【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する【改稿版】

やきいもほくほく

1章 嚆矢

01.叫び


「異世界から来て泣いていたサラには、カーティスとわたくしだけが頼りだったのに……裏切られて残念ね」


「………ぁ」


「サラは馬鹿な所為で死ぬの!ライナス王国の為に利用されて……ね」


「ーーーいやあぁぁあぁ!」



サラは今、魔法陣に飲み込まれそうになっている。

最後の力を振り絞って、上に上がろうと必死にもがいていた。


ただ、死にたくなかった。


彼女が言っている事が全て本当で、今まで積み上げてきた友情も愛情も全て嘘で。

本当は大結界の生贄にされる為に初めから皆に騙されていて、ただ利用する為だけに優しくしていた。


甘く愛を囁いて婚約したカーティスも、友人を装い平然と裏切ったアンジェリカも、サラの努力が全て無駄になる事を知っていた。

ただ純粋に国に尽くそうとする姿を見て嘲笑っていたのだとしたのなら……。


(なんて……なんて惨めなのッ!)



「あぁ……ほら、貴女が死ぬ様子をあの窓から見てるわ」



アンジェリカが指さす方向に視線を送った。。

今から命を落とす瞬間を今か今かと嬉しそうに見ているライナス王国の要人達。

抗おうと足掻く姿を馬鹿にした様に笑う顔、歪む唇。


まるでサラは見せ物だった。


カーティスと一瞬だけ目が合うと申し訳なさそうに笑った後、ゆるりとサラに向かって手を振った。

これが……現実だなんて思いたくなかった。



「ーーーー嫌ァァッ!!」


「うるさいわ……」


「嫌だ!いや……ッ!」


「わたくしが貴女を虐めているのがバレちゃうから静かにしてくれないかしら?」


「………ぐっ!」



アンジェリカが必死で伸ばしているサラの手を足で踏みつける。

尖ったヒールで左右に踏み込まれ、痛みに悲鳴を上げた。


唯一の抵抗する術すら奪われて、その勢いでズブズブと体が魔法陣に勢いよく沈んでいく。

胸元、首と……徐々に体は飲み込まれていく。



「だれか、誰かぁあぁ……!助けてぇ」


「ありがとう……最後にライナス王国とわたくし達の役に立ってくれて」


「…………ッ!」


アンジェリカを思いきり睨み付ける。

もう、口元すら沈んで何も言えなかった。



「惨めね………サラ」


「……」


「アハハハ、本当に馬鹿ね」



全てを信じていた。

皆で明るい未来に進めると、幸せになれると思っていたのに……。


言葉に出来ないほどの激情が流れ込んでくる。

無意識にポタポタと涙が溢れた。

自分が馬鹿な所為で死ぬのだとしたのなら、こんなにも、こんなにもーーー。


(………悔しい!全てが憎いッ……馬鹿な自分が許せないっ‼︎)


サラと同じように、異世界から召喚された以前の聖女達も、ライナス王国の人達の甘い言葉に騙されて、聖女として持ち上げられて、意味のわからない修行をさせられたのだろう。


こうして魔法陣に飲み込まれて、裏切りに涙を流したのだろうか。

必死に抵抗して血を滲ませながら、悲鳴を上げていたのだろうか。

ライナス王国の聖女に助けを求めても踏み躙られて見せ物になって死んでいく。


そして悔しさも苦しさも飲み込んで、誰にも看取られないまま消えていったのだろうか。


国に騙さられ、王族に踊らされて……命を散らしたのだ。

そしてまた国の大結界が壊れそうになれば何も知らない少女が召喚される。



何、それ




意味が分からない




許さない




許せない




(絶対に、許さない……ッ!)





「さよなら、サラ」





そして体が全て魔法陣に沈んだ。

少女達の無念と苦しみと憎しみを背負って……。

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