第3話#3.回想

#3.回想



ここから回想シーンです。まーきーもーどーしー!


広々とした空間、ファンシーな家具と女神の部屋とは一転して、

10畳位のワンルームに机とPC、ベットだけの殺風景な独身OL風ルーム、

頭上には部屋干しされた洗濯物、床上には読みかけの雑誌が置かれている。

これこそが異世界監察官ナーロウ様のオフィスにして自宅!きたなっ!


「うるさいぞー、ナレちゃん。わしはまだ寝足りないんじゃー」


ベットの上で布団を抱き枕の様に抱きゴロゴロするナーロウ。

無地の半そでTシャツに短パン、まさにずぼら!ずぼらクイーン!


「起きてくださーい、ナーロウ様。仕事の時間ですよ」

「あーと5ふーん」


ナーロウを起こしに来たもう一人の存在、トカゲのグー子ちゃんです!


「トカゲじゃなくてドラゴンなんですけど!」


どっちも似た様なもんじゃないですか、と雑談は程々にしましょうか。

ナーロウの使い魔、いわゆる小間使い的存在であるグーコは

レッドドラグーンと呼ばれる希少なドラゴン種のメスの幼体だ。

幼体とは言っても齢300歳は越えている。

そんな彼女の大きさは手で掴める位の全長でとても可愛らしい。

そんな彼女の全長の3倍はあるであろう書類の山が

まるで蕎麦屋のベテラン配達員の如く絶妙なバランスで運ばれてくる。


 どすん!と紙から出るような音ではない音が部屋に鳴り響く。

書類の山が机の上にバベルの塔を築いていた。


「さあさあ、着替えて、着替えて!」


眠たげにあくびをするナーロウの前にいつもの服を用意するグーコ。

濃い緑の男物の軍服、同様の軍帽、黒い軍用ブーツ、日本刀(竹光)、

制服という訳ではないが、これが彼女の仕事着である。


「うーん?なんじゃぁ・・・この紙の束は。ワシへのファンレターか?」


まだ数話目なのにファンレターなんか来る訳ないでしょう、

というメタなツッコミは置いといて、グーコは半分呆れつつも、書類の中から無造作に一枚の紙をとりだした。


「仕事ですよ、し・ご・と!」


聞く前に見てくれと言わんばかりに紙きれを突き付けるグーコ。

その紙には「不正な異世界転生(転移)者の回収案件」と見慣れぬ文字が書かれていた。


「異世界の奴等がまーた面倒起こしおったのかぁ・・・」


「今回は転移ですからね、いつもとは違いますよ」


まだ目が覚めていないダルそうな主人に対し喜々として応えるグーコ。

どうやらこれまでは異世界とは言ってもその世界の中での出来事だったとか。

チートな生徒会とか魔王や大天使のいる学校とか、未開の惑星で暴れる未来人とか、よくラノベやゲームである世界だ。

 

 無論これらの世界の中で自己解決するのが望ましいが、

現地神でも対処しきれない場合やこちらに干渉してくるような異常存在も稀によくあるので、そういう時は監視だけでなく、陰ながら捕獲・破壊等を行っている。

しかし殆どは古文書や別世界からのメッセージを装って、現地神や更なる下界の異世界人間達に警告、助言を行う程度に留まる。

何故ならチートとは言ってもその世界の法則に沿った物だからだ。

過剰な加勢は必要無いし、厳禁だ。

そして基本その世界の人間に任せれば自己解決してくれる・・・しかし


 「はぁ~?直接現場に行けじゃとぉお?」


くっそ面倒臭そうに書類に言い放つナーロウ。

どうやら服はもう着替え終わったらしい。

まああのぺったん胸と起伏の無いスタイルじゃあサービスシーンにも、おっとくわばらくわばら(睨まれましたー^^;)


「・・・で、なーんでワシが直接行く必要があるんじゃ?」


不機嫌な眼差しでぐいっとグーコに迫るナーロウ。


「それはですねー、異世界転移が次元環境破壊を高レベルで行ってるからなんですよ。それも大量に。」


次元環境破壊というのは自然や動物を守りましょうー的なれではなくて、

タイムトラベラーが過去を変えたりしてタイムパラドックス的なあれを起こしたり、

現地神の小間使いの自称神々どもが特定個人を贔屓して無双させたり、

基本不干渉の現地神が調子に乗って顔出ししたりとまあ色々ピンキリなのだが、

一種族の全滅から始まり、惑星破壊、銀河崩壊、宇宙消失、最悪次元ごと消滅するケースまである。

そこまで行くと正直現地神の手には負えないだろう。

 

 神が対応する次元は数も大きさも様々で、

例えば地球系の惑星以外碌に知的生命体のいない特定銀河に偏った異世界で、

無数に存在する世界は全部地球のパラレルワールド(異世界)だったりする。

逆に広大な無数の銀河に無数の生命体が済む世界は異世界が少ない。

まあこれはあくまで一例なので必ずしもそうではないが、

特殊な世界や広大な世界を対応する現地神には細心の注意力が必要なのは言うまでもない。


で、なぜ異世界転移や転生が危険かと言うと、

1.輪廻転生のサイクルが乱れる

2.力を授けるのが現地神級の支配的存在である事

3.異世界の技術や文化の浸食による重大な次元破壊

大まかに分けるとこの三つだ。では詳細はと言うと


「なっげー、寝てたわ。3行でよろ」


退屈そうにあくびするナーロウ。うーんこの。まあいいか。

1.天国・地獄乱れる

2.加減っつーもんを覚えろks

3.異世界要素で時代の流れがめちゃくちゃになる

こんな感じで


「あーっ!、5行使ったからだめーwwww」


最初と最後の二行はノーカウントです!ノーカン!ノーカン!


「二人ともいい加減にして下さい・・・話が進みませんよ~」


 やれやれと呆れるグーコちゃん。いや、ほんとすみません。

という訳で、神級のチートパワーを得た異世界人による無計画な世直し行為が、方々に良くも悪くも大きな影響を与えていると。

その結果の被害報告がこの書類の山な訳である。


「ふーん、なるほどのう」


意外にも余裕を見せるナーロウ。


 「こんなん楽勝じゃろwww転移前にひっ捕らえればいいだけじゃw」


意気揚々と愛刀を片手に行く準備を整えるナーロウ。

部屋の扉を開けるとそこには異空間としか形容しようがない七色のサイケデリックな謎空間が広がっていた。


「今回の案件は”チートな光の魔術師”ですね。割とスタンダートな奴です。」

「チュートリアルには丁度いいのう。じゃあいざ異世界へ!」






以上、回想終了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る