第174話 は? 何を言っているのですか?



早速、俺は移動を開始する。

ホテルでクララに話すと、クララもついてくると言う。

ま、問題ないだろう。

俺は超加速を使って移動。

クララに掴まってもらって移動すると効率が悪い・・背負ってみた。

クララも嫌がるでもなく、すんなりと俺の背中に覆いかぶさる。

・・・

最高だ!

この胸の圧力・・どの女よりも間違いなく偉大な力だろう。

俺の背中が語っていた。

「う~ん・・テツって隙がないのかしら・・やっぱダメね?」

クララがつぶやく。

「クララ・・まさかまた俺の魔素を吸収しようとしたのか?」

「うん・・でもダメね」

「あのなぁ・・おそらくクララの系統と俺の聖戦士では互換性がないんだよ」

俺の言葉にクララが言う。

「そうなのよ・・それはわかっているの。 でも、もしかしたら何か新しいスキルが発現するかもって思ってね、テヘ」

こ、この女・・実験してるのか。

そして何でもテヘってつけてればいいってもんじゃないぞ。

そんなバカなことを思っているうちに到着。


ほんとにここだよな?

・・・

俺は辺りを見渡す。

時間は午後2時頃。

こんな時間だというのに、薄暗い場所だ。

草が背丈まで生い茂っており、家らしき崩れた建物が何軒かあるのが確認できる。

クララが背中から降りてゆっくりと見渡していた。

「テツ・・いいところね。 この森の感じ・・落ち着くわ。 匂いもいいわね」

ほんとか?

こんな何もないところが落ち着くのか?

確かに人がいないのはいいのだが、これって完全にサバイバル空間だぞ。

「そ、そうか・・えっと、この辺りを俺の土魔法で居住空間に変えるんだが、いいかな?」

「えぇ? もったいない」

クララが少し残念そうな顔をする。

「まぁ、住むところ以外は手を付けないよ」

俺はそう言うと魔法を発動する。


本当に一瞬で野球ドームくらいの町ができあがった。

神崎のところで作った模型を大きくした感じだ。

クララは別に驚くでもなく町を見ている。

「なるほど・・これがテツのイメージなわけね。 う~ん・・どことなく向こうの世界に似ているわね」

「そ、そうか? あ、でも屋根の部分は全部木や草をつけたよ」

俺はそう言うとドンッとジャンプする。

上空へ飛び上がり、後は風魔法でゆっくりと下りて行く。

上から見下ろしてみる。

なるほど・・離れれば離れるほど、周りの景色に溶け込む。

まさかここに町があるとは思えないだろう。


町の通路は石畳だ。

住むところは2階建ての石造りの家になっている。

ちょうどエーゲ海の住むところのような家だ。

だが白い壁ではなく、石を組んでコケや草をくっつけてある。

地上へ到着すると、俺は町中を歩いてみた。

・・・

いい感じだ。

本当に静かで落ち着く雰囲気だ。

インフラ関係も問題あるまい。

地下から供給できるようにしてある。

無論魔法だが、知られることはないだろう。

水も水道栓から出るようにしてある。

ネット環境だが、これはケーブルを引いてくるしかない。

それくらいはしてもらわないとな。


後は町を結界で囲っておくか。

誰かが侵入してくれはわかるだろう。

「クララ、町を結界で囲っておくよ。 妙な病原体を持ち込まれても困るしな」

俺の言葉にクララも反応する。

「そうね・・私も結界を被せるわね。 これで誰かが侵入してくればわかるわ。 それと周囲の魔素を吸収するようにしておくわね。 どうせ町のインフラは魔法なんでしょ?」

仰る通りです、クララさん。

「あぁ、地下でその仕組みを構築してあるよ」

「じゃあ、そこに流れるようにしておくわね」

クララは簡単に言ってくれる。

ここまでの所要時間、移動も含めて30分ほどだろう。

さてと、神崎のところへ帰るか。

俺は一瞬クララを背負うのをやめようかと思ったが、クララが迷わずに俺におぶさってくる。

「テツ、さぁ移動しましょ」

「う、うん」

俺的には役得なんだが、素直に喜べないんだよな。


<神崎の事務室>


時間は午後4時。

俺たちは帰って来ていた。

クララはホテルに置いて来ている。

俺はドアをノックして神崎の部屋に入って行く。


「どうしたの佐藤さん。 私はてっきり出発したものだと思っていたのだけれど・・何か足りないものとかあったら言ってくださいね」

神崎が笑顔で言ってくれる。

「あ、あぁ、ありがとう・・その・・今、帰って来たんだ」

俺は言葉に詰まりながら話す。

「は? どこから帰って来たのですか?」

神崎は何を言っているんだという顔だ。

「その・・移動先の廃村だが・・」

「え? 何を言っているのですか? えっと・・まだ先程から2時間ほどしか経っていませんが・・四国ですよね? ここから1000㎞くらいはあるんじゃないんですか? それよりも付いてくる企業の方々ですが・・」

神崎が話してくれるのを俺がさえぎる。

「い、いや・・神崎さん・・本当に今行って帰って来たんだ・・それに町というか住むところも作ってある」

俺の言葉に神崎の動きが止まる。

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