モニターでやったのだと思い出す。
とはいえ、3Dの画面が出たので、弟(妹でなく弟になっていた)を呼んだ。そして、図解を3Dの画面でやろうとするが、なかなか難しいことだった。
昼時になったので食事を買いに出ることにした。皆、一様に外へ向かっていく。
私はコンビニでパンを選んでいたが、それならパン屋で買った方がいいと思い直した。しかし、いつの間にかフランスパンを一本抱えている。いや、これは以前に近くのパン屋とは別の店で買ったものだった。
パン屋に行くのにパンを抱えていてはいけない。
私は姉の姿を捉えると、声をかけ、フランスパンを手渡した。しかし、その女性は姉ではなく、まったく見知らぬ女性であった。
私は間違ってしまった気恥ずかしさでいっぱいになり、すぐにフランスパンを返してほしいと思う。だが、女性の方は私の意図を捉えられずに困惑しており、必死で断る口実を探して言い訳を続けていた。
気まずい時間を続けたのちに、謝罪しつつフランスパンを返してもらった。
今度は慎重にしなくては。何度か、姉と思しき人影を見かけるが、本人かどうか注意深く観察する。やがて、ようやくコンビニのレジに向かう行列に並ぶ姉を見つけることができた。
「パン屋にパンを買いに行くから、このフランスパンを預かってくれ」
そう言って手渡そうとするが、姉は余所の店のフランスパンを持って行ったとしても、パン屋はいちいち気にしたりしない。そう諭してくれた。
確かにそうかもしれない。私はフランスパンを持ったまま、パン屋に向かうことにした。
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