第6話 モンスター大集結

 翌朝、お腹の上で丸まっているゲロゲロを撫でながら起き上がると、既に馬車の中には誰もいなかった。

 どうやら、俺は寝過ぎてしまったらしい。

 

 クンクン……


「あれ? なんだか美味しそうな匂いが……。」


 ゲロォ(おはよう)


「おはようゲロゲロ。みんなもう起きてるみたいだぞ。とりあえず外に出るか。」


 俺がそう言うと、ゲロゲロはまだ眠そうにしながら起き上がる。

 そして前足をグググッと伸ばすと、俺の後ろを付いて歩き始めた。

 朝からゲロゲロは可愛いのう。


「あ、サクセス。おはよう! 昨日はグッスリだったね!」


 馬車から出ると、早速リーチュンが俺に気付いて、朝から元気よく挨拶をする。

 そして他の二人も俺に気付いた。


「あ、サクセスさん。おはようございます。もうすぐご飯できますから、待っててください。」

「サクセス様。昨日はよく眠れたようで。朝から精がつくものを作ってますので、今夜は可愛がって下さい。」


 うーむ、朝起きると美女三人が俺の為に料理をしている。

 これはもう、完全にあれだな。

 ハーレム系主人公だな。


「みんなおはよう。そしてイーゼは朝っぱらから何言ってんだよ……。」


「そうよ! 今日はアタイと添い寝する約束なんだからね。」


 え? 初耳なんですが?


「また適当な事言わないで下さい。まだ昨日の決着はついていないんですからね。」

「それよりもできましたわよ。早くみんなで食べましょう。」


 どうやら、女性陣は仲直りできたようだ。

 昨日俺が言ったとおり、ご飯もみんなで作ったみたいだし。

 俺も手伝うつもりだったんだけどなぁ。


「いただきます!」


 今日の朝食は鶏肉の入ったクリームシチューとパン。

 鶏肉なんて買ったっけかな?

 まぁうまいから、そんな事はどうでもいい。


 おいしい朝食を終えた俺達は、早速マーダ神殿に向かった。

 予定だと後四日もすれば着くみたいだし、この山岳地帯も後三日で抜けられる。

 旅は順調だ。


【三日後】


「サクセス様、ここから後は降りていくだけですわ。下に見える森の向こう側にマーダ神殿があります。」


 俺達は今、山頂まできており、そこから下が見下ろせた。

 山頂から見下ろす風景は中々に絶景である。


「おお、こりゃあ絶景だな。ん? ちょっとあれ……なんだありゃ……。」


 俺が山頂から下を見下ろしていると、山の下にいる物凄い数のモンスターを発見した。


「あれは……オーク種ですわね。ギガントスライムもいますわ。」


 イーゼの説明によると、下に集まっているのは


 オーク

 ハイオーク

 オークキング

 オークロード

 ギガントスライム

 ギガントスライムブス

 シャーマン

 ハイシャーマン

 シャーマンキング


らしい。

 

 遠くから見えるだけでも、その数は500を超えていた。


「どうしますか、サクセスさん。流石にあの数はまずいと思います。迂回しますか?」


「そうだな。でも、あれってマーダ神殿に向かっているんだろ? だったらここで数を減らすのもありなんじゃないか?」


「そうよ、シロマ! アタイがあんな奴らパパっとやっつけてやるわ!」


 いや、流石に無理だろ……。


「そうですわね……リーチュンはともかく、全滅させるのは無理でも、減らせるなら減らしておきたいですわね。」


 シロマ以外は、みんな討伐に賛成のようだ。

 しかし、敵の情報もないしな……それに集まっているなら、まだまだいるかもしれない。

 どうする……俺。


「うーん、今見えている敵はどのくらい強いんだ?」


「そうですわね、今の私達なら一番強いモンスターを相手にしても、問題はないレベルですわ。ギガントスライムとキングクラスの敵はかなり強めですが。」


 なるほどね。

 しかし、ギガントスライムねぇ~。

 遠くからでもわかるが、ありゃデカ過ぎだな。

 スライム100匹は軽く詰まってそうだ。


「何かいい方法はないか? 流石に正面突破は厳しいだろ?」


 俺の質問にイーゼは考え込む。

 そして……


「いえ、正面突破はありかもしれません。サクセス様とゲロゲロに突破してもらって、残りを私達三人で撃破する。今のサクセス様なら、多分、ダメージはほとんどないはずですから。」


 確かに俺の防御力半端ないからな。

 俺を見た普通の冒険者なら泣いて叫ぶだろう……


 サクセスはんぱないって!


ってな。

 どこか聞いたセリフだが、気にする事は無いぜ。


「何言ってんのよ! サクセスに何かあったらどうすんのよ?」


 しかし、これにはリーチュンが反対した。

 ところで一ついいか?

 俺よりゲロゲロの心配をしてやってくれ! 


「私だってサクセス様に無理を願うのは嫌に決まってますわ。ですが、それが一番安全なのも事実。サクセス様は正面突破で少し暴れた後に、戻ってきてください。要は釣りですわ。」


 だから、ゲロゲロも一緒に突破するんでしょ?

 イーゼもゲロゲロはスルーかよ!


 とりあえず俺は、何も理解していないゲロゲロを見つめながら撫でた。

 安心しろ。俺が必ずお前を守る!


 ゲロォ?(何?)


 ゲロゲロは不思議そうな顔で俺を見つめていた。

 んで、釣りってなんざんしょ?


「釣り?」


「はい、あれだけの数を一ヶ所におびき寄せられるならば、私とシロマさんの魔法で一気に殲滅できると思います。分散している方が危険です。そして残った敵は、サクセス様とリーチュンとゲロゲロで倒していただければいいかと。」


 ふむふむ。

 確かに森の中で色んな場所から襲い掛かられたら厄介だな。

 その点、俺とゲロゲロに集中して追っかけてくれるならば楽だ。

 やはりこの変態、頭はキレるな。


「なるほどな、確かに俺とゲロゲロの素早さならイケる作戦だ。よし、じゃあそうしよう。俺はイーゼの作戦に賛成だ。」


「わかりました。ですが無理はしないで下さい。サクセスさんが例えどんなに強くても、何があるかわかりませんから。危険を感じたらすぐに戻ってきてください。」


 そしてシロマまでもがゲロゲロをスルー。

 みんなゲロゲロが可愛くないのか!?

 そんなはずはない、見てみろ。

 こんなにモフモフしているんだぞ!


 俺はとりあえずゲロゲロのアゴの下を撫でる。

 ふわふわ、モコモコで、肌触りが最高だ。


 ゲロォォ(気持ちいい……)


「サクセスがいいならアタイは何も言わないわ。」


 俺がゲロゲロと二人の世界に入っていると、シロマとリーチュンも、しぶしぶではあるが賛成した。


 まぁ、なにはともかく、この作戦が成功すれば、マーダ神殿の脅威が減る。

 到着は遅れるかもしれないが、敵が集まってきているということは、まだ神殿は無事なはず。

 とりあえず、今の俺達の力を測るにも丁度いいしな。


「よし! いっちょみんなでかましてやるか!」


「腕がなるわ!!」

「この鞭の威力を早速試せますわね。」

「私も今回は攻撃魔法を積極的に使います。」


 あれだけのモンスターを目にしても、全員のやる気は十分である。

 よし! 今回の俺達の作戦は、いつもと違い


  がんがんいこうぜ!


でいってみるか!!

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