第96話 中国の行く末
俺の驚きを勘違いしたのか、若い連中がニヤッとする。
「おっさん、あまりなめた真似をすると、こいつが刺さるぜ」
「俺たちがおとなしくしてりゃあ調子に乗りやがって・・」
「おっさんがぁ・・」
ナイフを正面で構える男と共に若い連中が言う。
俺は別にビビっているわけではないが、こんな連中のいる日本を結界で守ってしまったのかと、少しだけ嫌な気持ちになっていた。
「おっさん、ジャンプしろよ、ジャンプ!」
誰かがそう言葉を出すと、合唱が始まる。
ジャンプ! ジャンプ! ジャンプ!
・・・
面倒だな。
俺はナイフを持ったやつに近づいて、ナイフを取り上げる。
俺的には普通の動きだ。
相手は意外な俺の動きに反応できていない。
俺はそのまま相手にデコピンを1発打ち付けた。
ドン!
ナイフを持っていた奴は、空中で2~3回転くらいしてそのまま地面に倒れた。
まぁ、死んではいないだろう。
「な、なんだ?」
「お、おっさん、何しやがった?」
「おいケンジ、大丈夫か? おい!」
仲間が倒れた奴を揺すっている。
反応なし。
「このおっさん、何か妙な技を使いやがるぜ」
俺は残った連中の前でナイフをぐにゃりと曲げてみた。
そして刃の部分と柄の部分で団子結びをする。
!!
「バ、バカな・・」
「何してんだ?」
「おっさん!」
若い連中は明らかに驚いている。
そりゃそうだろう。
一応ナイフは金属だものな。
結んだナイフを倒れている奴のところに放り投げた。
「じゃあな」
俺はそう言葉を残すと超加速で移動。
!!
「「き、消えたぞ」」
若い連中が気を抜かれたようにうろたえていた。
「あのおっさん・・何だったんだ?」
「それよりもケンジだ。 大丈夫か?」
「そうだ・・ケンジ、大丈夫か!」
・・・
・・
若い連中の1人が元ナイフを拾いあげて小さくつぶやく。
「これって、ほんとにナイフだったよな?」
◇
俺はそのままクソウのところへ帰って来ていた。
受付で山本を呼び出してもらい、迎えに来てもらう。
その時に山本からIDカードのようなパスカードをもらった。
「佐藤君、それを首から吊り下げていてくれ。 それを持っていると不自由なく移動できるから」
俺がお礼を言おうとすると、山本が話を続けていた。
「佐藤君、今閣下は国際会議中だよ。 例の中国の件でね」
山本が歩きながら話してくれた。
山本の案内でクソウの部屋の応接室で俺は待機していた。
時間は22時。
ソファに座り、何もすることがない。
俺は天井を向き、魔族のことなどを考えていた。
魔王は本当にディアボロスを倒して欲しいのだろうか?
戦闘的にはどうにかなるかもしれない。
俺の職種、聖戦士は伊達ではない。
魔族やアンデットなどには天敵だ。
暗黒系の魔法がほとんどが無効になる。
ディアボロスの頬にも傷がつけれていた。
しかしなぁ・・この世界はどうなるのだろう。
ドイツにしてもロシアにしても、既に国が帰還者たちを把握していた。
軍事利用するのは当然だろうな。
それを昔の時代のように外に向けて利用しようとすると、間違いなく戦争が起こる。
自国の防衛に使えればもの凄い脅威だろう。
諸外国が下手に無理を言ってくることもない。
だが、そんなことは人としては無理だろうと思う。
人って持った力を使わずにはいられない種族なのかもしれない。
・・・
はぁ・・どれだけ考えても答えはない。
単純に俺はディアボロスを目標とした方がいいかもしれない。
余計なことに巻き込まれるのは嫌だしな。
しかし俺が断っても、ケンやリカが利用されるかもしれない。
・・・
俺がそんなことを考えていると、山本が俺の近くに歩いてきた。
山本は真剣な顔をしている。
何かかなり疲れているようだ。
俺を見てつぶやく。
「佐藤君・・まだ会議は続いているが、どうやら中国は国連の管轄下になるようだね。 どこかの国が管理するのではなく、彼ら中国人による統治を見守るようだよ。 まぁ国連使節団が派遣されて協定などを作ると思うがね。 それにしてもロシアが動かなかったのが大きいね」
山本は苦笑いしていた。
・・・
これって、もの凄い大事な情報じゃないのか?
俺が聞いても良かったのか?
俺は返答できなかった。
ロシアか・・プッツン大統領が不在だろうからな。
下手に動けないといったところだろうか。
それにそのタイミングを使って早々に協定を作ろうとしているのだろうか。
そして中国国内も多すぎる人がいる。
民族の結束が強いからその国に閉じ込めて内部で睨み合いさせた方が効率がいいのだろう。
外に目を向けられても迷惑だしな。
俺の頭にもそれくらいのことは浮かぶが、連想していくと訳がわからなくなる。
複雑すぎてダメだ。
その情報を得ているどこかの国があるはずだ。
それに国連に力を持っている国もあるだろう。
・・・
・・
あぁ・・面倒だ。
わからない。
俺は頭を振る。
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