あと7分間はキミを待つ
@naniwazunouta
n^0話 始業式から
4月16日。本日高校生活最後の始業式。
校長先生のありがたーい話も既に15分経過。
私こと松下梨花は眠たくなる眼を落とさぬように気をつけながらそのことを頭の中で繰り返していた。
長い長い高校生活もあと1年で終わり。
そんな悲しいことがもう目の前にある。
と考えつつも、正直なところ、あまり実感は湧いてないのが事実で。
だから、この校長先生のお話が来年も聞けるというふうに錯覚しているのかもしれない。あんまり頭に入らない。
そうこうしていると、式はあっという間に終わった。
梨花はクラスの列から外れ急いで教室、ではなく理科室に向かった。
なぜなら理科室には河森暁人先生がいるはずと梨花は思ったからだ
案の定そこには副担任である河森先生がいて、試験管を洗っていた。彼は理科の先生で3年間ずっと梨花の副担任だ。年齢は……40代くらいに見える……。
「河森先生!」
梨花の呼ぶ声に気づき、洗う手を止めた。
「あれ、もうホームルーム終わったのー?それとも抜け出してきたとかw?」
「そーですよぉ!だってつまんないんですもん……」
自分でも、自分がしたことが褒められるようなことではないことを知っている。それでも、すぐにでも河森先生の顔が見たかったのだ。
しかし、河森は特に咎める様子もなく、
まあいいか、と言った。
「怒らないんですね。」
梨花がそう言うと
「別に松下さんは悪いことしてないでしょう」
と言うのでコイツは本当に先生なのだろうかと疑いたくなる。
その視線をかんじたのか
「あーでも、もし少しでも罪悪感あるならこれ洗うの手伝ってー?」
と急に教師らしいことを言い出した。
まあ、断るつもりはハナからないし、元々手伝いに来たようなものだ、と思って
「そーですねぇー……特別に手伝ってやりましょう。あ、でも、洗い終わったら勉強見てくださいね。」
といった。
すると彼は、ククク……といつもの様に変な笑い方をしたのち
「仕方ねぇなぁ……でもちゃんと洗うんだぞ?」
と言った。
毎度の事ながら、この人と話す時は何故か、遠回りになってしまう。
にしても、相変わらず面倒見は良い。
教師のくせに生徒と対等な立場にいるような、そんな喋り方をする、少し変わった先生である点も……。
当たり前ですよ、と言いながら試験管と専用のたわしを取った。何度も理科室にきて、理科係という名目のもと先生の手伝いや実験の準備をしていたので、普通の人より手際が良いと思う。
数分後、否n分後、河森が思い出したように
口を開いた。
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