毎秒告白したい溺愛王子と、悪女になりたくないエイミーの激おこツッコミ劇場
ゆきぶた
第1話 今日もまた彼は来る1
「君の事が好きなんだーーーーー!!!」
その日、私は学園に着いて馬車から降りようとしていたのに、目の前にいるその人を見て……。
また馬車の中に戻ることにしたの。
「えぇ!!?な、なんでだい?エイミーー!!」
なんでと言いたいのは私です、殿下!!!
なんでこんな目立つ場所で、堂々と愛の告白をするんですか!?
私、あなたの婚約者でもなんでもない、ただの伯爵令嬢なんですけど!!!!?
私、エイミー・ミューシアスは静かに激怒した。
毎日、毎日毎日毎日!
この貴族が通う、ノーランヒルセン学園に入学したその日から、この国の第一王子クレス・グレフィアス王太子殿下は何故か私に告白してくるんですけど!?
王子様からの告白なんて夢のよう。
……なんて言えるのは、5歳児までよ。
現実に考えれば、王子に好かれて良いことなんて何一つもない!
王子から好かれていると知れ渡ったが最後、周りから避けられて女子からいじめられるのは当たり前。そして私は一生悪女として生きる事になるのだわ!
だから私はバレないように、コッソリ学校生活をしてきたはずなのに……あろうことか、殿下自身がこんな大勢が見守る中で大告白するなんて!!?
きっと外では、あの馬車に乗っている令嬢は誰かしら?なんて、すでに犯人探しが始まってるに違いないもの……。
もう、恐ろしくて馬車から出ることもできないわ!誰か助けて!!
こんな危機に助けてくれる王子様は現れないかしら……いえその前に私を追い詰めてるのが王子様だったわ!?
「えっと、エイミー。出てきてくれないから、僕の方からきちゃった!」
ででででーーーー殿下!!!!?
きちゃった、じゃなーーーい!!!
私が悩み事をしている間に、殿下が馬車に乗り込んでくるなんてなんて信じられない!?心臓が飛び出るところだった、危なかったわ……。
だけどエイミー落ち着くのよ、相手のペースに飲まれたらそこで試合終了なのよ。
「殿下、婚約者でもない女性の馬車に相乗りするなんて、殿方としてどうかと思います。どうか、馬車から出てください!!」
「えー、せっかくエイミーと二人きりになれたのに!」
そう言いながら、私の手を握りしめないで!!
こっちは二人きりにならないように、最近は気をつけていたのよ!
「まさか、殿下……私と二人きりになる為にあのような場所で告白を……?」
「え?ただ、エイミーの顔を見たら口から出てしまっただけだよ?」
このバカ王子!!身分ってものがわかって言ってるのかしら!
あなたはこの国の王になる人で、私はただの伯爵令嬢なのよ?
はっ、危ない危ない、口に出すところだったわ。
「エイミーの顔を見ると、この感情をどうしても抑えられないんだ」
そう切なげに言われても困るわよ。
確かに殿下は金髪碧眼で、どこからどう見ても御伽噺に出てくる王子様そのものよ。
顔だって鼻筋がしっかり通っていて、優しそうな瞳とついでに泣きぼくろまで。
こんな完璧な人間に告白されたら落ちない人間はいないわよね。
「エイミー、僕は君の事が好きなんだ」
でもね、殿下。
「あなた、婚約者いるじゃないですか!そんな不誠実な人、私は嫌だといつも言っているではないですか!!」
婚約者がいる人はお断りなのですよ?
「いや、フィアとは親が決めた婚約者なだけで、そんな関係じゃ!」
「何回言ったらわかるんですか!例え婚約者様とそんな関係じゃなくても、周りから見たら私はただの泥棒猫に見えるわけですよ!!殿下は私を悪女にしたてあげたいのですか!?」
「えぇっ?エイミーは泥棒猫じゃなくて、可愛い三毛猫だよ!」
「もう!殿下のアホー!!!」
こんなアホアホ殿下に構っていられないわ!
そろそろ周りがざわざわし始めているし、いつまでもここにいたら邪魔だもの。
どうにか、この馬車から脱出する方法はないかしら……?
「エイミーここから抜け出すいい方法があるよ!」
「全て殿下のせいなので、自慢げに言わないでもらえますか?」
ニコニコしているこの殿下は、私が怒ってるってわかっているのかしら?
しかも、謎の袋から何かを取り出しているようだけど……変なもの出てこないわよね。
「ジャーン!はい、これはエイミーの分ね!さあ、被って被って」
何かしらこれ?って、ででで、殿下!?
なんで馬の被り物してるの!!?
「どうだいエイミー、似合ってるかな?」
「似合ってるも何も、馬じゃないですか!!まさか、私のこれも?」
「うん、馬だよ?エイミーに似合うと思って持ち歩いておいてよかった……」
似合うかもしれないってどういう事!!?
なんで持ち歩いてるの?
「ツッコミどころが多いですけど、被り物をして抜け出すのはある意味正解かもしれませんね」
「そうだろ!僕をもっと褒めていいよ?」
「いえ、この状況はあなたのせいですから!」
「そ、そうかもしれないけど……エイミー、君が困っているなら僕は全力で助けてあげるから」
そんな馬の被り物つけて、キリッといわれても……。
とりあえず、私も被り物をつけましょう。
「殿下、できました」
「やっぱり、凄く似合っているよ!エイミーの可愛いお顔が見えないけど、エイミーの可愛い体がより可愛く見えるね!!」
この人何言ってんのかよくわからない!!!
「殿下、ふざけてないで行きましょう」
「別にふざけてないけど、まずは僕から降りるからね。……お手をどうぞ、マイレディ」
私は殿下の手をしぶしぶ取って、とりあえずこの馬車を降りることにしたのよ。
外では、生徒達が「殿下と一緒にいるのはどなた?」とか「殿下のお相手は一体!?」なんて囃し立てていたので、実際に危ないところだったわ。
私の馬車には、伯爵家のマークが入っていない事だけが私の救いよ!
そして私達が飛び出して来たら今度は皆が皆、「馬?」「馬よ!」「馬なの?」なんて違う意味でザワザワし始めたせいで、私は死にたくなりました。
毎日のようにこんな少しおバカな殿下に、何故か好きだなんて言われて振り回される。
今のところ最悪な展開は避けているけど、いつ何がおきてもおかしくない。
これが今の私の日常。
殿下のことは断固拒否いたしますから!
早く諦めてください!!
それが私の今の切実な願いなんです!
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