20話 更生保護員クリスチーヌ


 助手席のシートを倒して、伊崎のアイスピックで刺された腹を触っていると…

 ボロボロになったベンツを運転する校長クリスチーヌが、

『京極? どうした? お腹が痛いの?👀』


「ちょっとな…」


『事故で打ったんじゃない?ヒビがはいってるとか? どれどれ~👀』


 急に校長は左手で『卍』スカジャンの下をまくりやがった、


『京極! なあんだ~! そのお腹の包帯の血は!?😨』


 アタシは助手席の窓を開けて、セッタ(セブンスター)にガス切れかけのライターでカチカチカチカチと火をつけようとしていると、校長は、


『早く病院! どこの病院で治療してきた!?😨』


 やっとタバコに火がつき、


「す~ふう~ 大丈夫だって…」


『大丈夫じゃない! バイ菌が入ったらやばいんだから! 病院行く!😠』


「ダメだ…病院行ったら入院させられる。 そうなったら誰が校長を守るんだ? バイ菌が入ったらヤバいなら、どっかドラッグストアーで消毒とか包帯とか買ってくれよ。 アタシは金なんてないしさ」


 納得したのか?

 校長はこっち見て、うなづいた後に前を向き直し、


『何が事故よ…? その頭と左手の包帯も喧嘩だね…?😠』


「当たり、まさかタイマンで負けるとはな…」


『ワタクシの京極にタイマンで勝てるヤツなんていたんだ…😨』


「伊崎カナエ、同じ聖クリの3年」


 前を向く校長は、しかめっ面になって、

『アレか…😟』


「ムハイカイドウで有名だけど、どんな女か知ってる?」


 ボロボロのベンツは信号で止まる、校長は前を向いたまま、

『よく知ってるよ😟』


「よく知ってるのか?」


『ワタクシは伊崎カナエの更生保護員だもん、京極もワタクシが更生保護員だけどね😟』


「校長? あんなのの更生保護員なのかよ?」


『あなたも人の事言えないでしょ?😓』





 そうアレは…

 2年前の春の始まりの日…


 府中市の医療少年院…


 シャーロット教頭が運転してくれたリンカーンが門の前で止まる。


 ニチャ~👄


 ワタクシの前の運転席に座る教頭は、

👄≪校長、到着しましたよ、どうぞ車を出て施設の中へ


『教頭?本当に大丈夫?1回のケンカで6人めった刺しで殺してるんだよ~?👀💧』


👄≪全く問題ありません


「本当?」


👄≪はい。伊崎カナエさんは、この施設での2年間で治療は完全に終了しています。 今までワタシが代理で足を運んで、ちゃんと施設と本人とは話がついていますから


「うん、教頭が手筈を整えてくれたからね👀」


👄≪伊崎カナエさんは、春に開校する我が校の趣旨にピッタリな生徒になるでしょう。 本来ならワタシが更生保護員してあげたいのですけど、ワタシは過去に宮本春彦の失敗がありますので… 校長、早く行かれてください、ほら


 後部座席の自動ドアが開いた。


 ワタクシは、我ら信仰の薄いバイブル(自由の聖書)を手に持って、門の前に歩むと、

 門の中で立つ警備の中年の男性が、

「外人さんってことは…伊崎の更生保護員のクリスチーヌさん?」


「はい、伊崎カナエさんを向かいに来ました👀」


「では、どうぞ、案内します」


 門が開く。


 施設の事務室に行き。 出された書類にサインを終えると。


「来ましたよ」


 白のYシャツの伊崎カナエが、若い男の刑務官1人に連れられて来た。

 ワタクシは立ち上がり、伊崎カナエの顔を見上げて、


「伊崎カナエさん、ワタクシがあなたの更生保護員のクリスチーヌです😃」


 彼女は深々と長い髪の頭を下げて、

「伊崎カナエです。 よろしくお願いします。 身寄りのいない自分を引き取ってまで頂いて感謝しています」


 若い男の刑務官は、頭を下げたままの彼女の背中をポンと叩き、

「クリスチーヌさん… 伊崎はもう大丈夫ですから、過去の過ちとしっかり向き合い反省して、精神的な障害も克服しています。 ココの模範生でしたから」

 嬉しそうに、何度も小さくうなずいていた。


 彼女は頭を下げたまま、

「佐々木刑務官、ありがとうございます」


「がんばれよ、ぜったいにこんな場所には戻って来るなよ」


「はい」


 なんかワタクシも目頭が熱くなって…

 一筋の涙がこぼれちゃった…

 ワタクシは頭を下げたままの彼女に、


「顔を上げてください、伊崎カナエさん😌」


「はい」


 ワタクシは顔を上げた彼女に、


「これからあなたは自由なのです😃」


「はい」

 

「4月7日から、あなたには新しく誕生する我が校に通っていただきます。 名前は『聖クリスチーヌ女子学園🏫』😊」


「え? 学校? でも自分… 中学にも行ってません」


「大丈夫です。 自由が我らの信仰なのですから😊」


 ワタクシは信仰の薄いバイブルを両手で出して、


「コレは特別な物です。 時間があったらぜひ読んでください。 我々なりの解釈ですが… 自由の意味が書かれています😌」


「はい」


 両手で受け取ってくれた。


 ワタクシは刑務官と周りの事務2人を見渡して、


「では、伊崎カナエさんとココを出ていいですか?😃✨」


「はい」

「頼みます」

「伊崎がんばれよ」


「がんばります。 みなさま、今までありがとうございました。 みなさまから頂いた感謝は一生忘れません」



 門の外へ出た。


「伊崎さんの出身は埼玉だよね?👀」


「うん」


「先ずは、どこで住むか決めないとね? とりあえず、ワタクシのマンションで住んでみる?😃✨」


「いらない」


「いらない?😃」


 その時…

 黒塗りのアルファードがすぐ横に止まった。

 ドアが開くと、中にヒョウ柄のパンチパーマとイカツイスキンヘッドの2人の男が見えた。

 伊崎カナエはこっちを振り向いて、

「じゃあな」


「伊崎カナエさん? どこに行くの? それにあの男達はいったい誰?😦」


「そのうち分かるよ、きっと」


 車に入った彼女に、ワタクシは、


「学校!!!( ゚Д゚)」


「学校? あんたの学校…聖クリスチーヌ女子学園だっけ?」


 にやけてパンチパーマとスキンヘッドはワタクシを見ていたけど、

 ワタクシは彼女を見上げて、


「来なさいよね…ぜったい…😃💦」


 彼女は、薄いバイブルをクルクルっと回して見つめ、


「自分に学校なんて… さすがに…無理だわ…」


「来ないと取り消すよ… 出所…😠」


 にやけてたパンチパーマとスキンヘッドは、急に睨みつけて来た… 

 見つめ合った彼女から出た言葉が、


「気が向いたら、行く」


 ドアが閉まり、車は走り出す。

 運転席の窓からタトゥーの腕が見えて、こっちに中指を立てていた。


 なんか疲れた…


 近くの教頭のリンカーンの後部座席に乗り込む。

 タバコ(セブンスター)を運転席で吸っていたシャーロットが、


👄🚬{校長? 伊崎カナエさんは?


「なんかヤバそうなヤツラと…どっか行っちゃった…」


👄🚬{それは残念でしたね ぶっは~



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