unpredictable Love
蛭川波瑠
*Prolog*
今はもう、使われていない工場。
機械と機械の間やあちこちに蜘蛛の巣が張り巡らされていて、埃っぽい。
そんな場所に佇むひとりの男の人。
憂いを帯びたその表情の奥で、今何を思っているのだろうか。
その手に握られているのは……全てを破壊してしまう爆弾のスイッチ。
「俺を殺すか、学園を潰すか……さぁ、選んでよ」
そう言って笑う姿は知らない人みたいで、涙が止まらなかった。
床に落ちたままの折りたたみナイフを手に取る。
彼が私にくれたものだ。
鈍い光を放ったそれをギュッと握りしめる。
止められるのは、もう私しかいない。
だけど、本当にこれでいいのかな。
私に残された時間はもうない。
ねぇ、私はこの人を……好きな人を自分の手で殺さないといけないの……?
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