第24話 少年編23
「私な、薫を連れて出て行こう思うてるねん。どうしても許されへんし、こんなん耐えられへんわ。」
「浮気だけならともかく、子供まで…。」
「ありえへん!」
と、不貞の夫をさげすみながらも心は決まっているみたいで、春子の目を真っ直ぐに見つめて、残り涙をぬぐいながら最終的な後押しを求める。
春子も無言でうなずきながら、親友の意志の強さと言い出したら聞かない性格を学生時代からよく知っているため、
「私もその方がいいと思う。」
「薫ちゃん辛いやろうけど、今の状況よりはずっとマシやと思うし。」
と優しく微笑みながら相槌を打つ。
結局このような夫婦間の出来事で1番の犠牲者は子供で、それは避けることはできない。
少しでもその負担を軽くする為に夫婦が話し合い、速やかに結論を出して、子供の心の不安や負担を解消してあげる事が大切。
よく子供の為にと言って、何年もズルズルと仮面夫婦を演じる者がいるが、それは親のエゴであって、子供の為にいいわけがない。
その事を春子が1番よく分かっていた。
なぜなら春子の親も幼い頃、離婚しているからだ。
父と母のケンカを嫌というほど目の当たりにしてきた。
子供の為だと言って何年もの間仮面夫婦が続いた。
子供は全部分かっている。
親が子供の事を気にする以上に、子供は親の事を見ているし、忖度している。
春子はその事を薫の母親に伝えようと思ったけれどやめた。
彼女も今は夫に裏切られて辛いのだ。
そんな時に追い討ちをかけるようで良くない。
「何か春に話したらすっきりした。」
「いつもサンキュ!」
親友の学生時代の時のようなあの屈託のない笑顔が戻った。
彼女にはこの笑顔が1番似合っている。
学生時代に男子生徒の間でアイドル的存在だった彼女の心からの笑顔は、春子自身が男だったら間違いなくあの頃も今もやられていた。
しかし、そんな親友の笑顔を奪ってしまう彼女の旦那に、だんだんと憎しみが湧いてきた。
「なんか私も話聞いてて腹たってきた!」
「そんな人チャッチャと別れたらいいねん!」
冷静でいこうと思っていた春子も、つい、本音が出てしまった。
それが当の親友には良かったみたいで、
「そうやんなぁ!」
「チャッチャとそうする!」
と、学生時代の時より少しシワの増えた屈託のない笑顔で微笑む。
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