第37話 テストの結果③

あれから、望月先生は、早急に掲示物を作り直してくれた。




新入生歓迎テスト(全クラス集計版)

一位、中村優(c組)

二位、伊世早美優(c組)

三位、岩泉凛(A組)




新入生歓迎テスト(クラス別集計版)

一位、中村優

二位、伊世早美優

三位、糸谷早瀬






うん。

ギリギリ、妥協出来る。


クラス別では、目につくかもしれないが、一学年全てに目をつけられるよりましだ。


全クラスの集計は、一年生の、学年掲示板に貼り出されるが、

クラス別集計版は、教室の後の黒板に、各クラスの分しか掲示されないからな。





まあ、掲示板を見るなり、中村優には、睨まれたが.............。

今度、謝っておこう。



と、いうことで、俺は、あまり、皆に注目を浴びることなく、さやを納めた。






入学式から、一週。

伊世早の屋敷で、親睦会もあったお陰か、割りと、クラスの雰囲気はまとまった。



男女とも、グループが確立され、女子は、3つぐらいのグループが出来ていた。

その中でも、特に、伊世早美優、仕田原理子の2人が居るグループは、結構、大所帯で行動している。

そのグループには、井勢谷桜も居るのだが、以外にも、彼女は、人を率先して引っ張るような性格では無いらしく、2人の後をついて歩いているって感じだ。




男子も、運動男子、文化系男子で、分かれた感じになっている。




そして、俺は、そのグループのどこにも属していない。


自慢、といっては、なんだが、入学式の日から、糸谷早瀬に話しかけてくる奴は、当然いなかった。

やはり、自己紹介の印象が強いのだろう。





まあ、それで良い。

妹たちも、楽しそうだ。

お兄ちゃんは、後から、いつでも、見守っているからな。




俺は、そんな事を思いながら、休み時間は、読書をする振りをして、周囲を観察していた。



「キモい。」



後を見ると、窓を開け、外を眺める振りをしながら、鳴神美琴が立っていた。

あの日みたいに、髪の毛を揺らしながら。




『おい。人に向かって、キモいは、失礼だぞ。』

『キモいものは、キモい。

どうせ、あのたちみて、感傷に浸ってたんでしょ。』



『兄が、妹を心配して何が悪い。』

『ふん。聞いて呆れるわ。兄だと思っているのなら、2人に本当の事を話せば良いのに。』

『.............。』

『言っても、あのたちが、あなたを蔑む事は、無いと思うけど.............?』

『.............。』

『ま、兄を名乗るのなら、それだけ、あのたちを信用しても良いんじゃない?』


『その時が、来たらな.............。』

確信をついてくる言葉が、棘のように刺さる。


『ずいぶん、元気が無くなったわね。お兄さん。』





ふふ。

彼女は、そう言って、顔を出していた窓を閉め、席に戻っていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る