第112話 冒険の失敗。
冒険者の捜索ため、ユーステルの森に入って二日目の昼を食べてすぐのことだった。
木々を抜けたところであるモノが転がっていて、アレン含めて全員が表情を歪ませた。
「まただ……」
そう呟いたアレンの視線の先には人間の白骨遺体が転がっていた。その白骨を見るとリナリーは表情を引き攣らせて短く悲鳴と嗚咽を上げる。
「ひ……おえ」
「……これ」
「ゼルフェネックが食った後だな」
アレンとスービアが遺体に近寄る。その遺体の所持品が血の付いた状態で遺体の周囲に落ちている。
スービアが血のべっとりと付いていた銀色の板を拾い上げた。
「お、ギルドカードがある……メンル・ゲルワァ? これはゴールドアックスのメンバーで間違いないかな?」
「知らんな……ホップ?」
スービアの問いかけに、アレンは首を傾げる。そして、リナリーと一緒に青い顔をして立っていたホップに視線を向ける。
アレンに話を振られて、ホップは我に返ったような表情で頷いた。
「……あ、あぁ、すまん。メンル・ゲルワァはゴールドアックスのメンバーだった」
「顔色悪いが大丈夫か? リナリーと一緒に少し離れたところで水でも飲んでいろよ」
「あぁ、すまん」
ホップとリナリーが一緒にフラフラと歩きながら離れていく。その二人の姿をアレンが見送っているとスービアが口を開いた。
「このデメリットは言い忘れていたぜ。アレンは大丈夫なのか?」
「……うん、まあまあかな?」
「そうか、無理はするなよ」
「スービアこそ。大丈夫なのか?」
「……俺もまあまあかな? 上の方の冒険者になると、結構あることだからな」
「そうか。しかし、ゴールドアックスは三十人くらいのパーティーだったはずで……何人が生き残っているか」
「……二、三人生きていればいい方だろうぜ」
「そうか」
「まぁ、魔物の脅威を見誤ったコイツらが全面的に悪いんだがな」
「そうだな。……ん? 今度はあっちに足跡が続いているな」
アレンが地面に複数の足跡を見つけて指さした。スービアはアレンが指差した方へ視線を向ける。
「本当だ。持てそうな遺留品を持って先に進むか」
「そうだね。もう近いかもしれない」
アレン達は少しの休憩の後で、再びユーステルの森を歩き出した。
草むらを過ぎるとそこには異様な光景が広がっていた。
それは……森が開けて少し地面が窪んだ場所に五人の冒険者が首から上だけ出た状態で生き埋めにされていたのだ。
「た、助けてくれ!」
「ここから出してくれ!」
「助けて!」
「助けてくれ!」
「早くしないと! アイツらが!」
彼らはアレン達を見ると一斉に助けを求める声を上げた。
「生きている。今……」
「待て!」
助けを求める冒険者の元に駆け寄ろうとしたリナリーをアレンは服を掴んで止めた。そして、鋭く周囲を見回して警戒する。
「何よ? どうしたの?」
「いや……」
アレンは言葉を濁した。
俺達の周囲を囲むように近づいてくる複数の気配がある。
どうしたのか……俺が気配を察知できたということはA級以上……いや、気配的にはB級の魔物の中でも上の方ってところか?
ゼルフェネックはC級の魔物だったはずだが。
おかしい。
気のせいってことはないよな?
まさか、あの埋まっている連中はここに引き寄せるための餌? では、ここでは戦うには分が悪い?
B級の中でも上の方の魔物……しかも、相手に取ってここは優位な場所である?
……この面子で挑んでも、やられるだけだろ。
「アレン、どうしたの? 早く助けに行くわよ!」
リナリーはアレンの静止を振り切って、埋まっている冒険者達に駆け寄っていく。そして、ホップもスービアも周囲を警戒しつつ、リナリーに付いていった。
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