第4話 人間

 とりゃー! 


 俺は右腕を引き、前に突き出す。


 ガシャンッ! 


 どうだ? 


 俺の攻撃を食らった相手——ガラクタは何の抵抗もなく倒れる、が。直ぐに何事もなかったように立ち上がった。うん、だろうね。


 そもそも、攻撃力1が防御力1にダメージを与えられるとは思っていなかった。確かめてみただけだ。


 俺には目もくれず歩いていくガラクタを見送りながら俺はどうするかを考えていた。


 ゲーム的に考えれば敵を倒して経験値を手に入れてレベルを上げるんだろうが俺だと同族のガラクタぐらいしか安全に戦えない。


 しかし、全力で殴っても無傷だとどうしようもない。俺にはメタルイーターのように攻撃スキルは持っていないのだ。


 せめて、武器さえあれば何とかなる気はするが、残念ながらここらには機械の残骸しか無い。


 もう、そこら辺の機械の残骸を持って殴りかかるかと考えていると、話し声のようなモノが聞こえてきた。


「ለምን በጭራሽ ይህንን ማድረግ አለብኝ?」

「ሙሉ በሙሉ ፡፡ ምንም ጉዳት የማያደርስ እና የልምድ እሴት የማይሆን ጭራቅ ፡፡」

「ታውቃለህ. የጀግኖች ጥያቄ ነው ፡፡ የማሽኑን ቤተሰብ ጭራቆች ያጥፉ ፡፡」


 俺は直ぐ様、物陰に身を潜めた。何故かって? あっち人間|(たぶん)こっち魔物。下手すりゃ攻撃される。もちろん話をしたい気持ちもあるが自分の身が最優先だ。


 どうやら、3人いるようだ男2人に女1人かな? ていうか日本語じゃないな。たぶん英語でもないと思う。何語だ? 


 と、考えながら、物陰に身を潜めて話を聞いていた俺は話し声に混じって、ガシャンガシャンと物音がすることに気がついた。


 気になった俺は物陰から気づかれないように声がする方を見た。


 そこには俺の予想通り、鎧をつけ、剣を持った青年と、ローブを纏い、メガネをかけた青年と、杖を持った少女が歩いていた。


 そして、彼等は世間話をしながら、剣や杖で攻撃とも言えないような適当な振りで俺の同族を破壊しまくっていた。


 ほ、ほらな? か、隠れて正解だっただろ? 

 っていうか何であの人達ガラクタを倒しまくってんの? 

 ガラクタの説明には狙われそうな説明は何もなかったけどなあ。

 っていうかガラクタ弱いな。どう考えても後衛職の奴が適当に杖振っただけで壊れてるぞ。


 俺はいったん顔を隠して、どうするか考える。

 す、ステータス見てみるか? 

 でも見つかると怖いな。

 いや、見つかっても周りにいっぱい居るわけだし問題ないか? 

 いや、もしあの中の誰かが『鑑定』スキルを持っていたら危ないな。


 俺が悩んでいると話し声は離れていった。

 ま、いっか。

 人間がどれくらい強いか知りたかった気持ちもあるが自分の身が最優先だ。


 ふと、何となくさっき人間達が歩いていた場所を見ると、何かが落ちているのに気がついた。


 もう既に、人間達が遠くへ行ったことを確認してから落ちているものを確かめに物陰から出た。


 それは、鍔の真ん中に青い石がはめ込まれた、全長30cm程の短剣だった。

 何だこれ? あの人達が落としたのか? 


魔剣 マナリス*************

【攻撃力補正:52】【武器ランク:D】

とある小国の王が戦争状態の隣国が成長する武器『魔剣 クレシタ』を作ったという話を聞いて作らせた剣。鍔にはめ込まれた魔石に込めたMP分攻撃力補正が上がる。何人でも込めることが出来るが、1日で込めたMPが消える上、元々の攻撃力補正が低い為小国の切り札となり得ず、その国は滅亡した。

*******************


 ……。


 俺は短剣を拾うとそそくさとその場を離れた。

 いいか? 俺は落ちていた物を拾っただけだ。

 持ち主なんて知らないし、そもそも俺は魔物だ。

 貰って何が悪い! 


[称号『盗っ人』を獲得しました]


 うお! ビックリした。

 いきなり頭の中に声が聞こえてきた。

 感情のこもっていない無機質な声で、男か女かも分からない声だった。

 っていうか誰が盗っ人だ! 


 まあいい。とりあえずこれでガラクタを倒してみよう。

 俺はマジックハンドのような手で苦労しながら短剣を抜くと、近くのガラクタへ振り下ろした。

 短剣はガラクタの首に刺さり、ガラクタは崩れた。


[経験値を獲得しました。称号『魔なる神の加護』の効果で経験値が増加します。2の経験値を獲得しました]

[経験値が一定数値に達しました。LVが1から2に上がりました]

[LVがMAXになりました。進化条件を満たしました]


 再び声が聞こえてきた。

 お、やった。

 ていうか経験値1しか貰えないのか。ガラクタは。


 進化先はどうやって見るんだろう? 


[進化先を表示しますか?]


 お、親切。

 もちろん、はいだ。


*******************

【マシンドール:F……機械系】

【ポンコツ兵:F……機械系】

*******************


 2つだけか。ていうかあまり下を選びたくないな。名前的に。


 ま、それぞれの説明を見てからにするか。


*******************

マシンドール:F……機械系

機械で出来た人形。魔道機械を発明した聖女が戯れに作った物で戦闘能力は皆無。同ランク帯では頑丈ではあるがその他は並み以下。演算能力を持ってはいるが、それ程高くは無い。

ステータス

HP:F MP:F 攻撃:F 防御:F+ 魔攻:F− 魔防:F 敏捷F

*******************


 頑丈なのはいいことだ。

 その他がそこまでなのが気になるが。


*******************

ポンコツ兵:F……機械系

古代に兵として使われていた兵器の初期型の試作品。耐久性と攻撃力は高いが魔法耐性も魔法適正も低く、鈍足。思考能力は無く、命令を聞くのみ。魔道機械を発明した聖女はあまりの出来の悪さ故にその名を付けたと言われている。

ステータス

HP:F+ MP:F− 攻撃:F+ 防御:F+ 魔攻:F− 魔防F− 敏捷F−

*******************


 極端なステータスだな。

 HPと攻撃力が高いな。

 でも、やっぱり上かな。

 魔法関係は別にいいが、足が遅いのは逃げるのが遅れるからダメだな。

 そこまで変わるか分からんがメタルイーターのステータス見る限り、やめておきたい。

 それに、攻撃力はマナリスでカバーできる筈だ。

 マナリスの為のMPもマシンドールの方が多いし。

 後、最後の一文がちょっと……。


 というわけでマシンドールへ進化。


[【ガラクタ】が【マシンドール】に進化します]


 次の瞬間、熱のない身体に熱が走る。自分が膨らむような感覚がある。

 そして、自分が発光しているのも分かった。……ポ○モンかな? 


 しばらくすると熱が収まり、光も消えた。


 自分の身体を見下ろす。

 くすんだ黄色だった身体は白い身体に変わり、棒のような手足は太くなり、手には指が出来た。

 身長も、100cmくらいだったのが130cmくらいになっていた。


[特性スキル『演算:LV1』を獲得しました]


 お、スキルとしてあるのか。


[攻撃スキル『ロケットパンチ:LV1』を獲得しました]


 お、攻撃スキルか。これは嬉しいな。


[特性スキル『鉄の体』のLVが1から2に上がりました]


 お、スキルLVが上がることがあるのか。


[称号『最弱』を失いました]


 よし、無くなって良かった。残ってたらどうしようかと。


 ……。


 終わりかな? んじゃステータスを見てみますか。


*******************

名前:

種族名:マシンドール

状態:通常

性別:不明

LV:1/8

HP:5/5

MP:5/5

攻撃:2+52

防御:3

魔攻:1

魔防:2

敏捷:2

ランク:F


装備

『魔剣 マナリス:D』


特性スキル:

『鉄の体:LV2』『演算:LV1』


耐性スキル:

『毒無効:LVー』『麻痺無効:LVー』『睡眠無効:LVー』『病魔無効:LVー』『飢餓無効:LVー』『口渇無効:LVー』『失血無効:LVー』『窒息無効:LVー』『痛覚無効:LVー』


攻撃スキル:

『ロケットパンチ:LV1』


通常スキル:

『神鑑定:LVー』


称号

『魔なる神の加護』『盗っ人』


*******************


 お、おう。あまり、変わっとらんな。

 しかし、防御力高くて3なのか。

 レベル上げればもっと差がつくかな? 


 でも、HPとMPが進化して回復してるな。

 元々1だったのに。

 まあ、最大数値だったからという理由かもしれないし、進化して回復は期待しない方がいいかな。

 戦闘中に進化とか出来ないだろうし。


 ま、これから頑張りますか。

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