第42話 あなたの名前を書く

したしたと降る冷たい雨

微かな雨音と潮騒が静かにそこに響く


灰色の海

脱いだ靴が砂浜に転がる


私はひとり傘もささず

波打ち際にしゃがみこみ

俯いたまま

頬を伝いそうな涙をぐっとこらえて


ふるえる指先で

暗い砂の上にあなたの名前を書く

忘れられなくて


あなたの名前を書く

忘れたくなくて


暗い砂の上にあなたの名前

雨がしたしたと降り注いで


ふっと裸足の足に冷たい感触

静かに波が打ち寄せて

雨と共に

少しずつあなたを消していく


忘れたいのか

忘れたくないのか


打ち寄せる波

私は何度も砂の上に指をすべらせ

あなたの名前を書く──

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