第4話 古代遺跡の冒険

「ぺぇっ、口の中に砂はいっちゃった」


「それより見ろよこの壁、どんな材質で出来てるのかわかんないけど発光している。地下なのに全然暗くない」

 

 失われた古代文明の技術を使ったであろう外壁や床、天井は発光しているが眩しくはなく場所も相まって幻想的だ。どんな材質なのかと思い壁を叩いてみると金属音に似た甲高い音がする。金属ではないように見えるが金属ににたものなのか、発光する壁に描かれている文様は関係あるのかなど謎は尽きない。


「わぁ、きれい」


 アリシアも古代遺跡の幻想的な風景に見惚れていた。


「本当に古代遺跡があったわね」


「ああ、さっそく調査していこうか。まずは中をくまなく探索だな」


 俺がそういうとアリシアがこちらを見て何故か笑った。

 何か変なことでも言っただろうか。


「あははっ……ごめん、ごめん。レイトっていつも覇気のない顔してたのに古代遺跡を発見したとたんに生き生きした顔してたからつい」


 確かに顔死んでたかもしれないな。疲れてたのもあるだろう。でも、俺一人で見つけてもここまでの高揚感はなかっただろう。アリシアが思い出させてくれたおかげだとは恥ずかしくて直接は言えないが。


「考古学者が未発見の古代遺跡を見つけたらテンション上がるだろうよ、それは」


「それもそうね。それじゃ行きましょうか」


 俺とアリシアは古代遺跡をくまなく探索する。見たこともないものや財宝もあり、持てる分だけ持ちかえるようにする。残ったものはまたここに取りに来ればいい。

 そして探索中に目算で三メートルはある巨大な動く機械のようなものがこちらを見ていた。


「なっ、なにあれ?」


「分からない……けどなんかやばそうなのは分かる」


 人の形に似た機械、人というよりは絵本とかにでてくる人型の怪物のような見た目といった方が正しいかもしれない。その機会はこちらを見て恐らく目の部分になるであろう場所が赤く光っていた。


「シンニュウシャ、ハッケン。シンニュウシャハ、ハイジョスル」


「何か機械が喋ってるんだけど。というか今、排除するって聞こえたんだけど……」


「俺もそう聞こえた……逃げた方がよさそうだな」


 機械が喋ったことや、古代文明に作られた機械がまだ動いているとか驚きの連続だが今は逃げた方がいい。古代文明の超技術で作られたものは現代の人の理解が及ばないことは当たり前だ。

 逃げようとした俺たちの後ろからその巨体からはあり得ない程の速度で襲い掛かってくる。


「レイトっ!」


 ーーー《重力転換》ーーー


 アリシアに捕まれ、天井へと落下するという重力を無視した動きで間一髪のところで避ける。

 古代文明の機械はまだまだこちらを諦めてはいないみたいだ。古代遺跡の天井までは届かないのは分かったのか背中から翼のような形をした突起物が飛び出してきたかと思えば宙を飛んだ。


「はあぁっ!?」


「あいつ、なんでもありだな。オーパーツの類であるだろうけどあれ、実は古代兵器って言われても不思議じゃないくらいに殺意高くないか?」


「少し黙ってて、喋ってたら舌かむわよ!」


 そういうとアリシアは天井を走ったり壁を走ったりと空間を三百六十度使った縦横無尽に逃げ回る。それでも古代兵器(さっき名称)との距離は離れるどころか近づいてくる。

 だが、さすがに修羅場を潜り抜けたきた冒険者だけあって古代兵器の攻撃を躱し続ける。

 

「しつこいなっ、いい加減に離れろ!」


 アリシアの速度より早い移動速度の古代兵器は脅威だ。小回りや緩急を巧みに使っているから避けられているがアリシアにも限界はある。

 どうしたものかと思っていると古代兵器は口を大きく開く。途端に背中に悪寒が走る。


「アリシア、右の通路に飛び込めっ!」


 俺の言葉に横へ緊急回避したアリシア。先程までいた通路が光ったと思ったら爆風が押し寄せてきた。


「よくわかんないけど、今のをくらったら死ぬってことはわかったわ」


「そうだな……アリシア、少し待ってくれ。これであの古代兵器をぶっ飛ばしてみる」


 そう言って俺は背中に担いでいた大きな鞄の中から歪な形をした大きな銃のようなものを取り出した。昔、発見したオーパーツだ。名をプラズマ砲というらしい。

 俺はプラズマ砲を両手に持ち古代兵器がこちらの通路にくるのを待つ。銃口には青白い稲妻が集まり、ブウゥゥゥゥンという重低音が鳴り響く。

 古代兵器がこちらの通路に入ってくるのを見計らって溜まったエネルギーを放出する。


「くらえ、古代兵器。お前と同じ時代の武器だ」


 放ったエネルギーは古代兵器にあたり、けたましい轟音をたてて吹き飛んだ。

 俺の恩恵により古代文明に武器や道具といったものの扱いは俺が一番上手いと言っても過言じゃない。なぜなら俺はその時代に実際使っていた過去を見ることが可能だから。かといって射撃の技量があがるわけではないが。


「あはは、なによそれ。そんなものあるなら早く使いなさいよ。あいつ思いっきり吹っ飛んだわよ」


「溜めに少し時間かかるから俺の技量だとあんなに早く動き回る物体に当たんなかったよ。この通路のおかげだな」


「なるほどね、まあ取り合えず退散しましょう。この遺跡にいてまた別のが来たらやばいでしょ」


「そうだな、急ごう」


 俺たちは急ぎ入ってきた流砂の入り口へと向かう。


「シンニュウシャ、ハイジョスル」


 古代兵器は先程の攻撃が効いていないのか無傷のままこちらに向かって来る。


「おいおい、嘘だろ。さすがにそれはねえだろ」


「とにかく逃げるしかないわね」


 アリシアに捕まり流砂の中を逆方向にの突き進み脱出する。


「あいつ、古代遺跡から出たら追ってこないとかそんな条件ないかな?」


「分からんけど……、そんな条件はないみたいだぞ」


 話の途中で流砂の中から古代兵器が飛び出してきた。


「あいつどこまで追って来るんだろうな」

 

 古代兵器と地獄の鬼ごっこはまだまだ続きそうだ。


「あそこまで行けば何とかなるかも……しっかり捕まってて」


 何かいい考えでも思いついたのか、アリシアは重力の向きを前方に変えて加速する。

 向かった先には見覚えのある巨大な穴がいくつもあった。


「お前、それ、タイラントワームの巣じゃねーか!しかも大量の!?」


「こいつらを古代兵器にぶつけるのよ。化け物の相手は化け物にやってもらいましょ」


「その前に生きてここを通れるのかが心配だよ!」


「任せなさい。これでも数々の修羅場を潜り抜けて来た冒険者よ」


 アリシアの速度は落ちることなく加速し続けている。加速し続ける速度のままタイラントワームの巣を突っ切る。時には回避し、敢えて通るタイミングをずらす緩急に加えて、急激な方向転換。アリシアは見事にタイラントワームの巣を突っ切る。


「タイラントワーム、サイコウランクノマモノ。ジャマヲスルナラハイジョスル」


 古代兵器はタイラントワームの群れに引っかかり身動き取れなくなっている。


「お前もやっぱり化け物側の奴なんじゃ……」


「いいから今の内に砂漠を抜けるわよ」


 俺たちの脱出劇は見事に成功した。


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