第12話 ”こっそり”上司へ報告
瀬戸美月は、職場で困っていた。
結婚することを、上司に報告したい。
ただし、内密に。
でも、どうやって内密に報告すればいいんだろう?
困った美月は、課長の席が近いにもかかわらずメールをした。
『課長。 申し訳ありませんが、個人的なことで内密にお話ししたいことがあります。お時間をいただけませんか?』
しばらくして、返事が来た。
『わかりました。では16時から、C会議室を予約しました。そこで話を聞かせてください』
ここで、一つ問題があった。
美月の会社では、会議室予約システムで会議室を予約する。
そのシステムでは、会議室を誰が予約したかわかる。
この時間、C会議室は課長が予約しているのはみんなが知ることができた。
また、全員のスケジュールをスケジュールシステムで見ることができる。
課長の予定には”会議”と記載されていた。
美月の予定には”打合せ”と記載されていた。
その時間、同じ課の他のメンバーには会議の予定が入っていなかった。
つまり、瀬戸美月と課長が打ち合わせをするらしい。
目ざとい女子社員は、すぐにピンと来たのである。
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16時、会議室に美月が入ると早めに来ていたと思われる課長がすでに座っていた。
「すみません、お時間を取っていただいて」
「いや、全く問題ないが・・個人的な話ってなんですか?」
「実は、結婚を予定しておりまして。この度あらかじめ新居に引っ越しをいたしました。
住所変更の申請をするときに、驚かれるといけないのであらかじめ報告したいと思いまして」
すると、課長は大きく息をついて。笑って言った。
「なんだ・・・そうだったのか。おめでとう!
もし、退職するとかだったらどうしようかとドキドキしていたよ」
「いえ、退職の予定はありません。
あ、ちなみに結婚式は家族だけでやる予定です。また、実際の入籍をいつにするかや結婚式もまだ検討中です。そちらは決まり次第報告しますね」
「そうかそうか、わかった。
いや、おめでたいね。職場に周知するのは決まってからでいいかい?」
「はい、そうしたいと思います」
「うん、わかった」
「それでは、以上です。よろしいでしょうか?」
「あ・・瀬戸君。一応言っておくけどね」
「はい、なんでしょう」
「結婚した後の話だけど、職場では旧姓のままにしておくのか新しい姓に変えるか考えておいてね」
「え・・・・・あ、・・はい」
美月は、まったくそのことを考えていなかったのだ。
どっちがいいんだろう・・?
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その日、女子更衣室は噂でもちきりになった。
瀬戸美月が課長とひそかに会議室で打ち合わせをしたらしい。
このパターンでは、個人的なことを上司に報告したと思われる。
こういった場合、2つのケースが多い。
一つは退職。
一つは結婚。
そこから導き出される結果は・・退職は可能性が低いだろう。
であるとするならば・・
ついに、会社で美人ベスト3に入る瀬戸美月が結婚するかもしれない。
そして、その噂は次の日には女子更衣室を震源に独身男性の間で広く広まっていったのである。
会社内で、
これは、昨今ではなかなか難易度が高いのであった。
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