第56話 船出の時
「みんな準備は大丈夫か?」
俺達の船【覇王丸】に全員が乗り込んだのを見て、俺はみんなに確認する。
「あぁ、いつでもいいぜ。」
「問題ありません、サクセスさん。」
げろぉ……(船嫌い……)
うん、若干1名……いや一匹を除いて全員問題ないようだ。
食料、備蓄物資、消耗品、道具、全ては昨日の内に全部船の倉庫に積み込んである。
イモコが指揮してやっているんだ、問題ないだろう。
「よし! じゃあイモコ、出発してくれ!」
「アイアイサー! 野郎共! 出発でござる!! よーそろーーー!」
「よーそろーー!!!」
俺の言葉を聞いて、イモコが出航の合図を叫んだ。
船員全員がそれに応えて叫ぶ。
船が動き始めると、船着場から大きな声が……
「おーーい! サクセス! 面白いもんあったらお土産持ってきてくれよ!! 死ぬんじゃねぇぞ!」
船着き場には見送りの者も多かった。
各ギルドマスターはもちろんのこと、兵士や町で知り合った住民等も沢山いる。
その中でも、ボッサンが俺に向かって一際大きな声で叫んでた。
あいつ、王様のくせにまだこんなところにいていいのだろうか?
まぁ、でも少し嬉しいけどな。
なので、ちゃんと俺も大声で返す。
「わかった! ボッサンも元気でなぁぁぁ!!」
「おう! 世界を頼んだぜ! 英雄!」
ボッサンがそう叫ぶと、周りから一斉に大きな拍手が飛び交う。
こうやって見送られるのは初めてではないけど、なんだか嬉しくなるな。
ありがとうボッサン!!
「それでイモコ、サムスピジャポンはここからどれくらいで着くんだ?」
お見送りが終わり、船が町から離れると早速イモコに尋ねた。
本当は出港前に色々聞いておきたかったんだが、この二日間、イモコは船長として準備が忙しく、わざわざそんな事を聞くために邪魔をするわけにはいかないから、まだ聞いていなかったのだ。
「そうでござるな、物資も万全でござるし……覇王丸の速度なら一ヵ月もあれば着くと思うでござるよ。」
「一ヵ月!? そんなにかかるのか? だって、この船は他の船の何倍も速いんだろ?」
思いのほか、日数がかかる事に驚いた俺は、びっくりして声が大きくなってしまった。
「そうでござる。覇王丸は速いでござる。それでもサムスピジャポンに着くには一ヵ月はかかるでござるよ。飛ばせば、数日は短縮できるかもしれないでござるが、船員の体調や安全性を重視するならば、そういった危険な渡航は避けるべきでござる。」
イモコは優秀な船長だ。
そのイモコが言うんだから、きっと間違いないだろう。
素人の俺が、どうのこうの言うことはない。
思ったよりも日数はかかるみたいだが、焦らず船でできる事をして行こうと思う。
サムスピジャポンに着く頃は、俺がマーダ神殿から出て約3か月半後か。
できるだけ早くしないと、ビビアンが心配だな。
一抹の不安を胸に秘めつつも、それとは別に、サムスピジャポンという未知の国に対する興味がわく。
なんというか、本当に冒険をしているみたいで……って、冒険か。
ワクワクするなぁ。
「そうか。まぁイモコがそう言うんじゃ間違いないか。ところで、サムスピジャポンについて色々教えてくれないか? あ、忙しかったら、また後で構わない。」
「今は大丈夫でござるよ。出港してしばらくは問題ないでござる。天候も良いでござるし、ブリーフィングルームで話すでござるか?」
ブリーフィングルーム。
作戦会議室か。
この船は豪華客船と言える程大きいし、きっと色んな施設があるんだろう。
うん、楽しみだ。
「そうだな、一ヵ月もあるんじゃ、船での予定や訓練についても話したいしな。それじゃ、案内してくれ。シロマとカリーもいいか?」
「おう、いいぜ。俺もサムスピジャポンってのは気になるしな。」
「私も大丈夫です。イモコさん、案内お願いします。」
げろぉお(僕は日向ぼっこする。)
ゲロゲロは天気がいいせいか、既に船の上に置いてあるハンモックの上で丸くなって、目を閉じている。
前回の事で船になれたのか、今回は船酔いの心配はなさそうだ。
気持ちよさそうにしているし、ゲロゲロはこのまま寝かせてあげよう。
ということで、俺達はゲロゲロをおいて、イモコの案内に従ってブリーフィングルームに向かう。
「おお! ここ、恰好いいな!」
イモコが案内したのは、船の丁度中央にある大きな部屋だった。
部屋の中央には円卓が置かれており、正に作戦会議室といった感じ。
そして部屋の奥には、綺麗な女性の写真が飾られている。
「ん? イモコ、あれはお前の彼女か?」
俺は早速、その写真に写る女性についてイモコに尋ねると、イモコは激しく動揺した。
「と、と、とんでもないでござる! 恐れ多いでござるよ! その方は、我がサムスピジャポンの女王様の卑弥呼様にござる!!」
「へぇ~。女王様が国を統治しているのか。随分綺麗な人なんだな。」
「サクセスさん!!」
「あ、いや、えっとシロマほどじゃないけどな!!」
俺が卑弥呼の写真をマジマジと眺めながら呟くと、シロマが怒りだす。
大丈夫、俺は熟女好きではない!
ということで、軽くフォローだけは入れておく。
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