パン工房リルク

「喜んでるところ、悪いんだけど、欲しい糸は見つかったのかしら?」

「あっはい」

ポルクは糸の束に戻り

数本の糸を手に取り

「これください」

マルフィは残った糸の束を片付け

「わかったわ、じゃあ袋に入れるからちょっと待っててね♪」

「鞄に入れて帰るので、袋はいらないですよ」

「そう、わかったわ」

糸と布を鞄に入れて

代わりに銅貨を1枚取り出した

「いつも、銅貨1枚で良いんですか?」

「良いのよ♪どうせ捨てるものだから♪それと今日はお代はいいわよ♪」

マルフィは差し出された銅貨を押し返した

「えっどうしてですか?マルフィさん」

「香水を届けてくれるお礼よ♪」

マルフィはパチリとウインクをした

「ありがとうございます♪マルフィさん」

ポルクは銅貨を鞄に入れた

「ポルクちゃんはこの後はどうするの?」

「この後はリルクさんの所へ行こうと思ってます」

「そう、だったらハリルに頼まれてた物が届いたと伝えていてくれるかしら?」

「わかりました、伝えておきます」

ポルクがキャルに乗ると羽ばたかせ

飛び立った

マルフィは軽く手を振りながら

「行ってらっしゃい♪ポルクちゃん」

マルフィの方を見て

「行ってきます、マルフィさん」

ポルク達はリルクの元へと向かった


今から行くのは

熊の獣人のリルクさんがやっているパン屋さんで

奥さんのハリルさんと二人で経営している

いつもパンの欠片などを買っている


赤い屋根の煙突から白い煙がもくもくと登っているのが

リルクさんのお店だよ

[パン工房リルク]

キャルは開いている窓から中に入ると

「あら、ポルクとキャルじゃないの?いらっしゃい」

カウンターに居たハリルが話しかけてきた

「こんにちは、ハリルさん、今日はパンを買いに来ました♪」

キャルはカウンターの上に降りると

ポルクは背中からカウンターへと降りた

「そうなの、ちょっと待っててね、リルク、ポルクが来たわよ~」

奥から熊耳が生えた大柄の男性がパンの入ったかごを持って現れた

「いらっしゃい、ポルク」

リルクはポルクの前にかごを置き

「今日はどのパンにするんだ?」

ポルクはかごに近付き

選び始めた

「うーん、どれが良いかな?キャルはどれが良いと思う?」

キャルはポルクの近くに飛んできて

パンを見始めた

キャルは一つのパンを嘴で指した

「あのパンだね?」

ポルクはキャルが選んだパンを指差し

「あのパンでお願いします」

「わかった」

リルクはパンを手に取り

奥へと向かった

「ハリルさん、いつもすみません」

「良いのよ、ポルク♪あっそうだ、良かったらこれも持っていって」

ハリルはカウンターの下から赤いものが入った小瓶をポルクの前に置いた

「ハリルさん、これは?」

「私が作ったイチゴジャムよ」

「イチゴジャム!!良いんですか?」

「良いのよ、作りすぎちゃったから」

「ありがとうございます♪」

ポルクはイチゴジャムの入った小瓶を両手で抱えて

鞄へと入れた

リルクが奥から戻って来ると

パンの乗った皿をポルクの前へと置いた

「いつも通りにしといたぞ」

「ありがとうございます♪リルクさん」

普通のままじゃ大きくて食べるのも一苦労だから

リルクさんに頼んで細かく切ってもらっている

「じゃあ、皿借りますね」

ポルクは靴を脱いで

皿の上に乗り、パンへと近付き

その場に座ると鞄から紙の束を取り出し

パンを一つ一つ包み始めた

パンを包んでいるとキャルが背中をつついてきたので

振り向くと

ジーと手元にあるパンを見ていた

「食べたいの?」

キャルはコクリと頷いた

「仕方ないんなぁ」

ポルクは持っていたパンをキャルの前に置き

「食べていいよ」

キャルはパンをついばみ始めた

「続きをやろう」

ポルクは作業を再開した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る