第17話 助っ人の成果は如何に

 いよいよ前田の選挙戦が始まった。選挙期間は2週間。長いようで短い。貴は前田にべったり2週間付き合った。街頭演説、挨拶回り、地方巡り、ほぼ運転手として前田と苦楽を共にしてきた。選挙期間と言ってもそれまでに実施した下地の作業がモノを言う。それも前田は分かってただけに準備に抜かりはなかった。

 投票日になった。もうこうなると俎板の上の鯉だ。前田の事務所では貴と女性事務員の他、応援有志が集結しTVの選挙速報をじっと見つめている。

 「やることはやったな」

 「そうですね」

 「2人ともよくやってくれたね」

 「いえいえ、私は楽しかったですよ」

 女性事務員も首を縦に振る。

 「あとは人事を尽くして、か」

 前田の選挙区は京都10区。定数2に対し5人の立候補者。1人は元代議士。残りの1議席を争う形になった。20:00から始まった選挙速報は早々と京都10区の1議席の確定を報じた。

 「やっぱりか~」

 前田の事務所に詰めかけた全員からため息が漏れる。

 「まぁこれは想定内や」

 みんな黙って頷く。その後もじっと戦況を伺う。しかし、一向にもう一議席の確定が報じられない。という事は、前田を含む4候補で拮抗しているという事だ。22:00頃の時点で前田は5人中2番目の得票数ではあるが、後続の候補もわずかの票数で喰らい付いている。

 「先生、いけるかもですね」

 「まだ予断は許さんがな」

 日を跨いでも結果はでなかった。後は細かい数字を集計した結果の新聞の朝刊を見ないとはっきりしない。

 早朝4:00。前田は否が応でも朝刊が待ちきれない。配達員を事務所の玄関で待ち受ける。もう空はうっすら明るい。

 「まだ来ませんかね」

 貴は前田の背後からひょっこり顔を出した。

 「待ってる時は来ないもんだよ、何事も。こうして君と話してるとふとした時に来るものだ」

 「そうですね」

 ふと、バイクのエンジン音が聞こえてきた。

 「来ましたね」

 「いや~さすがにちびりそうだな」

 「もう結果は出てるんですから、何も変わりませんよ」

 「そりゃそうだな」

 バイクの配達員が無造作に地元紙を3部手渡す。早速1面を見る。

 「やりましたね!次点で当選ですよ‼」

 「おお!ありがとう!」

 「当選ばんざーい!!」

 文月の京都の夜明け空に二人の歓声が響き渡った。

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