第75話 三河に戻り・・・
「ただいま。」
「ヒロユキくん!」
「お兄ちゃん!」
ミユキとユメは二人して抱きついてくる。
「いたたた・・・」
ミユキがキズに当たり痛かった。
「ごめんなさい!」
「ミユキさん、ユメさん、ヒロユキ様はお怪我をなさっているのです。もっと優しくしてあげてくださいませ。」
笛がミユキとユメをたしなめる。
「マサムネ、家臣を集めてくれ。一大事が起きている。」
「わかってる、既に揃っている。お前の到着待ちだ。」
「ありがとう、じゃあ行こうか。ミユキさん、ユメちゃんまた後で。」
俺は再会の時間も惜しんで広間に向かう。
だが、足を引きずっていたために遅かった。
「遅い、俺が担いでやる。」
マサムネにお姫様抱っこされる。
「あかん、あかんよ、マサムネ、これ恥ずかしい。肩貸してくれるだけでいいから!」
「此方の方が早い、ウダウダ言わずにさっさと行くぞ。」
俺はマサムネにお姫様抱っこされたまま、家臣の待つ広間に・・・
「お帰りなさいませ!」
家臣一同の声に俺は恥ずかしながらも・・・
「ありがとう、マサムネ降ろしてもらえる。」
俺は上段に降ろされた。
「事態は知ってるみたいだね、さて、これから俺達はどうするかを話合おうか。
信玄公の隠居に伴い、義信が家督を継いだが、どうやら俺は義信に殺したい程恨まれているらしい。
既に襲撃を受けた。」
俺は服部正成を見た。
正成は深く頷く。
この事に襲撃を受けたという話が真実とわかり場はザワツク。
「それでどうするか相談だ、三河は信繁様から預かっている土地ではあるが、
実際、旧松平の家臣のみんなが治めているだろ?
もし、俺がいなくなったらどうする?
武田につくか、織田につくか、それとも独立するか?」
「ヒロユキ様!いなくなるなど言わないでください!我等一同如何なる時もヒロユキ様に付き従う所存!
三河の者は皆ヒロユキ様に感謝しているのです。
民も裕福になり飢える事がなくなりました。
我等はその御恩に報いるつもりにございます。」
「三河の人達の気持ちはわかった。
他の人達はどうかな?業盛や綱秀は武田に下った将だからね。
他にも在野から登用した者達も去就は自由だよ。
今なら武田家に戻れると思うが?」
「無論、我等もヒロユキ様に従います。」
俺は家臣一同を見渡し、皆の同意を得たところで、
「ならば、我等は一蓮托生!これより武田義信の廃嫡に動く。」
「武田に反旗を翻すのでは?」
「三河だけだと厳しいかな、後ろに織田もいるしね。一先ず信玄公に隠居の撤回を求める。
ただ、戦の恐れも充分あり得る、守綱は岡崎城にて織田に備えてくれ、くれぐれも此方から手を出さないように、
正信と康政は守綱の補佐してくれ」
俺は織田の備えに渡辺守綱を大将に本多正信、榊原康政を配置する。
「マサムネは軍を起こして何時でも出陣できるようにしておいて。」
「了解だ!」
「正成は諜報活動と各地方の武将に手紙を届けてくれ。」
「手紙ですか?」
「うん、俺が襲われた事も含めて今回の一件を各武将に伝える、義信の廃嫡に賛同するものを集める。」
「かしこまりました。」
「リクと長安は民に不安を与えないようになだめて回ってくれ。」
「わかった。」
「了解しました。」
「さて、信永、このような事になった以上、どうなされますか?
梅さんを連れて一度信繁様の元に戻られた方がよろしいのでは?」
「ヒロユキ様は武田と敵対の道を歩むのですか?」
信永に指摘された通り、既に敵対してもおかしくないぐらいには準備をしている。
簡単には討ち取られないつもりだが・・・
「確かに敵対することもあり得るな、仕官した期間は短いといえ、それなりの手柄は立てている筈だ。
それを意見した事が気に食わないと殺しに来るものに従う気はない。
義信が家督を継ぐなら、俺は武田を出る。」
はっきりと武田を出ることを告げた為に、
俺の言葉に信永の顔は青くなっている。
「し、しばし、お待ちを!必ず父信繁から信玄公に上申して隠居を撤回していただきます。」
信永は慌てるように部屋を出ていった。
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