第三十四話「コンビニにて(7)」

 それは、〝隠れ無双ハイド〟で小さくなったスミが、強盗の人差し指を両手で掴んで、一気に引き金周囲の枠の外へ引き剥がしつつ、元の姿に戻り、その体重(三十キロ)を掛ける事によって、圧し折ったのだった。

「スミ君!」

 と、スミを見た芽衣が明るい声を上げる。

「クソガキがあああああああ!」

 と、強盗が叫ぶが、スミの姿は消えていた。

 強盗は、

「どこ行きやがった!?」

 と言いながら、落ちた拳銃を左手で拾おうとするが――

「なっ!?」

 ――何故か、横向きになった拳銃が床を這うようにして動き、遠ざかって行く。

 それは、手の平サイズになったスミが真下から持ち上げて動かしていたのだが、強盗から見ると、拳銃そのものが意思を持って動いているように見える。

「待ちやがれ!」

 と叫びつつ、強盗は拳銃スミを追い掛けて行った。

 必死に走るスミだが、小さくなった身体では、それほど速くは走れず、強盗が距離を詰めて行く。

 あともう少しで追い付きそうになった強盗が、スミに続いて店の奥の冷蔵庫――ドリンクコーナー――と他の棚によるT字路を右に曲がった瞬間――

「がぁっ!?」

 ――突如空中に出現したシャープペンから伸ばされた芯が、強盗の右目を突き、強盗は痛みに短い悲鳴を上げて、体勢を崩してドリンクコーナーのガラス扉にぶつかった。

 それは、スミが事前に仕組んでいたものだった。

 コンビニにあったセロハンテープを、丁度強盗の目の高さになるように、ドリンクコーナー前の棚の最上部に置いてあるワインボトルとドリンクコーナーのガラス扉との間に長く伸ばして貼り、そこに芯を伸ばしたシャープペンを何本も横向き――地面に水平――に貼りつけていたのだ。

「くそがッ!」

 と、叫んだ強盗が見ると、弁当コーナーへと拳銃を隠したスミが、元の大きさに戻って強盗の近くにいた。

「殺す!」

 と、叫び、強盗がスミに近付こうとする。

 ――が。

「!?」

 ――予め輪っかの形にして床に幾つも貼られていたセロハンテープによって足を取られて、再びよろめいて、強盗は縦長の冷凍庫――アイスコーナー――のガラス扉にぶつかる。

 その隙に、スミは強盗の脇を抜けて、背後の方へと向かった。

 強盗が、

「このクソガキが!」

 と、後ろを振り向くと、書籍コーナーを背にしたスミが、二~三メートル先にいた。

 強盗は、ズボンの右後ろのポケットから別の拳銃を取り出すと、左手に持ち、

「ふざけ過ぎだ、クソガキ」

 と言うと、

「死ね」

 と、冷酷に告げて、引き金を引いた。

 ――だが。

「なっ!?」

 ――発砲の直前にスミの姿は消えており、銃弾は書籍コーナーの棚にある雑誌に命中し、二冊貫通して、三冊目で止まった。

 驚愕に目を剥く強盗の前に、スミが再び姿を現した。

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