第93話 国王は城兵好き

タケル様は異例の将軍出世を持ちかけられた。しかし、拒否。

幼女の姿をした国王は絶叫。そのかん高い幼女の声は王の間に共鳴した。



「ふざけるなーー! タケルゥウ! これは命令じゃぞ! 国王の命令じゃあ!!」


ああ、タケル様!

こればかりは聞かない訳にはいきません。

あなたのお辛い気持ちはわかります。

マーリアも同じように辛いです。


タケル様は目を細めた。


「国王の命令ならば聞かざる得んな……」


「デュフフ! それでこそタケルじゃ! これからはワシの側で内政に関わる仕事もするのじゃぞ。将軍なのじゃからな!」


何よ。国王はタケル様を側に置きたい為に出世させるんじゃない!

幸い幼女の姿だから、流石にタケル様の恋愛対象外。そこは安心できるけど……。

でも酷いわ。私利私欲でタケル様の出世を決めるなんて。


タケル様は更に目を細めた。


「しかし、俺が将軍になったら……」


「なったらなんじゃ?」


「嫌いになってしまうかもな。国王のこと……」


「な、なんじゃとーーーーッ!?」


これには傲慢だった国王が焦った。

身体中から汗を飛散させる。


「タ、タケ、タケルがワシのことを嫌いになるじゃと? それは本当かえ!?」


「考えてもみろ。俺は将軍になどなりたくないのだ。それを命令で言うことを聞かすのだからな」


「し、しかしな。これはお前にとっても良いことばかりなんじゃぞ?」


「俺の幸せは俺が勝手に決めることだ。国王が決めることじゃない。それにな、俺が忠誠を誓った大好きな国王は、頭が良くて、優しくて、可愛い女の子なんだ。誰からも愛されて尊敬される人だ。命令で部下を動かす人じゃないんだ」


「『忠誠を誓った』からの下りをもう一度言ってくれぬか」


「……………」


「頼む! 言ってくれぇ!」


「俺が大好きな国王は、頭が良くて、優しくて、可愛い女の子だ」


「フニァア〜〜」


国王は夏場のアイスのようにとろけた。

そして、またたびを貰った猫のようにゴロゴロし出した。


「タケルゥウウ〜〜ん。にゃにゃ〜〜。ワシのこと大好きとか本当かにゃ?」


タケル様はコクリと頷く。

国王は更に顔を赤らめた。

それを照れ隠すように叫ぶ。



「んにゃにゃにゃにゃぁあーーーー!!」



国王はタケルをジッと見つめて顔を赤らめた。



「ちゅき……」



もう、ご主人様が大好きな飼い猫状態である。

シシルルアと伍長を見やると、目を閉じて、この時間が過ぎるのをただ待っているだけだった。



「で、どうなのだ? 俺は将軍にならなければいけないのか?」


「そんなの嘘に決まっておろう! ジョークじゃジョーク。そなたは城兵が似合っておるぞよ」


さっきまであんなに真剣だったのにーー!


「うむ。それを聞いて安心した」


「うふふ、タケルゥウ〜〜」


もうタケル様の思うツボね。

どっちが主人かわからないわ。


結局、タケル様の希望で、成果に対する報酬は長期間の休みをもらうことで落ち着いた。


あれだけの武勲を上げたのに、長期休暇で満足なんて、どれだけ欲がないお方なのだろう。


話しが落ち着くと、国王はタケル様を部屋から出して、女の子達だけで話すことになった。


「お前達に話したいことがあったのじゃ」


玉座に腰掛ける姿は、先程までとは打って変わって冷たい表情に豹変した。

その顔は冷たく、その眼差しは人の心を見透かす、まるで氷の魔女のような目つきだった。



「正直に言わぬと、わかっておるな?」



シシルルアとリリー、バルバ伍長は汗を垂らした。その表情から、嘘をつけば死刑。そんな空気が漂った。

これが、本来のスタット国王の姿だったのだ。



「さてお前達に質問だ……」



ゴクリ……。

私は唾を飲みこんだ。





「TOGとはなんじゃ?」




ええ!?

どうして国王がそのことを?

でも、この国王の情報網ならば知っていてもおかしくない。


ギルド長のリリーは汗を流しながらも、正直に答えた。


「お、お答えします。TOGはタケル・ゼウサードお嫁さんギルドの略です。タケルさんを大好きな女の子が集まって、タケルさんに愛してもらう為に、タケルさんの為に尽くす組織です。リーダーは指名制で、今は私になっています」


「ほ、ほう〜〜。して、そのメンバーは?」


「マーリア姫、賢者シシルルア、魔法使いレイーラ、バルバ伍長、魔拳士アンロン、キャンドル職人アイカ。私。の計7人です」


「バルバ伍長、お前も加入しておるのか!?」


バルバ伍長は恐縮しながらも顔を赤らめた。


「はい。自分に嘘はつけません。私は彼を、心から愛しております」


その言葉に同調するように、メンバー一同は顔を赤らめた。


「うーーむ。メンバーは7人もおるのか!? 多過ぎんか?」


「はい。結成当時は5人でしたが、あっという間に2人増えました。彼の魅力ならば、今後も増え続けると思います」


「う、うーーむ。タケルならばありえるか……」


国王熟考。


そして口を開く。


「ワ、ワシも……」


もうこの流れなら、こうなるのは分かりきっていた。



「ワシもそのギルドに入れてくれ!」



でも、このギルドはタケル様の許可が無ければ入れないのだ。

それを国王に伝えると、再び王の間にタケル様が呼ばれた。


タケル様に是非が問われる。

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