第18話 ルーズベルト1

「おはよう、カリー。昨日は楽しかったよ。」


「ん? あぁ、起きたか。俺も楽しかったけど……サクセス、お前酒癖悪りぃな。」



 昨夜、夕日が沈んだ後、カリーの作る絶品料理を食べながら、再度酒を酌み交わして談笑した。

 ガールズトークならぬ、ボーイズトークである。

 お蔭でカリーの事を今まで以上に好きになった気がする。



 違うよ?

 そっちじゃなくて、人としてだからね!



 とまぁ、そんなこんなで色々話をしたはずなのだが……途中から記憶がない。

 うむ、やはり俺は、酒はほどほどにしないといけないようだ。



「すまん! ちなみに途中から記憶がないんだが、俺は何をやったんだ?」



 一応確認する俺。

 まぁ、男二人なのだから、たいていの事は許容範囲だろう。



「そうだな、いきなり裸踊りをし始めることから始まり……。」


「ちょ! たんまたんま! もういいわ! あちゃー、またやっちまったか。でもカリーだけで良かったわ、女性がいたらまた大惨事になるところだったな。」



 カリーの出だしの冒頭を聞いただけで、自分の醜態が想像できる。

 冒頭からそんなハイレベルな珍プレイをしていたなら、その後の事はやっぱり聞きたくはない。

 すいません、許容範囲外でした。

 ペポシの家で飲みすぎなくて、本当に良かった。



「お前……毎回あんな風になるのか?」


「いやいや、今回はちょっと開放感が半端なくて、ついやり過ぎただけ。普段はちゃんとセーブしてるさ。」


「ならいいんだがな。んで、今日はどこまで進むつもりだ? 一応、あそこが目的地なんだろ?」



 カリーは、海沿いに見える港町を指す。

 女神の導は、その港町の方角を指し、更に光は海を突き抜けていた。

 つまりは、港町から船に乗っていかなければならない事を意味する。



「そうだな。とりあえずは、最初の目的地はあそこで間違いないと思う。町は一つしか見えないし、あれが【ルーズベルト】だろう。ここからだと……急げば今日中に着きそうだな。」


「俺もそう思う。だが、近いように見えて結構遠いぞ。着くとしたら夜だ。」



 カリーも俺と同意見のようだ。

 俺も着くのは夜になると思うが、それでもかまわない。

 ただ、宿が空いているかだけが心配だな。

 空いて無ければ、馬車で寝ればいいか。



「うし、じゃあ行くか。一応、初めてのマップだから安全に注意して行こうか。」



 それから俺達は山を下ると、小さな森を隔ててルーズベルトに向かった。

 森の中では、珍しくモンスターと遭遇する。

 だがしかし、ゲロゲロがサクっと倒してくれるので、障害にもなりえなかったが。


 そして日が沈んで夜になると、やっとルーズベルトの町が見えてきた。



「カリー、間もなく着くぞ。起きろ!」



 俺は馬車の中で寝ているであろう、カリーに声をかけて起こす。



「あ、あぁ。すまん、ちょっと寝過ぎちまったか。悪いな。」


「いやいいって、見張りで疲れているんだ。でも今日は普通に寝れるんだから、早めに起きていた方がいいだろ?」


「そうだな。お、門番が立ってるな。こんな夜でも警備しているって事は、ここはしっかりと統治されているっぽいな。」



 カリーは馬車から顔を出すと、町の門の前に立っている兵士達を見ていった。

 お城っぽいのはないから、町には間違いないんだろうけど……ん? 今のはギャグじゃないぜ?


 と、それはいいとして、やはり港町だから交易が栄えているんだろうな。

 だからこそ、色々と厳重なのかもしれない。

 できるだけ、怪しまれないようにスムーズに門を通過したいところだ。



「そこの馬車! とまれぇぇい!」



 俺達の馬車が門に近づいて行くと、突然、重装備をした兵士達が馬車を囲み始め、その中の一人が大声で叫んだ。

 俺は、とりあえず言われた通り馬車を止めると、隊長っぽい風格の男が近づいて来る。



「こんな夜更けに何の用だ? 貴様らは何をしにここに来た? 正直に話せ!」



 へ?

 なんでいきなりこんな威圧的なんだ。

 つうか、何か疑っている感じがする。

 どういうことだろうか?



「私は旅の冒険者で、船に乗りたくてこの町に来ました。怪しい者ではございません。」 


「ふむ、怪しい奴はみんな怪しい者ではないと言うんだな。おい、お前たち! この馬車を隅々まで確認しろ!」


「サー! イエッサー!」



 俺は正直に話したのに、いきなり言いがかりをつけられてしまった。

 それどころか、兵士達が勝手に馬車の中を荒らしまくっている。



 これが普通なのか?

 こんなのが許されるのか?



「おい、てめぇら。いい加減にしろ! 誰の許可を得て、こんな事してるんだ? 理由も説明せずに何様なんだよ!」



 俺がキレそうになる前に、カリーがキレた。

 隊長の前まで行くと、「あぁん?」と言った感じで顔を近づけながらメンチビームを発射している。

 しかし、隊長はそれに負けずに睨み返していた。



 一触即発の雰囲気だ。

 正直俺は、「いいぞぉ! やれやれぇ!」と煽りたくなってくる。

 


 がしかし、いきなりこれは流石にまずいだろ。

 とりあえず止めるか。

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