どうやら転移していたみたいです

第119話 激突

「この人を喰らう化け物め・・我が全力を持って貴様を葬ってくれる」

テンジンの闘気が完成したようだ。

「若いのは良いことだ。　だが、相手を見誤ってはいけないな」

落ち着いた口調でディアボロスは言う。

テンジンが右足を前にして身構えたと思った瞬間、地面を蹴る。

ダッ！

一気にディアボロスに向かって行く。

よし、身体は動く。

闘気を纏い、迷いもなくなったようだ。

身体は反応してくれている。

テンジンはディアボロスの胸めがけてに右手掌打を放つ。

「フン！」

ディアボロスは自分の右側に躱（かわ）している。

その場所めがけてテンジンが左足で回し蹴りを繰り出す。

テンジンにとってはカウンターだ！

ディアボロスはテンジンの蹴りを受けざるを得ない。

顔面に当たるかと思ったが、左手でテンジンの蹴りを受ける。

バシューン！！

ディアボロスの左手首から先が消失していた。

テンジンは自分の攻撃は通じると確信しただろう。

ディアボロスの罠だったのだが。

ディアボロスは左手首から先を放棄していた。

また後で治せばよい。

テンジンに蹴られた衝撃を利用してバックステップをする。

テンジンがそのまま追撃を仕掛けてきていた。

左足を着地させ、左腕をディアボロスに向けて槍のように突き出していた。

「シッ！」

◇

＜テツ＞

俺はクララと一緒に移動していると強烈な魔素を感じた。

！！

思わずクララを見る。

クララもうなずく。

「これは・・間違いない・・ディアボロスだ」

「こんな気持ち悪い感じは初めてよ。　腐った肉の匂いを嗅（か）がされているみたい・・匂わないけどね」

クララの顔が険しくなる。

おぉ、クララ！

その表情、グッドジョブ！

妙に艶めかしい・・って、そんな場合じゃないだろ。

これって男（オス）の性なのか？

俺は軽く頭を振って不埒（ふらち）な考えを吹き飛ばす。

「どうかしたの、テツ？」

クララが聞いてくれる。

「い、いや・・こんな嫌な魔素ってあるんだなって思って・・」

取りあえず言葉を俺は返す。

「そうね・・人じゃないっていうのはわかるわ」

「クララ・・少し速度を上げても大丈夫か？」

俺の言葉にクララは微笑みうなずく。

「大丈夫よ」

おい、クララ！

めちゃくちゃ可愛いじゃないか！

俺って惚れっぽいのか？

俺たちは速度を速めてディアボロスの方へまっすぐに向かって行く。

◇

＜テンジン＞

テンジンの左腕の突きはまるで閃光のような速さでディアボロスの右腕をかすめる。

ディアボロスの上腕、肩から肘にかけての部分が1/3ほど消失していた。

「ふむ・・見誤っていたのは私の方か・・これは勉強になった」

ディアボロスは別に焦ることもなく冷静に分析をする。

テンジンはバックステップをして距離を取る。

今のは、拙者の最高の技だ。

今までこの龍雷尖（ドラゴンクロー）で倒せなかった魔物はいない。

恐ろしくて人に使ったことなどない。

だが、相手は魔族の凶悪な奴だ。

しかし・・。

テンジンは心の揺らぎを必死に抑え、２撃目を放とうとしていた。

当然ディアボロスも警戒をする。

「テンジンだったか・・人のレベルで素晴らしい強さだ。　我が配下に欲しいくらいだが、そうもいかない。　それに妙な魔素が急激に接近してきている。　早々に私も立ち去らねばならない・・残念だよ」

ディアボロスの言葉にテンジンは一瞬気が緩んでしまった。

誰が接近してきているのだ？

そう思った時だ！

！！

テンジンの左胸をディアボロスの右腕貫いていた。

クッ・・いったい、いつの間に？

テンジンはそう思うと同時に右腕に貯めていたドラゴンクローをディアボロスに放つ。

ディアボロスはそのままテンジンを吸収しようと思っていたようだが、攻撃を受ければかなりのダメージをくらうのは間違いない。

テンジンから腕を引き抜きつつ後方へ飛び退（の）いた。

「まさか、攻撃をしかけてくるとは・・」

ディアボロスはかなり驚いている。