眠れ、眠れ、冬の中

 白が降る。世界の冷たさ、悲しさ受けて。音のないのが白々しいほどの白が降る。白は雪と呼ばれる。名前が綺麗、響きが綺麗。みな口々に言うけれど、そうなのかしら。わたしが無数の自意識──雪片に向かって問いかけても、みな一様にひらひら身体を傾げ、落ちてゆくばかり。落ちていった先の一つに、灰色鳩の死体。冬を越せない悲しい生き物。空を舞った仲間として、あなたを抱きしめてあげる。雪が解ける春の日まで。静かに静かに眠りましょう。無数のわたしが死体に落ちる。灰色の羽が白に染まる。


 ──良い子は眠れ、眠りなさい。眠って春を待ちなさい。


 どこかの家から、子守歌が聴こえて来る。冬を切なく、春を待ち遠しく。




 Twitter300字企画第七回お題より……「雪」(本文291字)

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