生徒会? え、違う?

「朝のホームルームを始める。一年生は今日から戦闘会の登録が可能だ」


は? 学園長先生いきなり唐突じゃないっすか? 大体1年坊主が生徒会に入って何するんすか? 先輩の椅子でも磨いたらいいっすかね? それとも焼きそばパン?


「我こそはと思う者は当然だろうが、戦闘会の順位が高ければ単独者との1対1での特訓、優秀生としての報酬金、世界異能大会へのエントリー権、式符の使用や教材の優先使用権など様々な特典が発生する。それ以外にも大手の事務所や政府機関からのスカウトもだな。まあとにかく色々メリットがある」


最後投げすぎだろ。っていやそこじゃない。生徒会じゃなくて戦闘会って貴方……。でもその内容をどこかで聞いたような。


ああ思い出した! それアメリカの最初の異能養成学園が打ち出した悪名高き校内ランキングじゃん! 一時期そのせいで学園中戦場みたいになって、対妖異じゃなくて対人間に特化した奴ばっかりになったんだろ!? 流石自由の国だ格が違う。


「それと従来の能力者同士による1対1に加え、新しく式符を相手にした1対1と、5人1組による格上相手の順位を追加した。アメリカの最初の養成所を参考に導入された本制度だが、やはり異能者の本分は対妖異にある。こちらも高く評価されるため奮って参加して欲しい。ああ、基本は学年によって式符は違うが、学年を超えた力量があると上級生が見込んだ場合、直接声を掛けて来るかもしれん。その場合は活躍次第だが特別の評価となるため、一度お試ししてみるのもありだ」


ははあ、やっぱり学園長はまず妖異の被害を抑える事が念頭にあるな。まあ悪さする術師もよっぽどじゃなければ、警察学校である程度訓練した能力者で十分だからな。日本全土から将来有望な能力者の学生を集めたマンモス校だからうっかり勘違いしそうだが、そもそも能力者の絶対数は少ないし、人を傷つける威力になるまで成長するのは更に少ない。

まあそれでも親父みたいな感性が古いタイプにしたら、顎が外れそうなほど増えてるみたいだが。


あれ? そう考えると危ないものだから纏めて管理されてる? まあ多分そういう意図もあるんだろうなあ……でも学園長のあれが無いこれが無いって電波を拾っていると、やっぱり能力者の教育は歴史が無いせいで、人物金も無いから一極集中して運用するしかないと言う世知辛さもあるな。最後に体系的に教えてたのなんて、それこそ陰陽寮まで遡らないといけないんじゃね? 後は一族での中か極秘の組織だけだろ。


やっぱり内政だな。学園長、この男貴明必ずやり遂げて見せます!


目指せブラックタール帝国! スローガンは働け市民! 完璧!


「先生質問です。単純な正面切っての戦闘より、索敵や周囲の強化などに特化してる者は、対式符の集団戦では順位を上げるのに有利という認識でよろしいでしょうか?」


「素晴らしい質問だ東郷。比べるつもりは無いが、君の姉も凄まじい浄力を持っていながら、あまり正面火力に向いていない力であるため苦労していた。そしてその認識はまさに私の思っている通りだ。妖異との戦いではまず索敵から始まり、情報収集、自己と周囲の強化、そして最後に戦いなのだ。ただ敵を潰すだけの力のみを鍛えるのはナンセンスであるため、式符との戦いではそれらも含めて採点される」


アームレスリングで決着を付けるのはナンセンスだったか……いい案だと思ったんだがなあ。


しかし、索敵と情報収集もかあ。となると出来るだけ色んな種類の式符があった方がいいよな? 俺が一から式符を作れない事を考えると……やっぱり今まで通り一つの式符にいろいろ詰め込むのがいいな! それとそういう調査と索敵し甲斐がある能力も!

 

「では登録希望者は用紙を取りに来るように」


誰がそんなのバーバリアン企画に参加するって言うんだよ! まるっきり古代ローマの剣闘士じゃねえか! なんたって本場アメリカんとこは入場料まで取って客集めてるのは知ってんだぞ! 学校なのに! 金が無いんだろうなあ……。 

流石資本主義の総本山だ格が違う。 


そのうちアメフトの人気超えるんじゃね? いやそれだけはないか。あそこの国民がハンバーガーとドーナッツ手放すくらいあり得ん。そんな事になったら革命が起きるだろう。シビルウォー再び! ファニーウォーより冗談みたいだが、そうなった場合俺はマジで起こると見ている。


「やっぱりあなたは参加しないのね」


「そういうお姉さまだって」


てっきり、頂点はただ一人この私よと言っていつもの素晴らしい笑顔で参加すると思ってました! すいません許してください! でも周りの人達も、え、出ないの? って顔してます! っていうか他の皆さん全員席立ってますけど全員参加なんですか!? 後お前ら、俺が出ないのはちょっと違う意味でやっぱりなって思ってねえか!?


「わざわざ有象無象と関わるより、あなたと一緒にいたほうが楽しいもの」


今一瞬昇天しかけました。やっぱり邪神を倒すのは力じゃなくて愛なんやなって。でも僕が親父を倒すときは暴力だけです。


「あなたが参加しない理由も当ててあげましょうか? 私と一緒にいたいからよね?」


「勿論ですお姉さま!」


それ以外何があるって言うんですか! 

悪いな学園長! 主席の俺が参加したらぶっちぎり確定で、担任のあんたの鼻も高々だろうけど、俺はお姉さまと一緒にイチャイチャする方が大事なんだわ! 


かーっ皆さんに呪いというものがいかに対人間特化なのかお見せしたかったなあ! かーっいくらお姉さまが1位で俺が2位という、夫婦揃ってワンツーの危険が去ったとはいえ、そんなホッとした表情見せなくてもいいじゃないっすか!


「それではホームルームを終え、ん?」


なんだか教室の外が騒がしくなってきたな。今から最大の障害の偵察をしに来ても、残念ながら俺もお姉さまも不参加だ。まあ、その目の付け所は称賛してやろう。はっはっは!


「全く、もう唾を付けに来たのか。集団での式符の事で上級生たちがかなり盛り上がっていてな。今まで火力一辺倒の風潮の中で陽の目を見れなかった者や、火力を磨きすぎて他が疎かになった連中が、集団戦なのだから一芸に特化した者でも十分だと、下級生達を物色し始めているのだ。まあ、諸君達は1年生なのだから、本当に唾を付けに来た、青田買いの様な物だ。まあ上級生達との交流は君達にもメリットがある。軽い気持ちで見学しに行くくらいで丁度いいだろう」


かーっすいませんね皆さん! 美田が目の前にあるのにそれは参加しないんすわ!


汚染を広げやすい呪いは仲間との集団戦に全く向いていませんが……。

対人間特化は伊達じゃなくて、対集団でもさいつよなんですけど……。

あれ? ボッチを宿命付けられてる?


「それに、そうだな……基礎を理解している諸君なら、まずは見る事が勉強か。よし、今日の授業は全て取り止める。つい先日非鬼との戦闘を見学しに行ったばかりだが、今日上級生達は、戦闘会への準備として訓練に当てていい日となっている。そこで様々な式符を相手に上級生達がどう戦っているか見学しに行こう。ああ、先に行っておくが対人戦闘の訓練を行っている者は、自分の技を見せたくないから無暗に聞いたり覗いたりしない様に。対式符はいいのかと言うと、勿論晒したくない手はあるだろうが、相手は妖異として想定しているのだ。自分達の手は知られたくないと言うのは却下している。このような相手をする場合の戦い方は教えない、では困るのだ。何かしら知られたくない個人の能力や術がある場合はそもそも使わない事だな」


知られたくないこと一杯あります! 多分最後の形態は限りなく親父に近づくとか、対人間に特化しすぎてる親父に比べて、僕は自然のサイクルの中で生きてる人間という事もあって、自然とかも全然守備範囲な事とかですね! 僕が産業革命の時のイギリスに生まれてなくてよかったですね皆さん!


え、呪いを自然にばら撒いて汚染じゃなくて? 逆じゃないのかって? ははは!


さて、バーバリアン主催企画に参加しない僕達はデートでも……でへへ。


「じゃあ私達はデートでもしましょうか」


お姉さま!やっぱり僕たちは一心同体なんですね!


「今日の宿題は見学のレポートとする。適当な時間で先輩達ををあしらった後、訓練場に足を運ぶように。しつこかったら私が話す。それでは解散。お前達……訂正する。諸君、私がここに居る間先輩達と交流しなさい。お前達、無理強いするなら止めるからな」


ちっ。宿題って形で釘刺してきやがったな。


それにしても学園長が呆れて教室に留まるわけだ。上級生の皆さん目がぎらつきすぎじゃないっすかね? そりゃあチャンピオンの座に憧れるのは分かりますよ? でももう真のチャンピオンは決まってるんですよ。個人戦お姉さま、集団戦お姉さまと僕。ほらね?


そしてぞろぞろ入って来る先輩達。一番人気は……。


「桔梗さん、少し話をいいかな?」

「いやこちらの話を聞いて欲しい」

「少し時間を貰えないか?」


当然お姉さま! てめえら目の付け所はいいけどお呼びじゃねえんだよ!


「すいません先輩方、私結婚してまして今は四葉小夜子ですの。それと参加する気はございませんの」


お姉さまあああああああああああああああああああ!


「すまんが通してくれ」


ああ何だてめえ?


「生徒会長だ……」


あ、こいつ露出狂じゃん!

どうしたんだ? オリンピックのバスケでソ連に負けてブチ切れした結果、プロ選手参加OKになった途端全チートを集めて、世界中を殺しにかかった時のアメリカみたいになってるぞ? まあ殺しというより虐殺だったけど。

流石軍事大国だ格が違う。


「我々は集団戦において非鬼の討伐を目標にしている。君には是非チームに参加して欲しいんだ」


この野郎やっぱりな!


だがその提案はもう遅い!


「ごめんなさいな。あの子を倒すのは簡単だったからちょっと期待外れだったの」


「なに!?」


嫌な、事件でしたね……。

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