第13話 パーティー1
ついに卒業パーティーの日がやってきたわよ。
毎年王宮の一部を解放して、全校生徒が集まっているらしいこのパーティ!
私も一度は行ってみたくてずっと楽しみにしていたのよ!
そしてなにより今日は、殿下が婚約者様といらっしゃるために、脅威に晒されることもなくて、私は自由なのよ!!オホホ!
「エイミーちゃん、凄く楽しそうね?」
「ええ!何といっても、今日の私は誰にも邪魔されることはありませんからね!」
「う~ん、どうかしら?」
なんで微妙そうな顔するんですか!!?
え?ダメ?殿下くるの??やめて下さい!!!
「まあ、それは置いといて……エイミーちゃんをエスコートしてた幼馴染みの方は?」
「あいつなら、さっさとどっかに行きましたよ!まあ、今年卒業ですから忙しいのではないですか?」
いつも嫌味を言ってくる嫌な男の事はポイっとしましょう、ついでに殿下の事も忘れて……。
せっかくのパーティーですからね、美味しい料理を堪能するわよ!!
「卒業パーティーとはいえ、私たち一年生は雰囲気を知るために呼ばれただけですから!ユリア様、今年はゆっくり見てまわりましょう~」
「ウフフ、エイミーちゃんとご一緒出来て嬉しいわ~」
「あ、でもユリア様の婚約者の方は……?」
「彼にはすでに、今日絶対に話しかけて来ないでって伝えてあるから大丈夫よ?」
え?婚約者の扱いそれで大丈夫なの!!??
「それにしても、私先程からずっと気になっていたのだけど……」
ぎくり、私も気になってたから言わなかったのに!!?
「何故かしら?私達の周りだけ、逞しい方々が多くないかしら?」
ですよねーー!?本当、おかしくない!?
こんなにもパーティー会場は広いのに、なんでここの周りだけ厳つい人ばかりいるの!??
この人達騎士科の生徒さんかしら……ソレ以前に本当に同じ学生なの?
「なんだか少し怖いので、他の場所に行きませんか?」
「そうですわね~」
「とりあえずあちらの料理を見に行きましょう!」
これでここから離れられる!!
そう思ったのに……!
「ね、ねぇ。エイミーちゃん?」
「言わないで下さい!!」
「あの人達、何故か同じ方向に来てないかしら?」
ですよねーー!!!?
先程から何度場所を移動しても、なんでか私達の後をついてくるのよ!なんで!!?
はっ!!そうか、わかったわよ!!
「まさか、私達を誘拐しようとしてます??」
「少し飛躍しすぎだとは思うけど、逃げた方がいいかもしれないわね……」
「ユリア様、この会場を一緒に抜け出しましょう!!!」
とにかく、ここを出て向かう場所は……庭園がいいと思うのよね!
王宮の庭園ならこの間いったばかりだもの、少しなら私もわかるわ!
「ユリア様、ついてきています?……あら?」
なんで?振り返ったら誰もいないの!!!?
調子にのって走り過ぎてしまったのかしら?
こ、ここ困ったわ!一人にされると急に怖くなってきたんだもの……。
「いたかー?」
「こちらには見つけられなかった!」
「あっちはまだです!行ってみます!!」
嫌だわ……先程の厳つい方々じゃない……?
もしかして、私を探しにきたのかしら!?
どどど、どうしよう!!?
とりあえず草の隙間に隠れてやるんだから!!
ガサガサしてチクチクするわ!でも今は我慢よエイミー!!
「まだ見つからないのか!?」
「いえ、それが……」
「あっちにもいません!!」
どんどん声が近づいてきているわ!
大ピンチよエイミー!!もう涙目よ!
でも、ここで焦ったらダメ!深呼吸して、祈るのよ!!
誰かが助けに来てくれるのを……!
お願い助けに来て、私の王子様!!!
「エイミー!!!」
王子様……?
「こんなところにいたんだね!探したんだよ?」
王子様じゃない!!で、でで殿下ーー!!!?
「大丈夫かい?エイミー。……エイミー?」
「……こ、怖かった!!厳つい男の人達に囲まれて追いかけられて……っひぐっ……」
殿下が来て驚いたけど、それよりも余りにも怖かったんだもの、ホッとして涙だってでるわよ!
だから、今だけは殿下に抱きついても許されるわよね……それになんだか殿下が、まるで私の王子様みたいに少しかっこよく見えてしまって、頭が混乱しているんだもの。
だから顔は見たくない、殿下をあの王子様と認めたくないわ……。
「エイミー、もう大丈夫だよ?僕がついてるから。ほら、泣かないで……泣き顔も可愛いけど、僕は笑顔のエイミーの方が好きだよ?」
「で、でんかぁ……、今そんな事言ってる場合じゃ!!あの人達は何だったんですか?」
殿下がここに来てくれたと言うことは、もう大丈夫なんだろうけど、何故追われていたのかは気になってしまうわ。
「えっと、その……彼らはエイミーの護衛として僕がつけた人達だったんだけど……」
「……へ?」
「どうやら、エイミーをだいぶ怖がらせてしまったみたいだね?」
「もう!!全部殿下のせいじゃないですか!!?」
少しでも殿下がかっこいいとか思った私のバカバカ!!!やはり殿下は殿下よ!全然王子様なんかじゃないわ!!
「でも僕はエイミーのことが一番大切だから……例え君に嫌われても君を守りたいんだ」
そんなジョンポリされても、私は流されませんから!
だから言い過ぎたかなと思っただけで、本当に流されたとかじゃないですからね……。
「その気持ちは素直に嬉しいのですよ……まぁ、少しやり過ぎだと思いますが、確かに私が早とちりしたのも悪かったのですし、だから今回はおあいこということで……」
「エイミー!!!!」
「ちょっと殿下!!?」
抱きついたのは私ですけどさらにギュッと抱きしめないで下さい!!!
なによりも私とあなたは赤の他人なんですよ!!
「も、もう!離して下さい!!」
「いやだ!僕はエイミーが好きだから離したくない!」
いやいや、ちょっとまって!!
今気がついたけど、さっきから厳つい護衛さん達がこっちを見てるんですけど!!?こんなところ見せたら私殺されたりしない、ねぇ!!?
それにさっきから殿下を引き剥がそうとしても、全く剥がれないんだけど???
「ええい、殿下!いい加減離して下さい!!!」
「もう少しだけ!!」
もう少しってどんなけよ???
もう!誰か助けてーー!!!!
「殿下、そろそろお時間が迫っまていますよ?それにエイミー様が困っていらっしゃいますから……」
天の助け?あら、いつも殿下と一緒にいる従者のスペリア様だわ。
なんだか地味仲間な気がして親近感が湧いちゃうのよね~。
「む、もうそんな時間か……名残惜しいけどアイツがくる前に急ぐとするぞ!」
ようやく殿下が離れてくれたわ。
でもここからパーティーに戻ることを考えると少し嫌な気分になるわね……。
そう思って、私はため息をついてしまったの。
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