第68話 マイページの発見
イードと遊んだ日の夜、ライトはベッドの中で改めて転職神殿での出来事を改めて振り返っていた。
あの直後はアル母子の来訪やら、翌日は新設転移門の試運転やら多忙を極めていて考察する余裕など全くなかったのだ。
『あれから職業について考える暇もなかったけど、あの日のことを忘れないうちに考察しとかなきゃな……』
『まず、旧教神殿跡地には名も無き巫女がいて、転職のことについて尋ねてきて……俺は予定通り【斥候】を選んだ』
『おそらくは、俺の今の職業は【斥候】になっている、はず、なんだが……』
『さて、じゃあそれを一体どうやって確認するか、なんだよなぁ』
そう、この世界においてライトはまだ自分のレベルやステータスの詳細などを知る術がなかった。
ゲームの中でなら、マイページという項目をチェックするだけのことだったのだが。今はそのマイページのチェック方法からして不明なのだ。
『「ステータスオープン」とか「オープンウィンドウ」とか「レベルチェック」とか、お約束的なそれらしい言葉唱えても全ッ然何も起こらんし』
『ちくしょう、あーもうこれ一体どうやったらマイページ見ることができるようになるんだよ……』
その時、突然ライトの目の前にホログラム画面が現れた。
転移門の操作画面とそっくりの、青い半透明の画面である。
「うおッ、何だこれ!?」
「……ッ……!!これ、マイページじゃねぇか……!!」
それまで無言で脳内会話に留めていたライトだが、突然のことに吃驚し過ぎて思わず飛び起きて叫んでしまった。
幸いにも、レオニスがまだ寝室に来ていなくて良かったが。
思わず己の口を両手で塞ぎながら、周囲をキョロキョロ見回してしまうライト。
自分以外の気配がないことを改めて確認した後、突然目の前に現れたマイページ画面をまじまじと観察する。
『これは……間違いなく今の俺のステータス、だ……』
『何でまた突然出てきたんだ……もしかして「マイページ」という単語に反応したのか?発現のタイミング的に、そうとしか思えんが……』
『はて、俺この世界に来てから今まで一度も「マイページ」という単語を考えたり、発したことは……なかったか?』
『いや……ただの一度もなかったはずはないが……もしかして、数日前まで職業システム的に無職のルーキーだったから発現しなかったのか?』
試しに、再び寝転んでみたり起きたり、ベッドから出て立ってみたりしたが、どんな姿勢でもライトの目の前に表示されるようだ。
とりあえず再び布団の中に入り、仰向けになりながら画面の項目を見ていくと、各種基本データが並んでいる。
ゲーム内でよく見たマイページ、それと全く同じ画面が懐かしい。
==========
【名前】ライト
【レベル】3
【職業】斥候
【職業習熟度】0%
【称号】−
【状態】通常
【HP】26(+0)
【MP】13+5445(+0)
【SP】20(+0)
【BP】−
【所持金】0G
【CP】0CP
==========
『レベル3か、てっきり1のままかと思っていたが』
『職業はちゃんと【斥候】になっている』
『あのディーノ村の神殿跡地、やはりあれが転職神殿でビンゴだったんだな』
『ゲーム内通貨0Gに課金通貨CPが0なのは、今のところ個人資産を全く持ってないからまぁ当然として……』
『称号とBPは−(マイナス)表記か……称号は未装備だから当たり前としても、BPは仕方ないかも』
『つーか、MP後半にアホほど高い数値の付与があるが、何でだ?……もしかして前にレオ兄の言っていた、魔の森カタポレンに常時住むことによる魔力耐性の影響、か?』
念願の職業【斥候】に就けていたことに、安堵と喜びを感じるライト。
レベルも1ではなく3だったのが意外だったが、日々の鍛錬のおかげで少しづつ経験値が入っていたのかもしれない。
現に、HPもレベル3にしては32とかなり高めの数値だし。
SPは【スキルポイント】で、スキル使用時に消費するポイントのことを指す。
ゲーム登録時は20からのスタートで、その拡張には特殊アイテムが必要になる。
ポイントの回復は、時間経過による自然回復もしくは特殊なSP回復アイテムを使用する。
SPが足りなくなると、当然スキルを発動することはできない。
威力の高い大技ほどポイント消費量が多いのは、ゲーム世界のお約束だ。
そしてBPは【バトルポイント】、コロシアムで行われる対人試合で勝利した時に得られるポイントだ。
バトルポイントそのものはステータス等に影響することは一切なく、一定の数値を超えればバトル専用の称号がもらえるだけの、完全なる自己満足系お飾り名誉しか得られない。
これがマイナス表記なのは、ある意味当然といえば当然かもしれない。
そもそもこの世界に、BPが発生するような対人試合専用コロシアムが実在しているとは到底思えないからだ。
他に気がかりなのは、所持金関連である。
ゲーム内通貨のGは、アクシーディア公国での標準通貨として流通しているのは確認済みだ。
だが、課金通貨であるCPがマイナス表記ではなく0(ゼロ)CPと表示されている。
これは、おそらく実在していないであろうBPと違い、どこかでCPを得られる可能性がある、ということを示唆しているのだろうか?
まぁ、仮にCPを得たとして、その使い道があるのかどうかも全く不明だが。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一通り項目を見ていき、さて、ステータス詳細はどこだ?と画面を見渡すと、画面の上下左右の端に三角のマークがそれぞれついている。
その三角のうち、まずは横方向の◀▶に触れてみる。すると、画面が左右に動いて入れ替わる。
スマホ画面のフリック切り替えのような感じだ。
右側の▶を押すと、現在の装備品類データが出てきた。
今現在のライトの装備は普通の服なので『布の服(上)』と『布の服(下)』のみだ。
この装備品類ページを活用するのは、かなり後のことになるので飛ばしていく。
次にもう一度▶を押すと、今度はステータスの詳細情報が出てきた。
ステータスは【力】【体力】【速度】【知力】【精神力】【運】の6項目あり、それぞれに上がる能力値が決められている。その詳細は以下の通りである。
==========
力=物理攻撃力
体力=物理防御力/HP
速度=敏捷/命中/回避
知力=魔法攻撃力
精神力=魔法防御力/MP
運=器用/クリティカル/ドロップ率
==========
ステータスは、レベルが1アップする毎に10ポイントが支給?されて、任意でステータスの各項目に割り振ることができる。能力値の上昇率は項目によりそれぞれ違うが、およそ0.15〜2倍の範囲内だ。
どの項目にレベルアップポイントを振るかで、そのキャラクターの方向性が決まる。
力なら物理攻撃重視、知力なら魔法攻撃重視、運ならクリティカルやアイテムドロップ率重視、といった具合だ。
ちなみにライトのゲームスタイルは【力こそが全て!】という、筋金入りの物理至上主義者にして完全なる脳筋であった。モンスターだろうが対人戦だろうが、先に撃破すりゃいいんだよ、撃破すりゃ!というノリである。
故にステータスポイントの割り振りは、常時力極振り一択だった。だが、今世ではそうはいかない。何故なら、ゲームと違って本当にこの世界で死ぬリスクもあるからだ。
なので、物理攻撃重視の方針は変わらないが、それと同時に死なない程度に防御も上げてHPの底上げも図っておきたいところだ。
知らぬ間に上がっていた、レベル2つ分の20ポイントがあったので、ライトは早速15ポイントを力に、5ポイントを体力に振り分けて確定ボタンを押す。
レベルアップポイントを振ったことで、ライトのステータスは以下のようになった。
==========
【力】48 〖物理攻撃力〗96
【体力】11 〖物理防御力〗22
【速度】6 〖敏捷〗10〖命中〗7〖回避〗9
【知力】2 〖魔法攻撃力〗4
【精神力】1 〖魔法防御力〗2+2718
【運】3 〖器用〗5〖クリティカル〗1〖ドロップ率〗1
==========
一通りステータス画面を弄った後、再び▶を押すと今度は一番最初に出てきた各種基本情報画面になった。
どうやらマイページの左右画面で見れる情報は『各種基本情報』『装備品類データ』『ステータス詳細情報』の3種類で、循環ループするようだ。
そして魔法防御力の後半に、MP同様の異常に高い数値の付与がある。
これはやはり、魔の森カタポレンに住み続けることによって得た魔力耐性ボーナス?のようだ。
ブレイブクライムオンラインでは決して得ることのなかった、思わぬステータスの増加に驚きながらも嬉しくなるライト。
左右の◀▶の詳細が分かったところで、次は上下の▲▼の▲を押してみる。
すると、今度は『アイテム欄』、『スキル情報』、『ショップ』が順繰りに出てきた。
だが、今のライトには所持しているアイテムや獲得済みのスキルは一切ないので、どちらも空欄のままだ。
ショップページでは、ゲームと同じくGで買えるスキル類や武器防具などが羅列されていた。前世ではほとんど買うことのなかった、いわゆる市販装備品類である。こちらも今現在まだ個人的なG資産がないので、当分は手が出せない状態だ。
だが、アイテム、スキル、ショップアイテム、それらはどれもいずれ入手できるだろう。
今はまだ焦ることはない、ライトはそう自分に言い聞かせる。
上下左右全ての画面を確認した後、画面右上にあるバツマークを押して操作画面を閉じる。
己のステータス画面の確認やレベルアップポイントの割り振りを実行することで、ようやくこの世界での本格的なスタート地点に立てた気がしたライトだった。
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何だか!久しぶりに!ちょっとどころか!大いに!話が!進t(以下略云々
ちなみに魔の森カタポレンに住み続けることによる魔力耐性の獲得云々は、第15話にてレオニスが言及しているのです。
はー、それにしてもシステム的な説明というのは、文字だけの世界にとっては鬼門です。どうしても冗長になってしまいがちなんですよねぇ。
ゲーム世界をより明確に、鮮やかに彩るためにも必須項目ではあるのですが。
漫画やアニメなら、一コマとか数コマ出して数秒見せる程度で、さらっと軽く流せるところなのですが。文字だけで説明しようとなると、どうしても文字数がどんどん増えて嵩張ってしまう……
かといって、なるべく文字数抑えたさにあまりにも簡素にし過ぎて、ザルシステムとしか思えないようなものにはしたくないし……
物語の根幹を成す部分で、読み手側の想像力を掻き立てる大事な要素だからこそ、どうしてもちゃんとした説明が欠かせないという。
文字だけの世界ならではの、ジレンマな問題です。
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