第44話 紫の雨

穏やかな風が吹く

空は青く澄んで眩むような陽光の中

目をやれば流れるように咲く紫の藤の花房

長く連なり

近づき見上げれば

まるで紫の雨が降りしきるようで


それは馥郁たる香りをまとい

風に揺れる花の流れる軌跡はゆらゆらと

過ぎた過去を揺らす


私はそれにそっと触れるか触れないか

指を滑らす 

泣いているようで


私は今はひとりきりで佇む

心はひきずられたままで

香る紫の雨のような花の中を

ただひとり佇む


今は泣いているような紫の雨の中を

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