助けての声が入る留守番電話

「ふんふふーん!」


 鼻歌を歌いながら家に帰っていた。


「ただいまー!」

「しーん…」


 家に帰ると、家の中には誰もいなかった。


「ふー、私一人だけか。ん、なんだろう?」


 家の固定電話に誰かかの留守番電話が入っていた。

 気になったので早速聞いてみる。留守番電話の再生ボタンを押した。


「…………」

「ん? なにも聞こえない」

「けて…」

「え?」


 何かが聞こえた。


「けて…。助けて…」

「え…?」


 留守番電話からは今にも消えそうな声で助けてという言葉が入っていた。


「何なんだこの気持ち悪い声は…。も、もしかして、友達がふざけて留守番電話を送ってきたのかな…? そうに違いない…!」


 そのままリビングから離れていく。そういえば思い出したが、さっき友達が後で確認のために留守番電話を送るとか言っていたような気がする。

 しかし、普通こんな悪趣味な留守番電話を送るのだろうか?

 とにかく自分は怖くてどうしようもなかった。


「ちょっとちょっとなんなのよ これいくらなんでも怖すぎるって!」


 なんだか急に寒気のようなものがしたので自分は毛布にくるまってガタガタと震え始めた。

 考えれば考えるほど明らかにさっきのはこの世のものの声じゃないような気がする。

 さっきの留守電の声が何度も頭の中を巡っていく。


「よし、とりあえず友達に確認だ」


 友達に確認のメールを送る。


さっき留守番電話が入ってきたんだけど悪趣味なんですが…。留守番電話もしかして送った?


あー、そういえば留守番電話を送るの忘れてわ


「送るの忘れたじゃねえわ! ここは留守番電話を送ったっでいいんだよ!」


 自分はわずかな希望にかけて悪趣味な留守番電話が来たという方にかけていたのだった。

 でもこれは友達の留守番電話でも何でもなかったらしい。


あーもうこれで完全にこの世のものじゃないことが決定したわ…


 その後、固定電話の留守番電話を確認してみるとちゃんと友達の家からかかっていたのだった。

 あの時は焦りすぎて電話番号を確認しなかった。


やっぱりこれは友達のいたずらなのだろうか? いやいや、これもしかして友達の家が呪われてんじゃないのか!? 


 そんなことを考え始めた。そしてまた友達にメールを送ることにした。


「さっきさ、怖い留守番電話が来たんだけどさ。それがどうやらたっくんの家から来たみたいなのよ。」

「いやいや驚かせようったって無駄だよ。だって留守番電話送ってねーもん。」

「いや絶対に送った! たっくんが送ってなくても家族の誰かが送ってない? 家に誰かいないの?」

「いやどうだろうな。家に誰かいたっけかな。まあどうでもいいわ。」

「いやいやどうでも良くないから! 今すぐ誰か家にいるか探してきてよ!」

「しゃーねーな。ダルいけど探すか。」


 たっくんとのメッセージアプリでの連絡はここでぷつんと途切れた。


「たっくん大丈夫かな? たっくんの家の中に誰か人間がいればそれでいいんだけど …」


 自分はリビングに戻った。すると、また留守番電話が入っていた。


「ええ…」


 私は恐る恐る留守番電話の再生ボタンを押す。

 すると…。


「助けてー。助けてー」

「ひいい!」


 今にも消えそうな声が入っていた。私はすぐに逃げる。


「もうなんなのよこれ! 怖すぎるって!」

「ぴろりん♪」

「ひいい!」


 すると、たっくんからメールの連絡が入ってきた。


「いやー、やべぇーわ」

「たっくん、どうしたの!?」

「いや実は自分の家は中古物件だったわ。親は今までそんなこと1回も言ってなかったのになぁ…。しかも事故物件っぽい…」


 どうやら知らない方が良い真実を知ってしまったようだ。


「ま、まあ。大丈夫っしょ」

「いや、それ全然大丈夫じゃないでしょ!? そんな家は引っ越した方がいいよ!」

「いやでも全然大丈夫だから。絶対!」

「なんで!?」

「その留守電、多分俺の死んだじいちゃんだわ」

「は? それ本気で言ってるの?」

まあ仲良くしてやってくれ。仲良くできるわけないでしょ! この世のものじゃないんだから!」


 すると、それを境にたっくんから来るメールもおかしなことになっていた。


「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」

「ひいいい…!」


 助けてという文字がずらーっと並んでいた。これはちょっとあまりにも怖すぎた。

 だが怖がっているだけじゃダメだと思った。勇気を出してメッセージを送る。


「たっくんに助けを求めればいいのでは?」

「それもそうだね」


 あっさり終わった。それからというもの、変な留守番電話がかかってこなくなった。

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