命を削ってお金を得るギャンブル狂

 自分はギャンブルにドハマりしていた。でも負けが膨らみすぎてもうヤバイ。借金もしているし、そろそろ本当にヒットマンに殺されるところまで来ているかもしれない。

 家族にも友達にも迷惑をかけたくなかったので頼れなかった。とりあえず適当なところで身を隠す。


 ある日、寝ていると夢の中で神様が現れた。

「おほほ、借金地獄でギャンブル狂のゴミクズなお主に特殊能力を授けてやる。寿命と引き換えに運を上げる能力じゃ。扱いには十分注意するんじゃぞ」

 神様は自分に手を差し伸べた。


「神様ありがとうございます」

 こうして自分は神様から寿命と引き換えに極限まで運の上がる特殊能力を授かったのだった。

 そして自分は夢から目が覚めると神様と会ったことは、すっかりと忘れていた。とりあえず日課のパチンコ屋に行った。


「頼む勝て!頼む勝て!頼む勝て! 今日勝てないとヤバイんだよ! 勝たなかったら台壊す!」

 自分は必死に神に祈ってパチンコで当たれと願う。


「寿命少なくなっていいから当たってくれ! 1年寿命削っていいから!」

 そう祈った瞬間にパチンコで大当たりをした。もう脳汁がドバドバと出た。生きてて良かったと思えた。

 そしてその日は台を変えてもその先で全て当たった。まるで自分は本当に神になったかのように思えた。

 その日は大金が手に入ったので豪遊した。お金を使うのが下手くそすぎてサラリーマンの月の給料分以上のお金があったのに1日でほぼ使いきってしまった。


 そして次の日にまたパチンコ屋に入り浸る。

「当たれ!当たれ!当たれ!当たれ! 何で当たらないんだクソ!」

 神に何度も祈っているが昨日と比べてぜんぜん当たらなかった。


「クソ! 自分の寿命を1年削っていいから当たれ!」

 自分は無意識のうちに寿命を削ってもいいから当たれと祈っていた。するとまたパチンコで大当たりし出すようになった。そしてその日も大勝ちした。


 帰り道でウキウキな気分で帰っていた自分は、ふと気付く。今日は寿命を削っていいと思った瞬間に当たったんだ。

 昨日もそうだ、寿命を削っていいと思った瞬間に当たった。明日はそれを確かめることにしてみようと思った。


 次の日…

「今日は実験で寿命を削る祈りをしないことにしてみよう!」

 これで当たらなかったら自分の寿命を削ることと引き換えに当たりを引いていたということになる。

 そして何時間も入り浸っているがまったく勝てない。


「クソ! やっぱり負けるのは嫌だ! やっぱり寿命1年削っていいから勝て!」

 その瞬間に大勝ちをし出した。これで確定した。勝つために寿命を削っていたということを。


「ははは…。おれの寿命、マジで削れてんのな…。でも、これでいいんだ!」

 自分は永遠に生きると勝手に思っていたから何とも思っていなかった。


 そして次の日、自分は競馬場に来ていた。

「10年分…いや、30~40年分削ってもいいから当たれ!」

 競馬でパチンコで稼いだ金を大穴の馬に全て賭けることにした。そしてレースが始まった。

 人気の馬が調子をどんどん崩して大穴の馬が見事に勝ったのだ。


「本当に当たった!やった!」

 どこか自分は楽観的になっていた。本当に命を削れると思っていなかったからだ。なぜなら、今のところ命が削れているという実感がまったくなかったからだ。

 いつもはオカルト的な考えで神頼みだが、こういう時だけは『祈るだけで寿命が削れられる訳がないんだ…!』と科学的に考える。

 だが、このあと寿命を削ったツケがやってくることになる…。


 大勝ちをした自分はお金を使って風俗やキャバクラなど、とにかく贅沢に贅沢を重ねた。

 お金を使えるだけ使った。その夜は自分が世界の中心とさえ思えた。そしてあっという間に使いきった。


 お金を使いきった帰り道…。

「ふんふん♪ グハッ…!?」

 自分は突然口から血を吐いた。しかもかなり多い。血を吐いて自分は身に沁みて分かった。

 本当に命を削っていたということを。もうギャンブルはやめようと思った。


 次の日…

「当たれ!当たれ!当たれ!当たれ!」

 自分はパチンコ屋にいた。今さらギャンブル何て辞められる訳もなかった。もう脳みそがギャンブルに支配されていた。

 だが今日はなかなか当たらない。やはり自分に賭けられるものはもう命しかない。でも死ぬわけにもいかない。そこであることを試してみることにした。


「親の命を1年削っていいから当たれ!」

 そう祈ってみると、その日は大勝ちした。そして大金を手にした。


「うっひょー!」

 この日から完全に人の道から外れてしまったのだ。他人の命を売ってお金を得るという禁忌に触れてしまったのだ。まさに人間失格だ。

 そのあと、来る日も来る日もギャンブルに明け暮れた。その度に家族だけでなく、過去に親しかった人間の命を削ってお金を得た。


 そして仲の良かった友達や家族はみんな死んでしまった。まさか本当に死ぬとは思っていなかったのだ。

 この時に初めて取り返しの付かないことをしてしまったことに気付く。そして一生消えない罪悪感が心の中に芽生えた。


 たしかに手元にたくさんのお金は残って億万長者になることが出来た。けれど、かけがえのない家族から友達までも全ての命を売った。

 それで得たお金はあまりにも虚しい。そして本当の孤独になったのだ。クソみたいな自分だけが今もノウノウと生きている事実だけが残った。


 その事実に耐えられなくなった自分は次第に酒に逃げるようになった。薬にも手を出した。もう何も考えたくなかったのだ。

 そして競馬で40年も寿命を削っていた自分はすぐに死ぬこととなる。自分の最後は誰にも知られず道端でゴミみたいに野垂れ死んだ。


 最低な自分の最後には相応しい死に方だった。そして死ぬ瞬間に思い出した。夢の中で神様に特殊能力をもらっていたんだということを…。

 もし次に生まれ変わることが出来たなら、お金のためでなく他人のために生きたい。

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