第30話 不吉な兆候

「師匠!! 大丈夫ですか!? はっ! まさかもう一人の彼は……。」



 ペリー号が岩礁に横付けすると、イモコとゲロゲロが走って俺のところに向かってきた。



 ん?

 あ、そうか。

 不測の事態って連絡だったな。



「大丈夫、カリーは今出入口を見張っている。それよりも、こいつらを頼みたい。」



 俺は魔法のロープを引っ張り、岩場の後ろにまとめていた盗賊たちを手繰り寄せた。



「これは……まさか、もう全て捕まえたでござるか!?」



「いや、違うんだ。ちょっと思いの他、盗賊の数が多くてな。一度、引き渡さないと難しくて。それと、アジトに残っている盗賊は、ガンダッダを含めてあと10数人だ。こいつらを預けたら、直ぐにアジトに向かう。」



「なるほど、そうだったでござるか。わかりもうした! それではこやつらは某にお任せあれ!」



「あぁ、頼んだぞ。後、船はもうそこに停めていて大丈夫だ。出入口の近くには、盗賊はいないからな。」



 俺がそう言うと、イモコは船に戻り、部下を数人連れてきて、別のロープで盗賊たちを縛り始めた。



 ゲロォォォ(次は僕も行く!!)



 すると、ゲロゲロが俺の足に頭をこすり付けながら鳴く。

 俺は、そんな可愛いゲロゲロを抱き上げると、優しく頭を撫でた。



「もう少し待っててくれ。イモコ達を守れるのはゲロゲロしかいないんだ。だから、頼む。戻ったら、たらふくうまい物たべさせてやるからな。」



 ゲロ! ゲロォォン!(うまいもの!? わかった! じゃあイモコ守る!)



 すると、ゲロゲロはまた直ぐに船に戻っていき、周囲をキョロキョロ見回したり、クンクンしている。

 どうやらやる気が出たようだ。

 敵が周りにいないか、かなり警戒してくれていた。



 これなら、この船の守りは大丈夫だろう。

 あとは、俺達がガンダッダを捕縛するだけだ!



 無事に盗賊を別のロープに巻き付け、魔法のロープを回収した俺は、カリーの待っているアジトの出入り口に向かった。



 俺がアジトの中に入ると、カリーは出入口近くの岩に寄りかかるようにして立っている。



「待たせたな、カリー。盗賊共の動きはどうだ?」


「あぁ、動き自体は特に変化はねぇな。まだ仲間が捕縛されている事には気付いていないと思うぜ。ただな……ちょっとだけ気になることがある。」


「気になる事??」


「多分一番奥の広間にいるのが……その、なんだったか? 頑張った? とかいう首領だとは思うんだがな、最初はそこに10人位の熱反応があったんだ。それが途中から二人になって、そして今は一つしか反応がない。」



 頑張った?

 ガンダッダが頑張った。

 いや、頑張らんでええわ!



「カリー、頑張ったじゃない。ガンダッダだよ。ギャグかよ! って、それはいいとして、それの何が気になるんだ?」


「そうか。ガンダッダな、覚える気がないからどうでもいいが。それで、俺が気になるっていうのはな、最初にその部屋にいた奴らは、ちゃんと移動していたんだよ。だから、別に問題ない。だが、二つの反応が一つの反応になった時、そいつは移動していない。というよりも、少しづつ熱が下がっていった。つまり、死んだってことだ。」



「死んだ? ガンダッダが?」



「いや、それはわからない。だが、間違いなくガンダッダが誰かを殺したか、誰かがガンダッダを殺したか、このいずれかだ。」



 ガンダッダが死んだ?

 いや、それはないな。

 じゃあ、ガンダッダが誰かを殺した?

 誰を?



 そう言えば、まだノロ隊長は見つかっていないな。

 って、まさかな。



「確かに気になるが、盗賊が一人減ったと考えるならば、むしろ運ぶ人数が減っていいと考えようか。とりあえず、今盗賊たちは何か所の場所に分かれているか教えて欲しい。」



「二ヶ所だ。一ヶ所は、さっきいったガンダッダがいると思われる最奥の部屋。そして、もう一つはその少し近くにある部屋に十数人いる。体温が高めだから、こいつらも酒を飲んでいるに違いない。」



 なるほど、ラスト二ヶ所か。



「カリーはどっちからがいいと思う? ガンダッダか、子分達か?」


「まずは、子分達を捕縛した方がいい。もしも、ガンダッダを捕縛しても、子分達に罠でも仕掛けられたら困るからな。それに、この状況なら子分達を捕縛したらその部屋に閉じ込められるだろ?」



 確かに!

 なら、それで決定だ。



「オッケー。じゃあそうしよう。まずは子分、そして最後にガンダッダだな。」



 とりあえずやる事と順番が決定した俺達は、再度アジトの中を進んで行く。

 さっきこの道を往復したばかりであるが、分岐が多すぎて、俺には途中から全くわからなくなった。

 しかし、カリーは迷わず進んでいる。

 なぜだろう?



「なぁ、カリー。道は合ってるのか?」


「ん? 当たり前だろ。目印があるからな。」



 そういってカリー見ている壁を見てみるが、俺には目印らしいものを見つけられない。



「何も無いように見えるんだけど。つか、カリーは戻る時、壁を蹴ってただけじゃん。」


「まぁそう見えるよな。だけどあれは、ただ蹴っていたわけじゃない。風属性のブーツで、壁に風を付与していたんだ。さっきから分岐する度に風が少し吹いただろ? 気付かなかったか?」


「あ、そういえば、吹いてたかも。全く気にしてなかったわ。」


「その風が目印ってやつだ。まぁ、そんな事自慢してもしょうがないから、さっさと先に進むぞ。大丈夫だ、道は合ってる。」



 すげ……。

 やっぱ、カリーすげぇ。

 本当にオールマイティなベテラン冒険者だわ。

 さっきまで「ぜぇぜぇ」息を切らして弱音を吐いていた奴とは思えんばい!



「カリーは、本当に頼りになるな。よし、じゃあさっさとガンダッダを捕縛して、徹夜明けで宴会だな!」


「お! いいね。あ、ダメだ。サクセスは酒飲むなよ。店で飲まれたら大変な事になるからな。」


「なら、でっけぇ部屋借りてそこで飲もうぜ。それならいいだろ? 一番高い宿なら、多分あるだろ。」


「ふ、それならいいか。何だか楽しくなってきたよ。」


「俺もだぜ、カリー。サクッと終わらせてパーティしような。」



 俺とカリーは、既に捕縛した後について思いを巡らせ、テンションをあげていた。

 だがしかし、この後、まさかあんなことになるとは、この時の二人にまだ知る由はなかった。









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