第5話 [ハーレム]

 とりあえず授業が始まるので二人には帰ってもらった。

 そしてやってきて弁当のお時間。


「姉貴! 弁当食いましょう!」

「百合園様お弁当を食べましょう」

「フミちゃんお弁当食べよ!」


 三人に言われたので私はいつも弁当を食べいる場所、屋上へ向かうことにした。


「っつーか、なんか一人増えてね?」

「あら、本当ですわ」


 二人が真雪ちゃんのことをジィーっと見つめていた。


「僕とフミちゃんはお友達です!」


 真雪ちゃんがニヤッと笑うと、私の右腕に抱きつきながらそう言っていた。

 そして私の腕が真雪ちゃんの胸に沈んでいた。

 まあ羨ましいとは思わない。別に胸が平らってことでもないし、体洗うとき結構めんどくさいからだ。

 この悩みは男子にはわからないだろう。


「姉貴! あたしこいつ嫌いです!!」


 華織は見事なまな板だった……。

 嗚呼、南無阿弥陀……。


 そんなこんなで屋上に到着。

 私たちはフェンスにもたれかかった。

 配置は私が真ん中、右が真雪ちゃん、左が華織、目の前に海宝さんが正座で座っていた。

 海宝さんはタオルを持っていたようなのでそれを敷いて座っていた。


「っていうかちょっと蒸し暑い……」


 春も終盤で気温が上がってきているので少々蒸し暑かった。

 私は結んでいる髪をほどき、昨日のような髪型にした。


「「「お、おお……」」」

「???」


 するとなぜか三人がちょっと嬉しそうに驚いていた。

 よくわからないが、とりあえず弁当を食べることにした。


「百合園様、はい、あーんです」

「いや……私自分のあるか——もごっ」


 海宝さんに無理やり卵焼きを食べさせられた。普通に美味しかった。


「てめぇ……姉貴! あたしのも!!」

「ふ、二人ともずるい!フミちゃん、僕のもあげる!!」

「だから私自分のあるって……」


 みんなが弁当の具を渡してこようとしているがそんなにお腹空いていないからいらないのだ。

 っていうかみんな卵焼きをばっかり渡すじゃん……。



〜〜



「ふー……ご馳走さま」


 みんな自分の弁当を食べ終え、屋上でゆったりとしていた。


「そういえばお二人はどのようにして百合園様と出会ったのですか?」


 海宝さんが私以外の二人に質問をしていた。


「あたしは昨日壁ドンされて、顎クイもされて……それに耳元で愛を囁かれた(嘘)のだ!! キャァァ!!」


 おい、嘘が混じっていなかったか?


 華織は体をくねくねとさせていた。


「なっ……羨ましい……!」

「僕そんなこと言われてない……」


 羨ましいとか思うんじゃない……。私は女だ。


「ぼ、僕も昨日出会ったんだよ! 一人で荷物を運んでいるときに颯爽と駆けつけてくれてそれで図書室であんなこと(本の整理)とかこんなこと(本の整頓)をしたんだよ!」

「あ、あんなことやこんなことにそんなことだとぉぉ!?」

「そんなことはしてないよ」


 真雪ちゃん……嘘はついてないけど語弊が生まれてしまうよ……。


 真雪ちゃんの言葉に華織が反応していたが、いちいち説明するの面倒だからいいや。


「ふふふ、皆さんそれだけなのですか?」

「んだと?」

「……?」


 海宝さんが口元を手で隠しながら笑っていた。


「わたくしは野蛮な方々に囲まれている最中、腕を引かれて抱き寄せられてしまいましたの。それから一網打尽にしていましたわ」


「「お、おお!!」」

「姉貴そんなに強いんですか!?」


 華織が興奮した様子で私に話しかけてきた。


「まあ、一応有段者ではあるよ」

「フミちゃんはなんで強くなったの?ご両親とかがやれって言ったの?」


 別に隠したいわけでもないし言うかぁ。


「“なんで強くなったの”……か。それはねぇ、私が傍観者になりたくなかったからだね」

「「「傍観者?」」」


 三人は同時に首を傾げていた。


「そ、例えば目の前で犯罪が起きていたとして、自分にすごい勇気があったとする。でも勇気だけあっても救えないものもある。だから私は力をつけようと思ったの。いざっていう時に動ける人になりたいんだよね。まあ一言で言うと……“かっこいい未来の自分を作る為”……みたいな?」


 私はかけていた眼鏡を外し、ニヤッと笑いながらそう言った。


「か、か……カッケェェ!! 姉貴かっこよすぎます!!」


 華織は私の腕に抱きついて頰をスリスリと擦り付けていた。


「フミちゃん十分カッコいい……! 惚れ直した」


 真雪ちゃんは私の手をにぎにぎとしていた。


「ふふふ………」


 海宝さんは……。


「なんで婚姻届が胸ポケットに入ってんの!? しかも私の名前書かれてあるし!!」


 なぜか私の目の前に婚姻届を差し出してジッとこちらを見つめていた。


 いや書かなないし、結婚できないから。アイアムガール、オーケー?


「姉貴、一生ついて行きます!!」

「ぼ、僕も……フミちゃんと一緒がいいな……」

「ささ、旦那様、こちらに印鑑を……」


 どうしてこうなった……。


 女の子の日にイライラしてたらなぜ女子たちが集まってきたんだぁぁ!!

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