第70話 みんなでいっしょに

 もしそうだとしたら、ヒロユキもいっしょに連れて行くしかない。だが、みんなに危害を加えたりしないだろうか?


 じっとヒロユキを見る。剣は取り上げたし、両手は縛られた状態で、よだれを垂らしてじっとおれだけを見つめている。


 ……やっぱりおれか? おれが好きなのか? ミミーといい、ヒロユキといい、おれのモテ期は謎だらけだ。だが、こいつをこのまま野放しにしておいたら、この近辺の中年親父が命を狙われることになるだろう。


 それだけはなんとか避けたい。


「なぁ、みんな? ヒロユキもいっしょに連れて行ってもいいか? もちろん、手は縛ったままだし、こいつの世話はおれがする。なんとか、安らかに眠らせてやりたいんだ」


 魔族に墓をあさられ、ゾンビにされちまった不遇のヒロユキを、元の土の下に戻してやりたい。


 おれのそんな身勝手な願いに、みんなはやさしく同調してくれた。


「そのゾンビは、きみのことしか見えていないみたいだし、ミミーに危険が及ばないかぎりは、いてもいいと思う」


 カレン、お前やっぱりすっごくいいやつだよな。


「あたしのことは、ジョージが守ってくれるからかまわないわ」


 こんな時でもおのろけを忘れないマリン、さすがだぜっ。


「それに、ゾンビと旅をするっていうのも、斬新だよね」


 ジョージよ。お前のその能天気ぶりも悪かないぜ。


 ミミーは? おれは馬上のミミーを見上げる。ミミーは、おれの顔を見て、それからヒロユキを見て、またおれを見た。


「ミミーが嫌なら、連れて行かないけど?」

「あたし、あたしは、本当は嫌なの」


 ためらいながらも吐き出した言葉に、そうだろうなと納得しかけた。


「でも、このままじゃダメだってこともわかってる。だからね、条件があるの」

「条件? どんな?」


 ミミーは一度空気を飲み込んでから言葉を選んだ。


「マローンがヒロユキの恋人にならないこと。それなら、あたしはがまんできる」

「あのなぁ、ミミー。おれは、ヒロユキのことを前世も含めて憎いと思ったことはあるが、好きだと感じたことは一ミリだってないんだぞ? そりゃ、今回だけは、気の毒だし、ほかの中年に迷惑がかかるから連れて行こうと提案したわけだが、そこのところは変わらないから、心配なんてしなくていい」

「本当!?」


 ぱぁあっと、花が咲くように笑顔になるミミー。その姿はとてもまぶしくて。かわいいな。心から、そう思った。


「ああ、なにも心配いらない。古代竜になにもかも話して、いろいろ相談に乗ってもらおう」

「それじゃまた、出発進行だねっ!!」


 子供のようにミミーが馬上ではしゃいだので、馬がいなないたものの、すぐにカレンがいさめてくれた。


 こうして、ゾンビのヒロユキも引き連れて宿屋へと急いだ。


 つづく




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