雷が怖い臆病者
「ひー! 怖い!」
僕は昔から雷が苦手だ。少しでもゴロゴロとしているだけで、自分の所に落ちてくるんじゃないかとか、そんなことをすぐに考えてしまう。
もしも雷が自分の体に直撃すれば、まず助かる見込みはないだろう。だからこそ雷は怖いのだ。
「1・2・3・4!」ゴロゴロ…
そして今体育の授業をやっているのだが、ちょうど雷が遠くの方でゴロゴロしている。
でもみんな準備体操をしていて、特に雷を気にする様子もなかった。僕だけにしか雷の音が聞こえないのだろうか?
僕は昔、自分の近くに雷が落ちてきたことがあった。その時は本当に死ぬんじゃないかと思った。
その時のことを思い出しているとなんだかとても怖くなってくる。このまま校舎の中に避難しようかなとも思ったけど、今日の体育教師のF先生はかなり怖い人なのだ。
「ごらー!」
「ひぃぃ!」
この体育教師のF先生は気に入らないことがあったりすると、ものすごく必要以上に責めたてたりしてくる人だ。
今もこうしている間にどんどん雲行きが怪しくなってきた。雲がちょっとずつ黒くなってきているのだ。
「はい、準備体操を終わり! 皆ラケット持ってテニスのラリーを始め!」
「はい!」ゴロゴロ…
みんなテニスのラリーを始めた。僕はどうしようか迷っていた。さっきからすごいゴロゴロしているのでもう迷っている暇はないなと思った。
「逃げろ!」
僕は意を決してこっそり校舎の中に避難することにした。これがもし見つかったら後で怖いF先生にめちゃくちゃ怒られるだろうな。
でもお腹が痛かったからトイレに行っていたということにしよう。そして授業終了間際になったら何食わぬ顔で戻ってやろうと、そんな風に考えていた。
とりあえず急いで校舎に入るためにショートカットで渡り廊下みたいなところを横から入った。
その時のことだった。「パーンッ!」という銃声のような音が聞こえた。その瞬間に学校に植えられていた大木が倒れたのだった。
「え…」
大木が倒れたところは自分がちょうど通ってきた道だったので、あともう少し通るのが遅かったのなら、その大木に潰されてグシャグシャになっていた。
そしてまた次の瞬間、「パーンッ!」という銃声のような音が響いた。次はちょっと遠くから聞こえたのだった 。
とりあえず、自分は怖いのでさっさと自分の教室に戻ったのだった。
「ふー、怖かった。さてと、これからどうしようかな」
ちなみに自分の教室からは外で運動をしている様子が見ることができる。自分は何となく外でも見てみようかなと思ったら、みんな校庭で寝ていたのだった 。
「なにしてるんだ? え…!?」
何かの運動かなーと思って、ずっと見ていたが何かが違うと感じた。自分はもしかしてと、この時に思ったのだった。
さっき銃声のような音が遠くで聞こえたが、あれはみんながテニスをやっている校庭に落ちたのではないだろうか?
それが分かった瞬間に自分は怖くなって校庭を見るのをやめた。
……………………………………
その後、死者と重傷者が出ていたことが分かった。あの時、雷が怖くて逃げていなかったら自分はどうなっていたのだろうか?
そんなことを今でも考えるとゾッとするのだ。あの時、何が何でも逃げて本当に良かったと思っている。
もしも、あの時怖くて逃げていなかったなら、自分も雷に殺されていたのかもしれないのだから。
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