第14話 3度目の進化

 ——戦闘が始まってからどれだけの時間が経っただろうか。


 ジャイアント・ビートルの攻撃を躱しながらチラリと空へ目を向け、太陽が戦闘開始時から大きく移動しているのを確認する。


 あまりの長時間の戦闘にも、MPは全て吐き出してマナリスで戦い続けている。

 HPもじわりじわりと減っている。


 戦況的にはこちらが有利とは言えるだろう。

 Dランクのウィンド・ウルフ達が無双し続けているので、虫達はどんどん数を減らし続けている。

 しかし、数があまりにも多すぎてウィンド・ウルフ達のMPは尽きてしまっているようでもうスキルを使わずに戦っている。

 その結果、FランクとEランク勢のフォローが間に合わなくなってしまっている。


 狼達は連携を取り何とか数に対抗しているが、疲労が蓄積しているようで、どんどん被弾がが増えている。

 まだ死者こそ出てはいないが、それも時間の問題だろう。


「キシャァ!」


 チッ! 

 考え事をしてるってのに! 


 懲りずに突進してきたジャイアント・ビートルをマナリスで受け止める。

 そして、突進の力が無くなるのを待ってからジャイアント・ビートルを弾き飛ばす。

 ジャイアント・ビートルの特性スキルの『飛行』のレベルが低いからか、簡単に弾き飛ばせる。

 飛行高度も俺の目線程度までしかないようだし。

 まぁ木から滑空しながら飛びかかってくることもあるから上も警戒しなきゃならん訳だが……ゴキブリかよ。


 俺は、体勢を崩しているジャイアント・ビートルへマナリスを振り下ろそうとしたが、『気配感知』の反応に後ろへ飛び去る。

 次の瞬間、先程まで俺がいた場所を別の個体が突進して通過する。

 直後、足元にいたラーヴァに足を取られ転倒してしまう。

 そんな俺にチャンスとばかりに無数のラーヴァが群がってくる。

 噛み付かれまくるが、ラーヴァの攻撃ではダメージは受けない。

 しかし、身動きが取れない。


 ちっ、くしょうが! 


 内心で悪態を着きながら全力で身体を動かし、ラーヴァ達を振り落とす。

 投げ出されたラーヴァの何匹かが緑色の体液を吹き出して息絶える。


[LVMAXのため経験値を得ることが出来ません]


 この程度で殺せるくらい差が出来たか。

 レベルはこの長時間の戦闘でとっくに最大レベルまで上がっていた。


 俺が起き上がると、その直後、ジャイアント・ビートルが突進してきた。

 この隙を着いてこないわけないだろうと予想していた俺はマナリスで受け止める。

 だが、突如背後からの衝撃にマナリスがズレ、ジャイアント・ビートルの角が俺の胸に直撃した。


 クソッ、後ろからもジャイアント・ビートルが……ッ。

 『気配感知』に意識を向ける余裕がなかった。

 HPを回復させる手段がないからじわりじわりと死が近づいている感じがして寒気がする。


 突進してきた2体のジャイアント・ビートルへマナリスを振り、仕留める。


[LVMAXのため経験値を得ることが出来ません]


 このままだとDランクのウィンド・ウルフ以外の俺を含めたFランクEランク勢が全滅しかねない。

 俺も死んでしまうだろう。

 一応手がないことも無い。進化だ。

 俺が進化してDランクになれば戦況は一気に楽になるだろう。

 進化によってステータスだけでなく、便利なスキルも獲得出来るかもしれない。


 問題は、まずステータスが一時的に半減してしまうということだ。

 だが、これはそれほど問題ではない。


******************

名前:マキシス

種族名:マシンガンナー

状態:通常

性別:不明

LV:18/18

HP:16/124

MP:0/171

攻撃:43+56

防御:62

魔攻:83

魔防:62

敏捷:28

ランク:E

******************


 今のステータスを見る限り、半減しても20〜30程度に収まるだろう。

 それならばラーヴァは楽勝だし、ジャイアント・ビートルにも対抗出来る。

 今までの経験的にラーヴァを何体か狩れば、十分なステータスになるはずだ。


 次の問題はどんな進化先があるか分からないことだ。

 ピーキーな性能の進化先なら進化しない方がまじかよなんてことがあってしまうかもしれない。

 それに、マシンガンナーからの進化だから銃関係の進化先になるだろう。

 そうなると弾丸の数が少ない今だとかなり心配だ。

 まぁそれは見てみてだな。


 その2つの問題が俺に進化を躊躇わせた。

 しかも進化するためには俺が一時的に戦線を離脱しなければならない。

 進化先を確認して、進化先を決定し、進化が完了するまでの間に狼達が死んでしまうかもしれない。

 しかし、Dランクが増えれば戦いがグッと楽になる。

 だが——


「キャウンッ!」


 踏ん切りがつかない俺の耳に狼の悲鳴が届く。

 そちらを見ればベビーウルフがジャイアント・ビートルに吹き飛ばされて宙に浮いていた。

 すぐさまウィンド・キッズウルフが受け止めたことで地面に叩きつけられることはなかったがダメージが大きく戦闘に復帰するのは難しそうだ。

 追撃をする虫達に他の狼達がフォローに入る様を見て俺は腹を決めた。


 このままではやはり死者が出るのは確実だ。

 ならば賭けだとしても進化するしかない……っ。


 俺は自分に向かってくる虫達を蹴散らしながら、戦場から距離を置く。

 周囲から虫達が居なくなってから進化を始める。


[進化先を表示しますか?]


 ばっちこい。


*******************

【ガトリングガンナー:D……機械系】

【マシンドラゴン:D……機械系】

【マシンビートル:D……機械系】

【マシンウルフ:D……機械系】

【マシンタートル:D……機械系】

*******************


 は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る