僕に悪魔の彼女ができるぞの巻


不用意に悪魔の力を使った俺は、悪魔に命を狙われることになった。どうにか逃げようとするが袋小路に追い詰められてしまう。

戦うしかない。得物の黒い鉄柱(長さ1メートル、太さ20センチほどの取っ手がついた武器)を手にして、悪魔を迎え撃つ。


袋小路には大きな柱があり、隠れることができた。俺は柱を利用してフェイントを仕掛け、悪魔の脳天に黒い鉄柱を叩きつける。だが、その瞬間に俺の動きはスローモーションのような、ゆったりとしたものとなる。悪魔への一撃は威力のないものとなった。

やはり悪魔には勝つことはできないのだ。俺は死を覚悟した。しかし、意外なことに悪魔が話しかけてくる。


悪魔は女だった。彼女は自分についてくるなら助けてくれるという。

女悪魔は美人という感じではないが可愛いといえば可愛い。俺はついていくことにした。

彼女は俺の手をつかむと走り出す。 彼女の手の感触が伝わり、緊張が走ったが、その手を離すことはできなかった。

この手は呪いで離せなくなっているのだろう。むりやりそう考える。しかし、そうでないとしても離したくはないとは感じていた。


彼女は俺を助けるために神々の首領であるゼウスに歯向かっていた。ゼウスの差し向けた追っ手に対し、彼女はラジコンのコントローラーで人形を操り撃破する。

だが、人形は一体につき一回しか使えない。再度人形を操るには【禁則事項】で人形を浄化しなくてはいけなかった。


彼女の住む寂れた団地にやってきた。部屋は4階の44号室。入口にボックス型のシャワールームがある。

「ここはホテルじゃないか」思わず口に出した。彼女がたしなめるように否定する。

彼女の部屋もホテルの一室のようだった。玄関はなく土足でそのまま入るようになっており、置かれているベッドと机は備え付けのもののようだ。広さは三畳ほどと狭く、二人で住むには厳しいと感じた。ベッドも小さい。


彼女が自分のシャツに手をかけると服を脱ぎ始めた。

それならば自分も脱がなくてはと、俺も服に手をかける。彼女にペースを合わせようとするが、彼女の脱ぐスピードが遅い。とりあえず靴下を脱いで彼女を見るが、すでにシャツを脱いでいたはずなのに、いまだにシャツを脱ごうとするところだった。

じれったいものを感じつつ、それを脱ぎ終えたら彼女を抱き締めようと考える。

だが、その直後、ゼウスが現れた。


屋上で激しい戦いが始まった。

俺にはどうすることもできない。恐怖にたまらず逃げ出した。 団地の外壁にあるステンレス製の排水溝を伝って滑り落ちる。

そして、どこへともなく走り去ろうとするが、どうにも走るスピードがゆっくりに感じられる。いったい、どこに逃げられるというのだろうか。

振り返り、彼女の部屋に向かって走りだす。こんなに早く別れるのは惜しい。そう自分に言い聞かせ、心を奮い立たせる。


だが、団地の入り口は似たような構造になっており、彼女の部屋がどこかわからなくなっていた。適当に階段を登ってみるが、見つからない。

部屋の番号を見ると34号室だった。そうだ、彼女の部屋は44号室だったはずだ。引き返すことにする。

そこで男女のペアとすれ違った。なんとなく顔を伏せて目を合わさないようにする。この二人も悪魔なのではないかと疑った。


44号室に続く入り口を見つけると、その物陰に悪魔の彼女がいた。人形を使ってどうにかやりすごせたようだ。

とにかく部屋に戻ろうと階段を登る。すると、さっきの男女のペアと再びすれ違う。やはり顔を伏せてやり過ごす。彼女も同じようにしている。やはり悪魔なのだろうか。


さらに先へ進むと、今度は3~4人ほどの集団がたむろしていた。彼らにも焦りや不安が見え隠れしているが、相手をしている時間はない。

彼らの意識に介入して俺たちから注意を逸らすと、テレポートで一つ上の階に移動する。そこではさらに大人数がたむろしていた。やはり様子がおかしい。

だが、そんなことよりも、俺は人の意識に介入したり、テレポートしたりしていた。そういう設定あったっけ? ん? 設定……?


目が覚めた。

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