第3話 大笑い
俺達は港に船を停めて降りると、すぐ先に、獲れたての魚介類を売っている卸売市場が見えてきた。そこは、凄い活気に満ちていて、さっきから卸売業者の必死な声が絶えず響いている。
「今日は大量だぞぉぉー! 買ってらっしゃい! みてらっしゃーい!」
「こっちも大量だぁ! 安いよ安いよぉ!!」
船を降りて進んだ先にある卸売市場は、相互通行できない程、沢山の人でにぎわっていた。
漁港のある町とは、どこもこんな感じなのか?
とはいえ、それにしては人が多過ぎる気がするな。
「イモコ。ここは、いつもこんなに栄えているのか?」
「そんな事はないでござる。おかしいでござるな、流石にこれは異常でござるよ。」
イモコもこの光景を前に首をひねっている。
どうやら、これは普通ではないらしい。
じゃあ一体なぜ?
「サクセス様。多分ですが、これはサクセス様の影響かと思います。」
俺の疑問にセイメイが答える。
「どういう事だ? 俺の影響って割には、誰も俺に見向きもしないし、そもそも俺達に注目している人なんかいないぞ?」
「はい。正確に言うと、サクセス様の偉業達成の効果です。多分この町は、災禍の渦潮の影響で、これまで漁に出れなかったのかと思います。しかし、サクセス様がその根源を絶った事で漁業が再開したのだと予測されます。よって、活気にあふれているのかと。」
セイメイがそう説明すると、確かにそこらへんから聞こえる会話で
「久しぶりに海の魚が食べれるぜ! でもなんで急に海に出れるようになったんだ?」
「それがよ、どうやらあれが消えたらしいぜ!」
「まじかよ? でもそんな直ぐになくなるもんじゃねぇだろ?」
「なんか、例の派遣隊がやっつけたみたいだぜ。さっき派遣隊の奴らが自慢してたからな。」
等という会話が聞こえてきた。
なるほど。やはりセイメイが言うように、しばらく漁業ができずに魚が獲れなかった故に、その反動で今は物凄く人が溢れているようだ。まぁしかしそれよりも気になるのは、この町の男の服装だ。全員が白いTバッグのようなパンツ姿でケツをだしている。正直、男のケツはみたくない。
「どうやら、セイメイの言う通りみたいだな。んでさ、あの服装はサムスピジャポンじゃ普通なのか?」
「あれは、ふんどしでござる。某も履いているでござるよ。ここは海が近い町でござるから、ふんどし姿で外を歩くのも普通と言えば普通でござるな。」
ふんどし……。つか、イモコも履いてるんかい! やっぱ大陸が違うと色々とギャップが凄いな。まぁ、人様の国の文化をとやかく言うつもりはない。ん? そういえば、この町の名前を聞いてなかったな。
「ふんどしねぇ。まぁ涼しそうだけど、流石にあれを履いて外に出る勇気は俺にはないな。そういや、この町の名前を聞いていなかったな。」
「ここは、【オオワライ】という町でござる。昔から漁業が盛んな町で、特産として【アンコウ】と呼ばれる魚の料理が有名でござる。
「へぇ~。大笑いねぇ。そんなに面白い町なん?」
「いえ、特に面白い町というわけではありません。昔、御殿様と呼ばれる国主がこの町に来て、アンコウを食べた時、その味が美味過ぎて、笑いが止まらなくなったそうです。その時に、殿様がこの町の名前をオオワライと名付けたと言われております。」
「ほぇ~。やっぱりセイメイは博識だな。でもそう言われると、是非それを食べてみたくなったぞ。」
「わかりました。それではこのセイメイ、宿とアンコウの手配をしてまいります。サクセス様は、御先に波呂ワークにお向かい下さい。」
そういうと、セイメイは一時、俺達と分かれた。
実に動きがいい。
イモコもそうだが、サムスピジャポンの者は非常に無駄が少ない。
まぁ、この国の中でも特に優秀な人材であるが故かもしれないけどな。
という事で、俺達はまずは魔石の換金も兼ねて、ハロワークに向かうのであった。
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