第6話
「悪いんだけど帰ってほしい...」
「嘘よね?」
「え」
「ほら、これ、玄関のたたきに出てる青いコンバースのスニーカーだけどさ。
シンヤのじゃん!」
「何処となくシンヤの話し声聞こえてくるし...」
噂をすれば影とはよく言ったもので。
トントンと階下に向かって人が降りてくる
足音が聞こえてきた。
それに伴って話し声も耳に入った。
「アイリ、あのさー。俺がしたいときは
また来てくれるよな?」と兄貴シンヤ。
「ふふっ。いいよ?いつでも呼んで。
凄い気持ちよくしてもらったから、近いうちにまたしたいな?」と可愛い声のアイリ。
手を繋ぎ。
しかも恋人繋ぎで。
何の危機感もなく。
階段からトントントン、とリズミカルな
足音させて。
降りてきたはいいけど。
降り切ったところで。
奴らは足を止めた。
真正面。
玄関の状況を見て。
ヤバイ、と思ったんじゃないか。
「やだ、シンヤ...もしかして。
浮気?全部、話し聞こえてきたよ...?」
「ユーコ...おまえ、、
何でここに...!?」
「これ、誕生日プレゼント、一日早いけど、
あなたがほしがってた、ブランド物の腕時計、
買ってきて、それ、で、早く渡そうと思ってきたの...!」
声にならない声で。
辿々しく。
動揺が感じ取れる物言いだった。
無理もない。
浮気現場こそ目撃してないが。
兄貴の大本命、
林ユーコは、それに準ずる現場に出会してしまったのだから...!
俺は嘘も方便だと思って。
大本命を傷付けたらいけない、と思って。
咄嗟に出まかせを言ったのに。
五分と経たずに嘘がバレた瞬間だった...。
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