第16話 殿下の執務室 4(殿下の従者視点)
今日は一日お疲れ様でした。
そう自分を労りたい、スペリアです。
殿下に無茶振りを押し付けられたせいで、エイミー様のために頑張ったのに、結果怖がらせるという最低な事をしでかしてしまい、反省中です。
そんな俺と対象的に、パーティーが終わってすぐにこちらに戻って来られた殿下は、何故か上機嫌なんですけど?
パーティーであの情け無い姿をエイミー様に見せたのと言うに一体何故なんでしょうか?
「殿下、凄くご機嫌ですけど……」
「やはり、そう見えるか?」
「ええ……」
「ふふふ、今回の僕はかっこよかっただろ??」
「何処が!????」
は?本当、その自信はどこからくるのかと頭が痛くなるんですけど??
「だって、僕は今日二度もエイミーを助けたんだよ?」
「いや、本当何処が!??どうみても、寧ろピンチにしてましたよね??」
「ええ!?なんで?泣いてるエイミーを優しく抱きしめたし、虐めから守ってあげたのに?」
「前半は殿下のせいですし、後半は勘違いです!!!」
ってか、いまだにエイミー様がいじめられてると思ってたんですか!??
あの令嬢と何か話し合ってると思ったら、もしかしてそういう話をしていたのでしょうか……心配になってきました。
「そんなぁ~、あのときのエイミーの顔はどう見ても助けてくれてありがとう、って言ってたのに!」
「ないない!!ありえません!ただしくは、うっわ~。殿下だ、早くどっかいってよね!だと思いますよ?」
「エイミーはそんな事言わない!!それからエイミーの声真似するな!気持ち悪いぞ!!」
いや、さっき殿下も声真似してしましたけど……それも人のこと言えないぐらい似てませんからね。
それに殿下の頭の中のエイミーさんはそうかもしれませんけど、本来そんなに優しい方ではありませんからね……。
「まあ、殿下の妄想は置いといて……」
「妄想じゃない!!」
「ひとつだけ褒めるとしたら、エイミー様とフィア様を近づけなかったことですかね……」
「いや、それは違う」
「へ?」
「あれはフィアが感動の出会いは今じゃない!!って言ったからだ」
「感動!?あの人何求めてんだ!?」
なんで、エイミー様も感動する前提でいってるんだ??
しかも今の話だと、今回のパーティーで殿下が良いとこ一つもないんじゃないですか!?
「僕にはあの女の考えが全くわからない……」
「それは、私もですから大丈夫ですよ」
「何より不安なのは、この休みが終わったらフィアはこの学園に入学することだ……そうなればエイミーに絶対近づくはすだ!そして僕のある事ない事エイミーに吹聴して、エイミーと仲良くなってエイミーを僕に見せびらかしてくるんだ……!」
いや、途中からよくわからない嫉妬になってますけど!?
「というか、殿下がフィア様をエイミー様に近づけさせたくない理由って……」
「エイミーは余りにも可愛いからな、僕から奪いとった後にあいつはきっとエイミーをおもちゃにしてしまうに違いない!それも僕に嫌がらせするためだけに!!」
「いやいや、流石にそんなはず……」
「あいつは子供のときに僕のお気に入りの人形をわざと壊したあとに、新しいのを送ってきた変なやつだぞ!!?」
え?それはちょっと……殿下、嫌われすぎでしょ?なんて俺の口からは言えないです。
またひとつフィア様の怖い話を聞いてしまいました。恐ろしい……。
「ぐぬぬ、あいつが入学する前に対策を!!」
「いや、無理です。というか、すでに先手を取られているんじゃないですか?」
「何だと!?」
「実は私、また手紙を預かってしまってですね」
「ヒィッ!!」
私も内心叫びたいです。パーティーで殿下に会っていたはずなのに、何故か私はフィア様からの手紙を預かっているわけで……フィア様には私も困っていることがあるのですが、殿下に言うわけにはいきません。
「殿下、読んでもよろしいですか?」
「ま、待ってくれ!心の準備が!!!」
そう言ってまた机に隠れないでください!
隠れたいのは俺なんですから!?
「では、読みます。『……殿下へ、ワタクシ素晴らしい入学式を、閃きましたわ!きっと会場は驚きで凍りつくこと間違いなしですので、殿下も驚きを楽しみにしていて下さい!これであなたと婚約解消できる日は近い筈ですわね!!それではごきげんようオホホホ……!!!』」
「え?すでに凍りつきそうなんだけど……」
読んでる私の方が凍りつきそうですけど!!?
「やはり、あの女の書く文は呪われているんだ!そして僕はもう!呪われてしまったのだ!?いますぐにエイミー会いに行って救ってもらわなくては!」
「ダメです!!」
「この休み中、一回も会えないのにか??」
「だめです!!」
「ストーカーは……」
「ダメです!!それだけはやめて!!」
ご乱心の殿下を止めるには、話題を変えるしかない!!
「殿下、新学期のクラス編成についてですが!!」
「ああ、そういえば頼んでおいたのだったな」
「コッソリ手を回しておきましたから、期待して下さい。それからスザナ・エリミナル侯爵令嬢との話し合いの結果、共同利益が一致したためこちら側についてくれるそうです」
「そうか、僕が説得したかいがあったな!!」
今回は完全に殿下のお手柄です。
ですがもとは、殿下の勘違いからの話し合いなので、とても残念な感じなんですけどね……。
「何でそんな残念そうな顔するんだ??」
「それは殿下が、残念だからです……」
「酷いっ!!!?」
「事実だから仕方がありません。もう少ししっかりと働いて頂かないと、卒業まですぐに来てしまいますよ?」
「そうだな、じゃあスペリア仕事だ!」
「え?今から!!?」
パーティーが終わって、もうすでにいい時間なんですけど??
「お前が仕事をしろといったのだろう?」
「い、いや……それは殿下が!!」
「お前は僕の従者だから、運命共同体みたいなもんだろ?」
「へ?」
「こないだまとめたリスト以外から、こちらについてくれそうな貴族一覧を新たに僕の方で作ってみたんだ!怪しい裏がないか一緒に探りに行こうじゃないか!」
いや、まって!!
そのまま部屋を飛び出さないで!?
ようは俺も一緒に来い、ということなんでしょう……。俺、ここ暫く残業なんですけど!?
そんな俺の嘆きを、聞き入れて貰えるわけもなく。
俺は殿下に連れ回されたのでした。
えっと、次の休みは……いつでしたっけ?
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