第73話 見たことあるような、ないような
<テツ>
俺は超加速で移動している。
現実世界の時間の進行はほとんどないだろう。
どれくらい移動しただろうか。
地理的なものは全くわからない。
ただ、魔素の強い方へ移動しているだけだ。
・・・
ん?
この魔素って・・。
俺は大きな魔素を感じていたが、反応が離れて2つある。
2人も帰還者がいたのか。
ヤバいな。
連携して進行しているのだろうか。
規模がでかくなるわけだ。
そんなことを思いながらも、一つの魔素は何か知っているような感覚がある。
誰かはわからないが、初見というわけでもなさそうな感じがする。
俺の勘違いかもしれないが、知っているような魔素の方へ用心しながら近づいていった。
超加速の移動といっても、俺の一呼吸の間にできることだ。
移動範囲は、時間がほとんど動いていない状態+俺の移動速度になる。
それはそれでとてつもない範囲になるのだが。
それはいい。
さて、知っているような魔素を持つ人物の近くまで来た。
この辺りになると、結構ビルが立ち並ぶ。
人も多い。
日本よりも近代的だ。
そんな街を通過。
!
いた!
あいつだ、間違いない。
俺は気配を隠蔽しながら近づいて行く。
後ろ姿を確認。
女のような感じだが、男かもしれない。
髪はショートカットでラフな感じだ。
色は明るい茶色か。
体つきは女の人っぽいけど・・。
ん?
俺は超加速の中にいる。
その人物の正面に回って顔を見てみた。
・・・
あれ?
どこかで見たような・・わからない。
誰だっけ?
相手には俺は認識されていない。
・・・
女の人だよな?
・・
よし、確認しておこう。
「えへん・・失礼しまーす」
俺は一応小さく声を出して、この人物の胸を触ってみた。
ムニュ・・。
うん、柔らかい。
胸だな・・女の人のようだ。
決してスケベ心ではないぞ。
確認だ、確認。
俺は自分に言い聞かせる。
ここまでだった。
超加速が切れる。
!!
相手と目が合った。
相手にしてみれば、いきなり目の前に俺が現れたように見えただろう。
ビクッ!! となっていた。
「ヒャッ・・」
大きく目を見開いて、声が出そうになっていたが、すぐにバックステップして身構える。
俺のミスだ。
調子に乗って余計なことをしていたから。
俺は作り笑顔で、片手をゆっくりと上げる。
「や、やぁ・・」
なんて間抜けな言葉だ。
俺はぎこちなく言葉を出した。
相手はかなり警戒している。
当然だな。
だが、少し顔を前に出すと俺を品定めするような感じで見ていた。
・・・
「あなた・・日本の帰還者の・・」
可愛らしい女の人の声で話しかけてきた。
ん、俺を知っているのか?
俺は少し驚いた。
「えっと・・あの・・驚かせるつもりはなかったんだ・・ごめん」
俺は言葉を出しながら思う。
なんで俺が謝らなきゃいけないんだ。
あ、いや、胸は触ったけど・・見た目と違ってボリュームはあったよな。
って、そこじゃない!
「あの・・俺のことを知っているのですか?」
俺は改めて聞く。
相手が軽く笑う。
「フフ・・知っているのかって? 本気で聞いているの?」
この女・・高飛車な感じだな。
いい胸してるのに・・って関係ないな。
俺は女の人を見る。
・・・
知らないな。
だが、魔素は何となく初めて接した感じがしないんだ。
俺は考えていた。
相手がゆっくりと歩いて近づいてくる。
「本当に知らないようね・・私はサラ。 えっと・・以前に日本の空港であなたに手も足も出なかったって言ったらわかる?」
サラという女の人が微笑みながら話しかけてくる。
・・・
!
俺は思いだしていた。
あの空港で魔法をぶっ放そうとした連中か!
俺の雰囲気が変化したのを感じたのだろう。
サラが両手を前に出して俺に待ってくれというシグナルを出す。
「ちょ、ちょっと待って・・もう戦う意思なんてないわ。 本当よ、本当」
俺はサラを見つめる。
確か金髪だったように思ったが、違ったか?
サラが話出す。
「あの時は悪かったわ。 ごめんなさいね・・」
サラと俺は人のあまりいない方へ歩いて行く。
サラがいろいろと話してくれた。
・・・
・・
この新型コロナウイルスは、ビリオネアと呼ばれる人たちの計画の一端なのだということなどなど。
意外だったのは、相方のデイビッドが日本に向かっているということだ。
俺に接触したがっているという。
どういうこと?
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