第309話 関わりたくない。
アレンは赤を鞘にカチンッ音をたてて戻し……スタスタ歩いていき、倒れたサンドクロコダイルの前に立った。
「【神震】は貫通力があっていい技だが。生命力の高い魔物に使うと死ぬまで時間がありすぎて、魔物とはいえなんか可哀想だな。やっぱり一思いに【神斬】で首を切り裂いた方がいいか」
アレンがブツブツと呟いていると、ギギッと木が軋むような音をたててアレンの近くで馬車が止まった。
「ん? そういえば、ワニに襲われていた馬車があったな」
止まった馬車の荷台から少し放心状態のザッジムが出てきた。そして、アレンを見据えて問いかける。
『貴様、何者だ?』
『アレン……ダガ?』
アレンはなんか偉そうだな。まぁ……子供なら仕方ないかっと内心思いつつザッジムへと視線を向けて片言で答える。
『名前を聞いている訳ではない。サンドクロコダイルを一撃だと? 馬鹿な。そんなことお前は人間か?』
馬車の御者台から降りてきたバルサーがザッジムに険しい表情で叱咤する。
『ザッジム王子! 命の恩人に対して非礼です!』
『バ、バルサー……』
ザッジムは普段とは異なるバルサーに戸惑い……そして気迫に気圧されるような微妙な表情を浮かべていた。
『王とはどんな偏見に囚われることなく、物事を見通すべしと! 死去なされた国王は常々おっしゃられておりました』
『そ、そうだな』
バルサーはザッジムの横を通り過ぎて、アレンの目の前に立つや、非礼を詫びながらペコリと頭を下げる。
『助けていただいたにも関わらず、最初に礼を口にすることなく。申し訳ありません……ありがとうございました』
『すまなかった。非礼を詫びる。助け、感謝する』
ザッジムもバルサーに習うように、アレンへと頭を下げた。
『イヤ……キニシテイナイ』
『礼をするには……手持ちが少ないですが』
バルサーは懐から巾着を取り出すと、その中に入っていた金色の硬貨を取り出して見せた。
対してアレンはバルサーの差し出した金貨に手をだして、首を横に振る。
『イランヨ』
『そういう訳には』
『オレハ、ショクリョウヲテニイレテイタダケ』
『食糧って……このサンドクロコダイルですか?』
『ワニノニクハ、ウマイカラナ』
『そ、そうですか』
『……ソレデ、オマエラハ? コノチカクノクニノモノカ?』
『ええ、申し遅れました。私はバルサー・シル・ラーサムです。そして……こちらはエルバレス王国の第一王子のザッジム・シル・エルバレス様でございます』
『エルバレス? ソノクニノヒトカ?』
『ええ』
『ソウカ、ソノクニデハコノワニウレルカナ?』
『え? ええ、売れると思いますよ。食肉も爪も牙も……』
『ジャア、カイタイシナイトナ』
『あ、あのもしや……エルバレス王国へ行かれるので?』
『? アァ、ソノヨテイダガ? アレトイッショニ』
アレンがそう言って指さした先には近づいていたルルマとカトレア、そしてガポラ一行が近づいてきていた。
状況を理解できていないのか、ガポラが代表してアレンに近づいてきた。
『いやーアレン様は知っていたつもりでしたが、本当にとんでもないですね。……まさか、このように大きなサンドクロコダイルを仕留めてしますとは』
『コレ、ウレルラシイ。カイタイハオマエラニマカセテイイカ?』
ガポラが近づいてくると、アレンはサンドクロコダイルを指さしながら問いかけた。
『それはもちろんでございますよ』
『タダ、ココマデオオキイトタイヘンダロウ。ブンカツシタホウガイイカ?』
『んーそうですな。勿体なくはありますが』
『ワカッタ……ソレハオレガヤロウ』
アレンが赤の柄を握って、赤を鞘から引き抜こうとした。……それを引き留めようとガポルがアレンに更に近づき耳打ちする。
『あの。それで、この方々はどなた様で?』
『ンーヨクキキトレナカッタ、エライヒトカナ?』
『偉い人ですか?』
『ソノヨウダ。オマエガハナシテミレバ、イイダロウ……オレヨリモ、コトバガツウジルカラ。ソレニ……オレハ、カカワリタクナイ』
『は、はぁ、わかりました』
『ジャ、オレハ……キュウケイジョヲツクッテイル』
アレンはそう言い残すと、ルルマとカトレアの方へと歩いて行ってしまった。
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